上 下
25 / 242
第2章 創造者《クリエイター》の冒険者ギルド

第25話 創造者《クリエイター》のギルド受付嬢

しおりを挟む
 セリナは光る手をコアにかざし、そのままあらゆる面を探った。

 セリナの手の光に反応するように石についたコアがわずかに輝き出す。

 真剣なセリナを固唾を飲んで見守っていると、やがてセリナはフゥ、と一息ついた。

「鑑定終了です。スライムのコアですね。こちらが引き取るとしたら八十ヴァルと言ったところでしょうか」

「うーん、買い取ってもらうには金額がイマイチね」
 鑑定結果にアンジェは腕を組んで考え込む。

「はちじゅうばる?」

 ぽかんとしていたら、アンジェがこんな感じでコアは鑑定ができ、そのままギルドに売ることができるのだと説明してくれた。

『ヴァル』というのはこの世界での通貨のことらしく、勿論強い魔物や珍しい魔物のコアのほうが高く売れる。言うまでもなく、スライムは最低値のほうだ。八十ヴァルなんてりんご一袋買えればいいほうだと言う。

 ひとまずこれでコアが金になる理由はわかった。

 次は「武器」だ――と言いたいところだが、セリナが提案してきたのは別物だった。

「あと……このコアだと小手なら作れそうです」

「小手?」

 思わず素っ頓狂な声をあげる。その隣では「いいじゃない」とアンジェが目を輝かせた。

「今のムギちゃんは防具がないからちょうどいいと思うわ。どう? ムギちゃん」

「お、おう……じゃ、それで」 

 まだ話が読めていないが、アンジェが同意を求めてきたのでとりあえず頷く。

 すると、セリナもセリナで「ちょっと待っててください」とその場でしゃがんで机の下の棚を開けた。

 そこから古い木箱を取り出し、机の上に置き直す。

 箱を開けると年季の入った短剣や具足が入っていた。セリナはその箱の中身を探り、奥から何かを引っ張り上げた。出てきたのは、それまた年季の入った鈍色の小手だった。

「これらは昔、冒険者の方々から寄付されたものなんです。自由に使って問題ないものなので、こちら差し上げますね」

「あら、いいのー? 太っ腹ね」

「ムギトさんのギルド登録祝いです。これくらいならすぐにできるので、もう少々お待ちください」

 そう言ってセリナが小手をスライムのコアの横に置く。

「行きます!」

 気合いの入った掛け声と共に、セリナは自分の手を叩いたあと、勢いよく机に両手を置いた。

創造魔法クリエイティッド!」

 声を強めて呪文を唱える。

 すると、コアと小手の下が輝き出し、瞬く合間に魔法陣が現れた。

 魔法陣に反応してその二つがオレンジ色に光り出す。光に包まれたコアと小手は魔法陣の上でふわりと浮き、小さな光の球体になった。

 そのタイミングでセリナはそっと手をかざし、二つの球体を融合させる。球体は合体した途端、互いを吸収したように大きくなり、カッと強く瞬いた。

 神々しい光に目が眩む。だが、それもわずかな時間だけで、その後は徐々に輝きをなくし、ゆっくりと机の上に下降していった。

 机に着陸すると同時に魔法陣も消える。そこに現れたものに、俺は目を疑った。

 まず、コアが跡形もなく消えた。残ったのはあの古びた小手のはずだが、置かれているのは新品同様に真新しい小手だ。しかも、表面には青いジェルのような緩衝材がついている。

「はい、完成です」

 セリナに渡され、恐る恐る小手を受け取る。

 くっついた青い緩衝材は触ると弾力があった。まるで、スライムを固めたような弾力だ。

 ――スライム?

 その感想を抱いた時、俺は息を止めていた。

「そう、これが創造――彼女たち【創造者クリエーター】の能力よ」

「【創造者クリエーター】……だと?」

 アンジェ曰く、このクラスの人は魔力と材料さえあれば武器から防具、小道具から筆記用具までなんでも作れるらしい。これも高い魔力と優秀な魔法によって成し得ているのだろう。

 そして、ここはそんなチートクラスが取りまとめているギルドということらしい。なんてこったい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。 女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。 そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。 冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。 ・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。 ・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

処理中です...