242 / 435
第2章 タランテラの悪夢
閑話 ジーンとリーガス愛の劇場6
しおりを挟む
第6話 愛の結晶
殿下の救出に成功した。しかし、バカ皇子どもから受けた暴行により、思った以上に殿下の体は弱っておられる。しかも殿下だけでなく、復帰したばかりのアスター卿も受けた傷の後遺症とかで寝込んでしまわれた。
仕方なく事後処理は我々が行ったのだが、なかなか仕事がはかどらない。結局、総督府で待っておられる姫君に報告出来たのは夜明け前だった。
「そうですか、良かった……」
ユリウス卿に付き添われてお出ましになられた姫君は不安気にしておられたが、報告を聞いて安堵の表情を浮かべる。同席した総督殿もクレスト卿も同様にほっとした表情を浮かべていた。
だが……先程から気になっているのだが、妻のジーンの姿が見えない。自らアルメリア姫の護衛を申し出て総督府に残ったはずなのだが……。
「リーガス卿、ジーン卿の事が気になりますか?」
どうやら彼女を気にかけているのがバレバレだったようだ。
「気分が優れないらしいので、休ませました」
「え?」
気が動転し、気がつけば挨拶もそこそこに姫様の御前を辞去して妻の部屋に向かっていた。
「ジーン!」
「……リーガス?」
寝台で横になっていた妻は目をこすりながら体を起こした。
「ジーン、気分が悪いって……クララかヘイルに診てもらったのか?」
いつも元気な彼女が寝こむなんて、何か悪い病気じゃないのかと心配になってしまう。
「うん……」
「ジーン」
寝台に腰かけて体を起こした彼女を抱きしめる。すると彼女は、気持ちを落ち着けるためか一番のお気に入りである私の二の腕の筋肉に手を這わせる。
「あのね……」
何を告げられるのか、私は覚悟を決めて彼女の言葉に耳を傾ける。
「出来ちゃったの」
「は?」
「赤ちゃん」
「……」
それこそ予想外の答えに私は頭の中が真っ白になった。
殿下の救出に成功した。しかし、バカ皇子どもから受けた暴行により、思った以上に殿下の体は弱っておられる。しかも殿下だけでなく、復帰したばかりのアスター卿も受けた傷の後遺症とかで寝込んでしまわれた。
仕方なく事後処理は我々が行ったのだが、なかなか仕事がはかどらない。結局、総督府で待っておられる姫君に報告出来たのは夜明け前だった。
「そうですか、良かった……」
ユリウス卿に付き添われてお出ましになられた姫君は不安気にしておられたが、報告を聞いて安堵の表情を浮かべる。同席した総督殿もクレスト卿も同様にほっとした表情を浮かべていた。
だが……先程から気になっているのだが、妻のジーンの姿が見えない。自らアルメリア姫の護衛を申し出て総督府に残ったはずなのだが……。
「リーガス卿、ジーン卿の事が気になりますか?」
どうやら彼女を気にかけているのがバレバレだったようだ。
「気分が優れないらしいので、休ませました」
「え?」
気が動転し、気がつけば挨拶もそこそこに姫様の御前を辞去して妻の部屋に向かっていた。
「ジーン!」
「……リーガス?」
寝台で横になっていた妻は目をこすりながら体を起こした。
「ジーン、気分が悪いって……クララかヘイルに診てもらったのか?」
いつも元気な彼女が寝こむなんて、何か悪い病気じゃないのかと心配になってしまう。
「うん……」
「ジーン」
寝台に腰かけて体を起こした彼女を抱きしめる。すると彼女は、気持ちを落ち着けるためか一番のお気に入りである私の二の腕の筋肉に手を這わせる。
「あのね……」
何を告げられるのか、私は覚悟を決めて彼女の言葉に耳を傾ける。
「出来ちゃったの」
「は?」
「赤ちゃん」
「……」
それこそ予想外の答えに私は頭の中が真っ白になった。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
偽りの婚姻
迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。
終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。
夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。
パーシヴァルは妻を探す。
妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。
だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。
婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる