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第2章 タランテラの悪夢
35 流浪の果てに5
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コリンシアが高熱に倒れて3日経った。フロリエも不調でとうとう寝込んでしまい、オリガもティムも2人の看病で疲れ果てていた。加えて前日は大雨がふり、洞窟内に雨が入り込まないようにするのが精一杯で、底をつき始めた食料を探しに行くこともできなかった。
「一体どうしたら……」
横になりながらフロリエは焦燥感に駆られていた。聖域を目指すと言い出したのは自分だったのに、娘と共に寝込んでしまい、2人には迷惑をかけてばかりで申し訳なかった。
「さ、奥方様、水を汲んでまいりましたのでお飲みになって下さい」
オリガが水の入った器を差し出す。先にコリンシアに水を飲ませると、次に食事がほとんど喉を通らず、体を起こしているのもつらい状態のフロリエにそっと手を貸して上体を起こした。
「ありがとう……オリガ」
空腹を抱えた小竜は出かけてしまっているため、彼女は手探りで器を受け取り、冷たい水を口に含む。もっとも、いたとしても今の状況では意識を集中させることが出来なかっただろう。
「ティムはどこへ行ったの?」
朝からずっと少年の声を聴いていなかったフロリエはオリガに尋ねる。
「何か食べるものを探しに行っています。あと、昨日奥方様が言っておられた騎士団が見回りに来ていないか、見晴らしが良い場所に行ってみると……」
雨で一日洞窟にいたので、フロリエは村の事などを少し2人に話して聞かせていた。この辺りはまだ聖域に入っておらず、騎士団の巡回地域からも外れているために遭遇する確率は極めて低い。そう聞かされてはいたものの、可能性が少しでもあるのなら足を延ばしてみようと思ったのかもしれない。
「そう……」
フロリエは自分の無力さにため息をついた。そして傍らでぐったりしている娘の頬に手探りで触れ、小さな命が宿っているお腹にも触れる。このような境遇になってしまい、子供達が不憫でならなかった。
「さ、横になっていてくださいませ」
フロリエから飲み終わった水の器をオリガは受け取り、それを片付けるとそっと彼女に手を貸して横になるのを手伝う。
「ありがとう」
「スープか何かお口にできるものをお作りいたしますね」
オリガはそう言いながらフロリエに夜具を掛け、隣のコリンシアの乱れた夜具も直した。
「あなたも休んだ方が……」
「大丈夫です、奥方様」
オリガはそう言ってほほ笑むと、洞窟の外に出た。残った食材はあとわずかだが、悪阻で苦しむフロリエのため、寝込んでいるコリンシアに体力をつけるために汲んで来た水を沸かしてスープを作り始めた。
しばらく作業していると、背後で人の気配がする。
「ティム?」
そう声をかけて振り向くと、そこに立っていたのは10人ほどのいかつい男達だった。
「!」
久しぶりに人に会えたのだが、素直に喜べないのは彼らがどう見てもならず者にしか見えないからだ。彼らは皆武装し、獲物を狙うぎらぎらした目でオリガを見ている。
「俺達にも分けてもらおうか」
「男と思ったら女じゃないか」
「久しぶりに楽しめそうだ」
男たちは口々にそう言いながらオリガに近寄ってくる。
「あなた達にあげる物は何もありません。お引き取り下さい」
恐怖心を抑えながらオリガは毅然とした口調で言い返す。
「気が強い姉ちゃんだ」
「そんなこと言わずに、俺たちにも分けてくれよ」
彼らは武器をちらつかせ、更にいやらしい言葉を口にしながら迫ってきた。そのただならぬ雰囲気にコリンシアが目覚め、泣き始める。
「母様……」
「大丈夫よ」
洞窟の中で、フロリエが小声で娘をなだめるが、男たちはその声をしっかり聴きつけていた。
「中にもいるのか」
「存分に楽しませてもらおう」
男たちは手が届く範囲まで近寄ってきた。オリガは自分の身と洞窟にいる2人を守るために料理用の小刀を持って身構えた。
「来ないで」
「痛い目に合う前に素直に言うことをきいた方が身のためだぞ」
そう言って数人の男がオリガに間合いを詰めてくる。オリガは懸命に小刀を振り回すが、リーダー格の男にあっけなく小刀を取り上げられてしまう。その間に他の男たちが洞窟の奥からフロリエとコリンシアを引きずり出してきた。
「やめて!」
オリガはそう叫ぶと、フロリエをつかんでいる男につかみかかるが、リーダー格の男が後ろから髪を引っ張って引き戻し、彼女を地面に組み伏せる。
「大人しくしろ」
男はなおも抵抗しようとする彼女の衣服を引き裂き、彼女の体を堪能しようとするが、急に動きが止まる。
「グッ……」
偶然だが、抵抗する為に跳ね上げたオリガの足が男の股間に直撃したのだ。
「この女……」
怒った男は思い切り彼女の頬をはたいた。地面にたたきつけられた衝撃で彼女の意識が遠のいていく。
「助けて……ルーク……」
届かないと分かっているが、それでもオリガは恋人に助けを求めていた。
ティムは朝一番で川に向かっていた。雨が降る前に仕掛けておいた魚を捕える罠を見に行ったのだ。ルルーも途中まではついて来ていたのだが、気付くと姿が見えなくなっていた。何かをみつけたのなら、ちょっと惜しいことをしたかもしれない。
「お、大漁」
竹を編んだかごを使った簡単な仕掛けだったが、それでも数匹の川魚がとれていた。ティムは何も食べずに出てきたので、河原で火を起こすと魚を2匹選んで焼き始めた。残りはきっちりと口をふさいだかごに入れて水の中に戻しておく。もう少し辺りを回り、フロリエが口にできそうな木苺か蔓グミを探してから帰りにかごを引き上げようと考えたのだ。
「フロリエ様も食べられればいいけど……」
程よく焼けた魚をほおばりながらティムはひとり呟く。フロリエはティムには懐妊の事を黙っておくようにオリガに言っていたが、彼女は湿地を抜けるころにはそれとなく弟に伝えていた。彼は悪阻で食べ物を受け付けない状態だと知り、彼女が好む果物などを出来る限り探してくるようにしていた。
「男かな……女かな……」
このような状況であったが、ティムはフロリエの懐妊をとても喜び、エドワルドとフロリエの間にできた子供ならばきっときれいな子供だろうとも夢想していた。
腹ごしらえが済み、火の後始末を終えるとティムは早速辺りの探索を開始する。以前に見つけた木苺の茂みには新たに熟した実がほとんどなく、ほんの数粒取れたばかりである。これではとても足りそうにないので、更にその先に行ってみると、足場の悪い場所に蔓グミを発見した。崩れそうな足元に気を付けながら近寄り、熟れた実を一つ口に放り込んでみる。
「これなら喜んでくれるかな」
味に満足した彼は手が届く範囲の実を取っていく。腰につるした籠に十分な量を取ると、女性陣に味わってもらうために一旦洞窟に戻ることにした。
川で魚が入った籠を回収し、意気揚々と洞窟への道を帰ってゆくが、洞窟に近づいたところで、女性の悲鳴が聞こえてきた。ただ事でない様子にティムは今夜のごちそうも投げ捨てて一目散に洞窟を目指した。
「!」
洞窟の前では信じられない光景が広がっていた。10人ほどの男たちが、オリガだけでなく洞窟で休んでいたはずのフロリエとコリンシアも抑え込もうとしていた。フロリエはコリンシアを守ろうと片手で娘をかばい、もう片方の手を振り回して男たちを遠ざけようとしている。男たちは面白そうにそれをよけながら彼女に迫っていく。一方のオリガは意識がないらしく、頭目らしき男に抑え込まれて服をはぎ取られようとしていた。
「姉ちゃんから離れろ!」
ティムはそう叫ぶと、愛用の小剣を抜いて彼らに斬りかかった。
「一体どうしたら……」
横になりながらフロリエは焦燥感に駆られていた。聖域を目指すと言い出したのは自分だったのに、娘と共に寝込んでしまい、2人には迷惑をかけてばかりで申し訳なかった。
「さ、奥方様、水を汲んでまいりましたのでお飲みになって下さい」
オリガが水の入った器を差し出す。先にコリンシアに水を飲ませると、次に食事がほとんど喉を通らず、体を起こしているのもつらい状態のフロリエにそっと手を貸して上体を起こした。
「ありがとう……オリガ」
空腹を抱えた小竜は出かけてしまっているため、彼女は手探りで器を受け取り、冷たい水を口に含む。もっとも、いたとしても今の状況では意識を集中させることが出来なかっただろう。
「ティムはどこへ行ったの?」
朝からずっと少年の声を聴いていなかったフロリエはオリガに尋ねる。
「何か食べるものを探しに行っています。あと、昨日奥方様が言っておられた騎士団が見回りに来ていないか、見晴らしが良い場所に行ってみると……」
雨で一日洞窟にいたので、フロリエは村の事などを少し2人に話して聞かせていた。この辺りはまだ聖域に入っておらず、騎士団の巡回地域からも外れているために遭遇する確率は極めて低い。そう聞かされてはいたものの、可能性が少しでもあるのなら足を延ばしてみようと思ったのかもしれない。
「そう……」
フロリエは自分の無力さにため息をついた。そして傍らでぐったりしている娘の頬に手探りで触れ、小さな命が宿っているお腹にも触れる。このような境遇になってしまい、子供達が不憫でならなかった。
「さ、横になっていてくださいませ」
フロリエから飲み終わった水の器をオリガは受け取り、それを片付けるとそっと彼女に手を貸して横になるのを手伝う。
「ありがとう」
「スープか何かお口にできるものをお作りいたしますね」
オリガはそう言いながらフロリエに夜具を掛け、隣のコリンシアの乱れた夜具も直した。
「あなたも休んだ方が……」
「大丈夫です、奥方様」
オリガはそう言ってほほ笑むと、洞窟の外に出た。残った食材はあとわずかだが、悪阻で苦しむフロリエのため、寝込んでいるコリンシアに体力をつけるために汲んで来た水を沸かしてスープを作り始めた。
しばらく作業していると、背後で人の気配がする。
「ティム?」
そう声をかけて振り向くと、そこに立っていたのは10人ほどのいかつい男達だった。
「!」
久しぶりに人に会えたのだが、素直に喜べないのは彼らがどう見てもならず者にしか見えないからだ。彼らは皆武装し、獲物を狙うぎらぎらした目でオリガを見ている。
「俺達にも分けてもらおうか」
「男と思ったら女じゃないか」
「久しぶりに楽しめそうだ」
男たちは口々にそう言いながらオリガに近寄ってくる。
「あなた達にあげる物は何もありません。お引き取り下さい」
恐怖心を抑えながらオリガは毅然とした口調で言い返す。
「気が強い姉ちゃんだ」
「そんなこと言わずに、俺たちにも分けてくれよ」
彼らは武器をちらつかせ、更にいやらしい言葉を口にしながら迫ってきた。そのただならぬ雰囲気にコリンシアが目覚め、泣き始める。
「母様……」
「大丈夫よ」
洞窟の中で、フロリエが小声で娘をなだめるが、男たちはその声をしっかり聴きつけていた。
「中にもいるのか」
「存分に楽しませてもらおう」
男たちは手が届く範囲まで近寄ってきた。オリガは自分の身と洞窟にいる2人を守るために料理用の小刀を持って身構えた。
「来ないで」
「痛い目に合う前に素直に言うことをきいた方が身のためだぞ」
そう言って数人の男がオリガに間合いを詰めてくる。オリガは懸命に小刀を振り回すが、リーダー格の男にあっけなく小刀を取り上げられてしまう。その間に他の男たちが洞窟の奥からフロリエとコリンシアを引きずり出してきた。
「やめて!」
オリガはそう叫ぶと、フロリエをつかんでいる男につかみかかるが、リーダー格の男が後ろから髪を引っ張って引き戻し、彼女を地面に組み伏せる。
「大人しくしろ」
男はなおも抵抗しようとする彼女の衣服を引き裂き、彼女の体を堪能しようとするが、急に動きが止まる。
「グッ……」
偶然だが、抵抗する為に跳ね上げたオリガの足が男の股間に直撃したのだ。
「この女……」
怒った男は思い切り彼女の頬をはたいた。地面にたたきつけられた衝撃で彼女の意識が遠のいていく。
「助けて……ルーク……」
届かないと分かっているが、それでもオリガは恋人に助けを求めていた。
ティムは朝一番で川に向かっていた。雨が降る前に仕掛けておいた魚を捕える罠を見に行ったのだ。ルルーも途中まではついて来ていたのだが、気付くと姿が見えなくなっていた。何かをみつけたのなら、ちょっと惜しいことをしたかもしれない。
「お、大漁」
竹を編んだかごを使った簡単な仕掛けだったが、それでも数匹の川魚がとれていた。ティムは何も食べずに出てきたので、河原で火を起こすと魚を2匹選んで焼き始めた。残りはきっちりと口をふさいだかごに入れて水の中に戻しておく。もう少し辺りを回り、フロリエが口にできそうな木苺か蔓グミを探してから帰りにかごを引き上げようと考えたのだ。
「フロリエ様も食べられればいいけど……」
程よく焼けた魚をほおばりながらティムはひとり呟く。フロリエはティムには懐妊の事を黙っておくようにオリガに言っていたが、彼女は湿地を抜けるころにはそれとなく弟に伝えていた。彼は悪阻で食べ物を受け付けない状態だと知り、彼女が好む果物などを出来る限り探してくるようにしていた。
「男かな……女かな……」
このような状況であったが、ティムはフロリエの懐妊をとても喜び、エドワルドとフロリエの間にできた子供ならばきっときれいな子供だろうとも夢想していた。
腹ごしらえが済み、火の後始末を終えるとティムは早速辺りの探索を開始する。以前に見つけた木苺の茂みには新たに熟した実がほとんどなく、ほんの数粒取れたばかりである。これではとても足りそうにないので、更にその先に行ってみると、足場の悪い場所に蔓グミを発見した。崩れそうな足元に気を付けながら近寄り、熟れた実を一つ口に放り込んでみる。
「これなら喜んでくれるかな」
味に満足した彼は手が届く範囲の実を取っていく。腰につるした籠に十分な量を取ると、女性陣に味わってもらうために一旦洞窟に戻ることにした。
川で魚が入った籠を回収し、意気揚々と洞窟への道を帰ってゆくが、洞窟に近づいたところで、女性の悲鳴が聞こえてきた。ただ事でない様子にティムは今夜のごちそうも投げ捨てて一目散に洞窟を目指した。
「!」
洞窟の前では信じられない光景が広がっていた。10人ほどの男たちが、オリガだけでなく洞窟で休んでいたはずのフロリエとコリンシアも抑え込もうとしていた。フロリエはコリンシアを守ろうと片手で娘をかばい、もう片方の手を振り回して男たちを遠ざけようとしている。男たちは面白そうにそれをよけながら彼女に迫っていく。一方のオリガは意識がないらしく、頭目らしき男に抑え込まれて服をはぎ取られようとしていた。
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