428 / 435
第3章 ダナシアの祝福
59 永遠に2
しおりを挟む
その翌日、エドワルドは緊張した面持ちでペドロとの会談に臨んでいた。しかも先方の希望で他に誰も交えず、2人きりでの会談となる。国主代行の地位についてから大陸有数の重鎮と顔を合わせてきたが、春の終わりにミハイルと初めて顔を合わせた時よりも今日は緊張しているかもしれない。
ペドロは礎の里を代表してきているのだが、彼の体を気遣ったアレスが全ての雑事を引き受けてくれていた。彼のおかげでペドロのすることは即位式当日の立ち合いとその後の宴、後は大神殿の神官長との面会と国主となるエドワルドとの会談だけだった。会談は当初、フレアやアレスも同席する予定だったのだが、ペドロの希望で余人を交えず、2人だけで行うことになったのだ。
「昨日は挨拶だけで失礼いたしました」
「いや、こちらも無理を言って申し訳ない」
アレスは当代や大賢者といった里の代表の親書だけでなく、ミハイルからの個人的なものも含めてプルメリア各公王やダーバ国主からの親書も一手に引き受けていた。昨日の出迎えの後にエドワルドはアレスとの時間を予め作っていたので、その折に彼宛の大量の親書を受け取り、一緒に里を含めた大陸南部の情勢も聞いている。今日の話題は本当に個人的な内容になるのだろう。
「先ずは、フレアを救ってくれたこと、改めてお礼申し上げる」
椅子に座ったままだったが、ペドロは背筋を伸ばすとその場で深々と頭を下げた。今までもミハイルやアリシア、アレスなど、フレアの親族に同じ理由で頭を下げられていたエドワルドは、半ばあきらめの境地で「当然のことをしたまでです」と返した。
逆に返して言えば、それだけ彼らが彼女の事を大切に守ってきた証でもあり、エドワルドは婚姻という形でその役目を引き継ぐことになったのだ。今では認めてもらえたと思うことにしてその礼を受けるようになっていた。
「こちらこそ、コリンシアがお世話になりました」
ラトリで過ごした日々は、姫君にとって忘れられない体験の連続だったらしく、タランテラに帰還して数か月たった今でも話題によく上る。彼女の話ぶりから村の人達に随分と良くして頂いたのが伝わってきた。
「来年は国主会議もありますし、その折にでも寄らせていただけたらと思います」
「そうして下され」
老ベルクを筆頭にカルネイロ家が里の主権を握りこんでいた今までは、自分たちの意見に反するものを聖域に追いやり、蔑ろにする傾向にあった。その為に聖域に入るのも随分と制限がかけられていたのだが、ベルク共々老ベルクも失脚した今ではその制限も緩やかなものとなっていた。
もちろん、聖なる山を奉る場所である。誰もかれもが入れるわけではないが、世話になった礼をするくらいなら許容の範囲内。ましてや、家族に会いに行くのは誰にも咎められる事などない。国主会議に子供を同伴することはできないが、会議の期間中は妻を里帰りさせて一緒に子供を預ければいいとエドワルドは考えていた。
「それともう一つ、薬草園へのお力添え、感謝いたします」
ベルクの欲望の為に生み出された薬草園が健全なものに生まれ変わったのも、ペドロが種子を厳選し、弟子を派遣してくれたからでもある。この北の大地では初めて扱うものが多いが、グルースのおかげで大きな問題は起こっていないと報告を受けていた。
「これこそ本来あるべき里の姿と思っております。里の中で研鑽され、生み出されたものは公表を惜しむべきではありません。まして薬学は人の命にもかかわるもの。大陸で共有すべき知識でございます」
ペドロのこの考えこそ、本来ダナシアが里に与えた役割だった。だが、里の規模が大きくなるにつれ、運営には多額のお金が必要になってくる。それを捻出できるものが里の内部で力を持つようになり、やがてその理念はいびつに歪められてしまったのだ。ペドロはそれを正そうとして疎まれ、聖域に追いやられてしまったのだ。
「その大義名分を果たしたつもりですが、やはり孫娘はかわいいもの。よく見知ったものが居れば心強いと思い、人材不足を理由にグルースを送り出したのも確かです。あれは偏屈だが腕は確か。そしてあの子ならばその偏屈の御し方も心得ておる。
そういった打算と遠い北の地で育った薬草の薬効の変化も確認したいという研究者の好奇心も混ざっております。純粋な厚意ではない分、そこまで感謝されると恐縮でございます」
神妙に耳を傾けるエドワルドに、ペドロは表情を緩めてそう付け加えた。
「それで役に立つのでしたら結構なことではないでしょうか?」
「そう言っていただけると有難い」
エドワルドの反応にペドロはホッとした様子だったが、すぐに表情を引き締めると本題に入った。
「アレスからも話は聞いているとは思いますが、現在ベルクはダムート島に収監されております。自由になろうと看守の買収を試みたようですが、現状でそれに靡くものは皆無です」
ペドロの言う通り、エドワルドは前日のうちに里の情勢と共に聞いていた。シュザンナの宣告通り、ベルクはダムート島にある牢獄にたった一人で収監されている。全ての罪が暴かれて量刑が確定するまでの措置だったはずなのだが、罪状があまりにも多すぎて全てを調べ上げるにはまだ時間がかかる。そこで判明している罪状だけで協議した結果、いずれも悪辣なために終身刑が確定していた。
牢獄は飛竜に乗らないと行くことが出来ない断崖絶壁の上にあり、数日に一度看守の交代と共に必要最低限の物資を与えられるだけの生活を送っている。今まで贅沢三昧な生活を送っていた彼には酷な環境のはずなのだが、それでも音を上げることなく執念で生き延びているらしい。生き延びることで一縷の望みにかけているのかもしれないが、それは徒労に終わるだろう。
「カルネイロ商会の解体は各国の協力の元、順調に進んでおります。不正に関わった主だったものは既に捕らえておりますので、組織としての機能は失われております。あと、想定されるのは単発的な復讐です。過度な警戒は必要ありませんが、用心を怠りませぬようお気をつけなされ」
「ご忠告、痛み入ります」
真っ先に狙われるのはエドワルド自身かベルクが執着していたフレアだろう。最大の懸念は『死神の手』と呼ばれる傭兵団の復活だが、それももう心配は無くなった。オットーの取り調べで内乱の初手となるエドワルド襲撃でその数は半減し、更にその残りはラトリ襲撃に向かわせた為に、全員命を落とすか捕われている。その維持に『名もなき魔薬』が不可欠だったことも合わせると、壊滅したとみていいだろう。
残るは組織の末端で使われていた者達だが、危険を冒してまでベルクに忠義だてするとも思えない。それでもエドワルドは万が一に備え、特にフレアの身近に仕える者は信用出来る者で固めている。安全の為だけでなく、フレアが心安く生活できるようにととられた措置でもある。
「フレアもアレスもあの者に随分と傷つけられてきた。賢者と呼ばれる身でありながら、自ら手にかけようと幾度思ったことか……」
ペドロは握りしめた手を震わせ、言葉を続ける。
「正直、ダムート島に乗り込みたい気持ちはあります。しかし、この国に来て昨日あの子と一緒に過ごしているうちにその暗い気持ちも霧散しました。驚いたことに、内気だったあの子がもうこの地になじみ、生き生きとしているのです。前を向いて歩き出したあの子を見ていると、あの者はもう既に制裁を受けているのだからそれでいいではないかとも思えてくるのです。この年になって、復讐のむなしさを教えられるとは私もまだ修養が足りません」
ペドロの懺悔にも似た告白にエドワルドは思わず息をのんだ。前日に出迎えた時には温和な印象を受けたのだが、賢者とも思えないほど激しい負の感情を顕わにする彼にかける言葉が見つからない。だが、本音を吐露したところで少し気持ちが落ち着いたのか、居住まいを正して本来の温和な表情に戻る。この辺りの切り替えはやはり年の功なのだろう。
「あの子は私の宝です。慣れぬ地に送り出すのは不安がありました。夏に訪れたルイス卿にも話を聞いて半信半疑だったのですが、しかし、実際にこの国を訪れて殿下を始めとした皆様と接して杞憂に終わりました」
「既に彼女はこの国にとって無くてはならない存在になっています。できるだけ居心地良くしてもらおうと、皆も頑張ってくれています」
セシーリアとソフィアが率先してフレアの世話を焼いていた。2人が相手だとエドワルドすら逆らえないので、彼女は最強の味方を手に入れているのだ。
「それを聞いて安堵いたしました」
ペドロはここでいったん姿勢を正し、改めてエドワルドに向き直る。
「殿下……いえ、もう陛下と呼ばせていただきます。フレアの事、どうかよろしくお願いします」
「私にとっても大切な女性です。全力で守っていきます」
「頼みます」
これでエドワルドはフレアを今まで守ってきた家族全員から認められて後を任されたことになる。がっちりと交わされた握手はその為の神聖な儀式のように思えた。
ペドロは礎の里を代表してきているのだが、彼の体を気遣ったアレスが全ての雑事を引き受けてくれていた。彼のおかげでペドロのすることは即位式当日の立ち合いとその後の宴、後は大神殿の神官長との面会と国主となるエドワルドとの会談だけだった。会談は当初、フレアやアレスも同席する予定だったのだが、ペドロの希望で余人を交えず、2人だけで行うことになったのだ。
「昨日は挨拶だけで失礼いたしました」
「いや、こちらも無理を言って申し訳ない」
アレスは当代や大賢者といった里の代表の親書だけでなく、ミハイルからの個人的なものも含めてプルメリア各公王やダーバ国主からの親書も一手に引き受けていた。昨日の出迎えの後にエドワルドはアレスとの時間を予め作っていたので、その折に彼宛の大量の親書を受け取り、一緒に里を含めた大陸南部の情勢も聞いている。今日の話題は本当に個人的な内容になるのだろう。
「先ずは、フレアを救ってくれたこと、改めてお礼申し上げる」
椅子に座ったままだったが、ペドロは背筋を伸ばすとその場で深々と頭を下げた。今までもミハイルやアリシア、アレスなど、フレアの親族に同じ理由で頭を下げられていたエドワルドは、半ばあきらめの境地で「当然のことをしたまでです」と返した。
逆に返して言えば、それだけ彼らが彼女の事を大切に守ってきた証でもあり、エドワルドは婚姻という形でその役目を引き継ぐことになったのだ。今では認めてもらえたと思うことにしてその礼を受けるようになっていた。
「こちらこそ、コリンシアがお世話になりました」
ラトリで過ごした日々は、姫君にとって忘れられない体験の連続だったらしく、タランテラに帰還して数か月たった今でも話題によく上る。彼女の話ぶりから村の人達に随分と良くして頂いたのが伝わってきた。
「来年は国主会議もありますし、その折にでも寄らせていただけたらと思います」
「そうして下され」
老ベルクを筆頭にカルネイロ家が里の主権を握りこんでいた今までは、自分たちの意見に反するものを聖域に追いやり、蔑ろにする傾向にあった。その為に聖域に入るのも随分と制限がかけられていたのだが、ベルク共々老ベルクも失脚した今ではその制限も緩やかなものとなっていた。
もちろん、聖なる山を奉る場所である。誰もかれもが入れるわけではないが、世話になった礼をするくらいなら許容の範囲内。ましてや、家族に会いに行くのは誰にも咎められる事などない。国主会議に子供を同伴することはできないが、会議の期間中は妻を里帰りさせて一緒に子供を預ければいいとエドワルドは考えていた。
「それともう一つ、薬草園へのお力添え、感謝いたします」
ベルクの欲望の為に生み出された薬草園が健全なものに生まれ変わったのも、ペドロが種子を厳選し、弟子を派遣してくれたからでもある。この北の大地では初めて扱うものが多いが、グルースのおかげで大きな問題は起こっていないと報告を受けていた。
「これこそ本来あるべき里の姿と思っております。里の中で研鑽され、生み出されたものは公表を惜しむべきではありません。まして薬学は人の命にもかかわるもの。大陸で共有すべき知識でございます」
ペドロのこの考えこそ、本来ダナシアが里に与えた役割だった。だが、里の規模が大きくなるにつれ、運営には多額のお金が必要になってくる。それを捻出できるものが里の内部で力を持つようになり、やがてその理念はいびつに歪められてしまったのだ。ペドロはそれを正そうとして疎まれ、聖域に追いやられてしまったのだ。
「その大義名分を果たしたつもりですが、やはり孫娘はかわいいもの。よく見知ったものが居れば心強いと思い、人材不足を理由にグルースを送り出したのも確かです。あれは偏屈だが腕は確か。そしてあの子ならばその偏屈の御し方も心得ておる。
そういった打算と遠い北の地で育った薬草の薬効の変化も確認したいという研究者の好奇心も混ざっております。純粋な厚意ではない分、そこまで感謝されると恐縮でございます」
神妙に耳を傾けるエドワルドに、ペドロは表情を緩めてそう付け加えた。
「それで役に立つのでしたら結構なことではないでしょうか?」
「そう言っていただけると有難い」
エドワルドの反応にペドロはホッとした様子だったが、すぐに表情を引き締めると本題に入った。
「アレスからも話は聞いているとは思いますが、現在ベルクはダムート島に収監されております。自由になろうと看守の買収を試みたようですが、現状でそれに靡くものは皆無です」
ペドロの言う通り、エドワルドは前日のうちに里の情勢と共に聞いていた。シュザンナの宣告通り、ベルクはダムート島にある牢獄にたった一人で収監されている。全ての罪が暴かれて量刑が確定するまでの措置だったはずなのだが、罪状があまりにも多すぎて全てを調べ上げるにはまだ時間がかかる。そこで判明している罪状だけで協議した結果、いずれも悪辣なために終身刑が確定していた。
牢獄は飛竜に乗らないと行くことが出来ない断崖絶壁の上にあり、数日に一度看守の交代と共に必要最低限の物資を与えられるだけの生活を送っている。今まで贅沢三昧な生活を送っていた彼には酷な環境のはずなのだが、それでも音を上げることなく執念で生き延びているらしい。生き延びることで一縷の望みにかけているのかもしれないが、それは徒労に終わるだろう。
「カルネイロ商会の解体は各国の協力の元、順調に進んでおります。不正に関わった主だったものは既に捕らえておりますので、組織としての機能は失われております。あと、想定されるのは単発的な復讐です。過度な警戒は必要ありませんが、用心を怠りませぬようお気をつけなされ」
「ご忠告、痛み入ります」
真っ先に狙われるのはエドワルド自身かベルクが執着していたフレアだろう。最大の懸念は『死神の手』と呼ばれる傭兵団の復活だが、それももう心配は無くなった。オットーの取り調べで内乱の初手となるエドワルド襲撃でその数は半減し、更にその残りはラトリ襲撃に向かわせた為に、全員命を落とすか捕われている。その維持に『名もなき魔薬』が不可欠だったことも合わせると、壊滅したとみていいだろう。
残るは組織の末端で使われていた者達だが、危険を冒してまでベルクに忠義だてするとも思えない。それでもエドワルドは万が一に備え、特にフレアの身近に仕える者は信用出来る者で固めている。安全の為だけでなく、フレアが心安く生活できるようにととられた措置でもある。
「フレアもアレスもあの者に随分と傷つけられてきた。賢者と呼ばれる身でありながら、自ら手にかけようと幾度思ったことか……」
ペドロは握りしめた手を震わせ、言葉を続ける。
「正直、ダムート島に乗り込みたい気持ちはあります。しかし、この国に来て昨日あの子と一緒に過ごしているうちにその暗い気持ちも霧散しました。驚いたことに、内気だったあの子がもうこの地になじみ、生き生きとしているのです。前を向いて歩き出したあの子を見ていると、あの者はもう既に制裁を受けているのだからそれでいいではないかとも思えてくるのです。この年になって、復讐のむなしさを教えられるとは私もまだ修養が足りません」
ペドロの懺悔にも似た告白にエドワルドは思わず息をのんだ。前日に出迎えた時には温和な印象を受けたのだが、賢者とも思えないほど激しい負の感情を顕わにする彼にかける言葉が見つからない。だが、本音を吐露したところで少し気持ちが落ち着いたのか、居住まいを正して本来の温和な表情に戻る。この辺りの切り替えはやはり年の功なのだろう。
「あの子は私の宝です。慣れぬ地に送り出すのは不安がありました。夏に訪れたルイス卿にも話を聞いて半信半疑だったのですが、しかし、実際にこの国を訪れて殿下を始めとした皆様と接して杞憂に終わりました」
「既に彼女はこの国にとって無くてはならない存在になっています。できるだけ居心地良くしてもらおうと、皆も頑張ってくれています」
セシーリアとソフィアが率先してフレアの世話を焼いていた。2人が相手だとエドワルドすら逆らえないので、彼女は最強の味方を手に入れているのだ。
「それを聞いて安堵いたしました」
ペドロはここでいったん姿勢を正し、改めてエドワルドに向き直る。
「殿下……いえ、もう陛下と呼ばせていただきます。フレアの事、どうかよろしくお願いします」
「私にとっても大切な女性です。全力で守っていきます」
「頼みます」
これでエドワルドはフレアを今まで守ってきた家族全員から認められて後を任されたことになる。がっちりと交わされた握手はその為の神聖な儀式のように思えた。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる