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第13話 ミーシャの戦い
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私は必死に思考を巡らせます。
しかし、情報が足りません。
ミーシャ達を説得する材料として考えられるのは、やはり、彼が彼女達に与えている苦痛です。
彼は、私やミーシャ以外のコレクションのことも、脱がせたり触ったりしたと言っていました。
彼女達は本気で嫌がっているのですから、彼の元から離れるように諭せば、何とかなりそうだと思えます。
しかし、そう考えてしまう私は、とても甘いのでしょう。
彼の理想の人格は、辱められたことを理由として、彼を見捨てたりはしないはずです。
普通に考えては駄目です。彼の歪んだ人格の分身に、常識は通用しません。もっと作戦を練る必要があるのです。
私が、いくつかのシミュレーションをしていると、突然馬車が止まりました。
何事かと思い前方を見ますと、薄汚れた格好をした男達が、私達の進路を妨害しています。
「ここを通りたければ、金を置いていけ! 金がなければ、女でも構わないぞ?」
そう言って、男達は下品な笑い声を上げました。
どうやら、彼らは盗賊団のようです。
通常であれば、メンバーの大半が少女である集団など、盗賊の餌食になってしまうでしょう。
襲われた女性が惨たらしい仕打ちを受けたという話も、珍しくはありません。
私の全身から、血の気が引いていきました。
しかし、恐怖を覚えているのは私だけであるようでした。
少女達は、何故か嬉しそうに見えます。
「ねえ、お兄ちゃん。あいつら、私が片付けてもいいよね?」
ナナが、目を輝かせながら言いました。
この少女は、早く彼の「妹」として、「兄」の役に立ちたいのでしょう。
そんな彼女のことが、とても哀れに思えました。
「いいえ、師匠! 今度は私にやらせてください!」
レミという赤い髪の少女が、競うように申し出ます。
他の少女達も、彼の命令さえあれば戦うつもりのようでした。
「待て。折角だから、ミーシャの力を見せてもらおう」
彼はそう言って、私の妹の頭を撫でました。
「そんな……!」
「心配するな。ミーシャが負けることなどあり得ない。一瞬で終わるはずだ」
「そういう問題では……!」
ミーシャが、あの男達と戦う。
それは、とんでもないことでした。
妹には、誰かと互いを傷付け合うようなことは、してほしくなかったのです。
彼は、私の抗議を無視して、ミーシャに大振りのナイフを渡しました。
ミーシャは、嬉しそうな顔をしてナイフを受け取ると、1人だけ馬車を降ります。
私は、何とかして引き留めようとしましたが、彼が私の両肩を、後ろから掴んで引っ張りました。
「嫌っ!」
「いいから、黙って見ていろ」
「お願い、やめて、ミーシャ!」
私の叫びも虚しく、ミーシャは盗賊団と対峙しました。
「何だ、お前? まさか、お前みたいなガキが1人で戦うつもりか?」
盗賊団の男の1人が、余裕の態度でそう言った、その直後。
ミーシャは、一瞬で彼らの後方へ移動していました。
彼女が何をしたのか、全く見えませんでした。
私の推測では、ミーシャは……一瞬で、盗賊団の全員をナイフで切り裂き、彼らの後方まで移動したのでしょう。
盗賊団の男達の全身から血が噴き出すのを見ながら、私はそのようなことを考えていました。
瞬きをするような、一瞬で。
数十人の男達は、命を奪われました。
そして、彼らを殺したのは、私が愛している妹なのです。
私は、そのことを認識するのと同時に、意識が遠のいていくのを感じました。
しかし、情報が足りません。
ミーシャ達を説得する材料として考えられるのは、やはり、彼が彼女達に与えている苦痛です。
彼は、私やミーシャ以外のコレクションのことも、脱がせたり触ったりしたと言っていました。
彼女達は本気で嫌がっているのですから、彼の元から離れるように諭せば、何とかなりそうだと思えます。
しかし、そう考えてしまう私は、とても甘いのでしょう。
彼の理想の人格は、辱められたことを理由として、彼を見捨てたりはしないはずです。
普通に考えては駄目です。彼の歪んだ人格の分身に、常識は通用しません。もっと作戦を練る必要があるのです。
私が、いくつかのシミュレーションをしていると、突然馬車が止まりました。
何事かと思い前方を見ますと、薄汚れた格好をした男達が、私達の進路を妨害しています。
「ここを通りたければ、金を置いていけ! 金がなければ、女でも構わないぞ?」
そう言って、男達は下品な笑い声を上げました。
どうやら、彼らは盗賊団のようです。
通常であれば、メンバーの大半が少女である集団など、盗賊の餌食になってしまうでしょう。
襲われた女性が惨たらしい仕打ちを受けたという話も、珍しくはありません。
私の全身から、血の気が引いていきました。
しかし、恐怖を覚えているのは私だけであるようでした。
少女達は、何故か嬉しそうに見えます。
「ねえ、お兄ちゃん。あいつら、私が片付けてもいいよね?」
ナナが、目を輝かせながら言いました。
この少女は、早く彼の「妹」として、「兄」の役に立ちたいのでしょう。
そんな彼女のことが、とても哀れに思えました。
「いいえ、師匠! 今度は私にやらせてください!」
レミという赤い髪の少女が、競うように申し出ます。
他の少女達も、彼の命令さえあれば戦うつもりのようでした。
「待て。折角だから、ミーシャの力を見せてもらおう」
彼はそう言って、私の妹の頭を撫でました。
「そんな……!」
「心配するな。ミーシャが負けることなどあり得ない。一瞬で終わるはずだ」
「そういう問題では……!」
ミーシャが、あの男達と戦う。
それは、とんでもないことでした。
妹には、誰かと互いを傷付け合うようなことは、してほしくなかったのです。
彼は、私の抗議を無視して、ミーシャに大振りのナイフを渡しました。
ミーシャは、嬉しそうな顔をしてナイフを受け取ると、1人だけ馬車を降ります。
私は、何とかして引き留めようとしましたが、彼が私の両肩を、後ろから掴んで引っ張りました。
「嫌っ!」
「いいから、黙って見ていろ」
「お願い、やめて、ミーシャ!」
私の叫びも虚しく、ミーシャは盗賊団と対峙しました。
「何だ、お前? まさか、お前みたいなガキが1人で戦うつもりか?」
盗賊団の男の1人が、余裕の態度でそう言った、その直後。
ミーシャは、一瞬で彼らの後方へ移動していました。
彼女が何をしたのか、全く見えませんでした。
私の推測では、ミーシャは……一瞬で、盗賊団の全員をナイフで切り裂き、彼らの後方まで移動したのでしょう。
盗賊団の男達の全身から血が噴き出すのを見ながら、私はそのようなことを考えていました。
瞬きをするような、一瞬で。
数十人の男達は、命を奪われました。
そして、彼らを殺したのは、私が愛している妹なのです。
私は、そのことを認識するのと同時に、意識が遠のいていくのを感じました。
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