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第15話:二見さんとデート
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ついにこの日が来た。来てしまった。二見さんとデートの日。待ち合わせは二見さんの家の最寄り駅にした。二見さんの家は、筥崎宮駅が最寄り駅らしい。
福岡の中では昔ながらの一戸建てが多い感じの場所で、主に住宅街。駅名の通り大きな神社もあるから、二見さんとの仲が慣れてきたら一緒に散歩しても楽しそうだ。
そういった意味では、今の僕のスキルではカラオケに行った時の様に二見さんに気を使わせるだけの時間になってしまいそうだ。
そもそもデートが初めてなのに、相手がいきなり3スターズの二見さんとかハードルが高すぎる。
駅では改札を出なければ運賃は掛からない。だけど、それでもキセルになるらしいのでちゃんと一旦改札を出る。
別に誰も見てないけど、こんなところでカルマを減らしたら、うまくいくデートもうまくいかなくなってしまうかもしれない。
九州版の「Suica」である「nimoca」を改札にタッチして改札口を出た。五十嵐家の最寄り駅と違って、人が混みあうような駅じゃないので日曜日という事もあって人は少ない。
僕が改札から出たのを見つけた二見さんがすぐに駆け寄ってきてくれた。顔を見た瞬間に笑顔になるのってすごく嬉しいものだ。しかも、その笑顔が可愛いとさらに効果が高い。
髪は一部編み込みにしたみたいで、普段とちょっと違う感じ。いつもの少しウェービーなだばーっと長い髪はそのままに、両脇で細い三つ編みみたいになってて、その三つ編みが後ろで結んであるみたいな凝ったもの。
チェックっぽい柄の薄いパープルのワンピースなのだけど、首元が肩までバックり開いている。下に肩が出ている黒いシャツを着ているので、重ね着なのに肩が出ていてすごくぐっとくるデザイン。
袖は長くて指しか出ていないのもすごく可愛い。スカートの裾は膝上10センチくらいで、ちょっと短め。完全に目を奪われていた。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ……」
可愛いですねって褒めたいけど、気後れして何も言えなかった……完全にタイミングを外してしまった。後で!後で言おう!
「じゃあ、行きましょうか」
「はい」
まだ恥ずかしくて、手をつなぐなんてできないけど、一緒に歩くだけですごく嬉しかった。
映画を見るので行先は、博多駅を選んだ。博多駅は福岡でも最大級の駅。
天神と並ぶ繁華街で駅ビルだけで映画館やレストランなど1日過ごすこともできそうなほどの充実ぶりだ。僕にとっては少し家に戻る方向の駅だけど、二見さんを迎えに行きたかったのだ。
地下鉄の中では、いつもの制服姿とは違う私服の二見さん。緊張した表情だ。こちらも真剣な顔になってしまう。
「最初は映画に行こうかと思います」
「いいですね」
どうやら、映画でOKらしい。そういえば、漠然と「映画」にしていたけど、何を見るのか詳しくは決めていない!駅ビル上の映画館に着いて、二見さんと話して決めることになった。
「しまった。何観るか決めてませんでしたね」
「あ、確かに!」
映画館の入口で二人あたふたすることになってしまった。どうしよう、男の僕がイニシアティブを取らないと!アニメ映画は……ないだろうなぁ。この時点で、少年探偵と魔法少女と幼稚園児の冒険が消えた。
ミステリー……は今やっていないし、アクション映画!……も、今話題の物じゃない。恋愛映画……は俳優がかっこよく見えて横にいる一般人の僕が見劣りする……みたいな話もあるし……ホラー……デートで怖がらせてどうする!
しまった!見るものがない!誰だ映画なら大丈夫って言ったやつ!
「えーと、えーと……」
決め切らないやつと思われたら、マイナスイメージでは!?焦りが更に焦らせてくる。
「流星くんはアクション映画は観ますか?」
「え?はい。人並みには」
「では、ここは一つ、アクション映画でどうでしょう?」
「はい!そうしましょう!」
二見さんに助け舟を出されてしまった……かっこ悪い。ここは一つ、ポップコーンでも買って挽回しようか。
席は全部決まっているらしいので、慌てて入らなくても大丈夫。一旦席についてから、ポップコーンを買いに出た。
「ポップコーン買ってきます。少し待っててください」
「はい」
彼女を置いて離れていくのもなんだか気が引けたけど、先に入ってしまったのだからしょうがない。映画の開始時間までに一緒に買って、一緒に入ればよかった。
段取りの悪さが目立つ。普段ならこんな事はないのだろうけど、やっぱり緊張してる。
売店まで来て止まってしまった。レギュラー、キャラメル、チョコレート。フレーバーが3つも!二見さんならどれを選ぶ!?
定番の塩味か!?いやいや、映画館ならではのキャラメルか!?チョコレートとか珍しいからこっちか!?2つ買って好きな方を選んでもらうか!?それだとジュースを2個同時に運べない!
人生は選択の連続だ。ゲームならセーブできるのに、僕の人生ではセーブポイントなんか見たことない。
結局、自分が食べてみたいのもあって、キャラメルにして、飲み物はコーラ。サイズはМ。ジュースは2つを片手で持てる取手付きトレイ(紙製)を付けてもらえたから解決。そりゃそうだ。手に持てないと売れないから店だって考えてるはず。
ポップコーンとコーラを買うだけでやたら時間がかかった。席に戻ると、もう頭がカメラのやつが撮影禁止を案内していた。
「おまたせ。中々決められなくて」
ジュースを手渡す。
「わぁ、ありがとうございます!」
「ポップコーンは持てなくて1個になっちゃったから一緒に食べましょう」
「はい、ありがとうございます。1個丸々だと私には多かったからちょうど良かったです」
にっこり笑顔で返したけど、また彼女にフォローしてもらった。中々勝手が分からない。難しいものだ。
映画の最中、左横に座る二見さんを、見るのが恥ずかしくてドキドキしていた。もし、意識を視覚化できるセンサーみたいな物があったとしたら、僕の意識は全部が左側の二見さんの方に向かっていることだろう。
そんな恥ずかしい結果が表示されない分、そんなセンサーは開発されてなくてよかった。映画はアクションシーンで騒がしくなったり、緊張のシーンで静かになったりするのだけど、僕の意識は全部二見さんに向いていた。
彼女は僕のどこが良かったんだろう?僕の良いところはどこだろう。映画の内容は全く頭に入らず、変なことばかり考えていた。
映画が終わると12時を過ぎてもう1時近かった。お腹も空いたかもしれない。昼ごはんを食べられる場所……僕は日曜日の博多駅を甘く見ていたようだ。
どの店も行列ができている。二見さんとご飯が食べられない!コンビニって訳にはいかないし、ファストフードもあんまりだ。しかも、ファストフードの席すらない。
また選択に迫られている。焦る僕。二見さんとデートと言うことで浮かれあがっていた僕は、下調べを怠るという致命的なミスをしていた。今から調べる事なんてできない。彼女を楽しませたいのに、僕は彼女のことをほとんど知らないのだ。
たった3種類のポップコーンのフレーバーから彼女が食べたい1つを選べないのだから。
博多駅上の「レストランゾーン」の廊下で二人立ち尽くしてしまった……ダメだ。二見さんを楽しませたいのに、情報武装が全然足りてない。気軽に映画を見ようくらいの感覚では思い通りにならない!
これが貴行なら「ネカフェでも行くか」とカラオケかネカフェにでも移動するのだけど、二見さんをそんなところに連れ込む訳にはいかない。完全に手詰まりだ。僕に、彼女を楽しませるだけのノウハウはなかった。
「ごめん……二見さん。僕の調査不足で……二見さんとデートできると思って浮かれすぎてた……楽しませたいのに……」
悔しさが込み上げてくる。無意識にこぶしを握り締めた。それと同時に二見さんに申し訳ない気持ちが溢れてきた。
「流星くん……」
申し訳なくて、二見さんの顔なんて見れない。今にも逃げ出したいところだ。それでも、僕は責任もって彼女からの言葉を謹んで受けるしかないのだ。これから何を言われるとしても。
福岡の中では昔ながらの一戸建てが多い感じの場所で、主に住宅街。駅名の通り大きな神社もあるから、二見さんとの仲が慣れてきたら一緒に散歩しても楽しそうだ。
そういった意味では、今の僕のスキルではカラオケに行った時の様に二見さんに気を使わせるだけの時間になってしまいそうだ。
そもそもデートが初めてなのに、相手がいきなり3スターズの二見さんとかハードルが高すぎる。
駅では改札を出なければ運賃は掛からない。だけど、それでもキセルになるらしいのでちゃんと一旦改札を出る。
別に誰も見てないけど、こんなところでカルマを減らしたら、うまくいくデートもうまくいかなくなってしまうかもしれない。
九州版の「Suica」である「nimoca」を改札にタッチして改札口を出た。五十嵐家の最寄り駅と違って、人が混みあうような駅じゃないので日曜日という事もあって人は少ない。
僕が改札から出たのを見つけた二見さんがすぐに駆け寄ってきてくれた。顔を見た瞬間に笑顔になるのってすごく嬉しいものだ。しかも、その笑顔が可愛いとさらに効果が高い。
髪は一部編み込みにしたみたいで、普段とちょっと違う感じ。いつもの少しウェービーなだばーっと長い髪はそのままに、両脇で細い三つ編みみたいになってて、その三つ編みが後ろで結んであるみたいな凝ったもの。
チェックっぽい柄の薄いパープルのワンピースなのだけど、首元が肩までバックり開いている。下に肩が出ている黒いシャツを着ているので、重ね着なのに肩が出ていてすごくぐっとくるデザイン。
袖は長くて指しか出ていないのもすごく可愛い。スカートの裾は膝上10センチくらいで、ちょっと短め。完全に目を奪われていた。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ……」
可愛いですねって褒めたいけど、気後れして何も言えなかった……完全にタイミングを外してしまった。後で!後で言おう!
「じゃあ、行きましょうか」
「はい」
まだ恥ずかしくて、手をつなぐなんてできないけど、一緒に歩くだけですごく嬉しかった。
映画を見るので行先は、博多駅を選んだ。博多駅は福岡でも最大級の駅。
天神と並ぶ繁華街で駅ビルだけで映画館やレストランなど1日過ごすこともできそうなほどの充実ぶりだ。僕にとっては少し家に戻る方向の駅だけど、二見さんを迎えに行きたかったのだ。
地下鉄の中では、いつもの制服姿とは違う私服の二見さん。緊張した表情だ。こちらも真剣な顔になってしまう。
「最初は映画に行こうかと思います」
「いいですね」
どうやら、映画でOKらしい。そういえば、漠然と「映画」にしていたけど、何を見るのか詳しくは決めていない!駅ビル上の映画館に着いて、二見さんと話して決めることになった。
「しまった。何観るか決めてませんでしたね」
「あ、確かに!」
映画館の入口で二人あたふたすることになってしまった。どうしよう、男の僕がイニシアティブを取らないと!アニメ映画は……ないだろうなぁ。この時点で、少年探偵と魔法少女と幼稚園児の冒険が消えた。
ミステリー……は今やっていないし、アクション映画!……も、今話題の物じゃない。恋愛映画……は俳優がかっこよく見えて横にいる一般人の僕が見劣りする……みたいな話もあるし……ホラー……デートで怖がらせてどうする!
しまった!見るものがない!誰だ映画なら大丈夫って言ったやつ!
「えーと、えーと……」
決め切らないやつと思われたら、マイナスイメージでは!?焦りが更に焦らせてくる。
「流星くんはアクション映画は観ますか?」
「え?はい。人並みには」
「では、ここは一つ、アクション映画でどうでしょう?」
「はい!そうしましょう!」
二見さんに助け舟を出されてしまった……かっこ悪い。ここは一つ、ポップコーンでも買って挽回しようか。
席は全部決まっているらしいので、慌てて入らなくても大丈夫。一旦席についてから、ポップコーンを買いに出た。
「ポップコーン買ってきます。少し待っててください」
「はい」
彼女を置いて離れていくのもなんだか気が引けたけど、先に入ってしまったのだからしょうがない。映画の開始時間までに一緒に買って、一緒に入ればよかった。
段取りの悪さが目立つ。普段ならこんな事はないのだろうけど、やっぱり緊張してる。
売店まで来て止まってしまった。レギュラー、キャラメル、チョコレート。フレーバーが3つも!二見さんならどれを選ぶ!?
定番の塩味か!?いやいや、映画館ならではのキャラメルか!?チョコレートとか珍しいからこっちか!?2つ買って好きな方を選んでもらうか!?それだとジュースを2個同時に運べない!
人生は選択の連続だ。ゲームならセーブできるのに、僕の人生ではセーブポイントなんか見たことない。
結局、自分が食べてみたいのもあって、キャラメルにして、飲み物はコーラ。サイズはМ。ジュースは2つを片手で持てる取手付きトレイ(紙製)を付けてもらえたから解決。そりゃそうだ。手に持てないと売れないから店だって考えてるはず。
ポップコーンとコーラを買うだけでやたら時間がかかった。席に戻ると、もう頭がカメラのやつが撮影禁止を案内していた。
「おまたせ。中々決められなくて」
ジュースを手渡す。
「わぁ、ありがとうございます!」
「ポップコーンは持てなくて1個になっちゃったから一緒に食べましょう」
「はい、ありがとうございます。1個丸々だと私には多かったからちょうど良かったです」
にっこり笑顔で返したけど、また彼女にフォローしてもらった。中々勝手が分からない。難しいものだ。
映画の最中、左横に座る二見さんを、見るのが恥ずかしくてドキドキしていた。もし、意識を視覚化できるセンサーみたいな物があったとしたら、僕の意識は全部が左側の二見さんの方に向かっていることだろう。
そんな恥ずかしい結果が表示されない分、そんなセンサーは開発されてなくてよかった。映画はアクションシーンで騒がしくなったり、緊張のシーンで静かになったりするのだけど、僕の意識は全部二見さんに向いていた。
彼女は僕のどこが良かったんだろう?僕の良いところはどこだろう。映画の内容は全く頭に入らず、変なことばかり考えていた。
映画が終わると12時を過ぎてもう1時近かった。お腹も空いたかもしれない。昼ごはんを食べられる場所……僕は日曜日の博多駅を甘く見ていたようだ。
どの店も行列ができている。二見さんとご飯が食べられない!コンビニって訳にはいかないし、ファストフードもあんまりだ。しかも、ファストフードの席すらない。
また選択に迫られている。焦る僕。二見さんとデートと言うことで浮かれあがっていた僕は、下調べを怠るという致命的なミスをしていた。今から調べる事なんてできない。彼女を楽しませたいのに、僕は彼女のことをほとんど知らないのだ。
たった3種類のポップコーンのフレーバーから彼女が食べたい1つを選べないのだから。
博多駅上の「レストランゾーン」の廊下で二人立ち尽くしてしまった……ダメだ。二見さんを楽しませたいのに、情報武装が全然足りてない。気軽に映画を見ようくらいの感覚では思い通りにならない!
これが貴行なら「ネカフェでも行くか」とカラオケかネカフェにでも移動するのだけど、二見さんをそんなところに連れ込む訳にはいかない。完全に手詰まりだ。僕に、彼女を楽しませるだけのノウハウはなかった。
「ごめん……二見さん。僕の調査不足で……二見さんとデートできると思って浮かれすぎてた……楽しませたいのに……」
悔しさが込み上げてくる。無意識にこぶしを握り締めた。それと同時に二見さんに申し訳ない気持ちが溢れてきた。
「流星くん……」
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