上 下
29 / 58
奴隷との新しい生活

029_奴隷と好き好きホールド

しおりを挟む
シロが毎日ベッドに入ってくる。
このところ毎日一緒に寝ている。

しかも、寝るときは決まって俺の首に手を回して抱き着いて眠る。
そして、耳を俺の胸に当てて、心臓の音を聞きながら眠りにつく。
更に、足も絡めてきて完全に雁字搦めだ。


俺はこの状況を『好き好きホールド』と密かに名付けた。


こんなに『好き』を伝えてくる仕草があるだろうか。
こんなにも誰かと一緒に寝るということが温かくて、心まで満たされることだとは思ってもみなかった。
しかも、色々やわらかい。

俺は、女の子は苦手でずっと避けてきた。
いつも視界の隅でくすくすと俺を笑いものにしてきた女の子たち・・・

その真逆で、一番近くで一番純粋な『好き』を伝えてくるシロ。
俺は彼女が好きでたまらない。

ただ、彼女が俺に求めてくるのが『彼氏』なのか、『保護者』なのか、分からずに踏みとどまっていた。

今もシロは横にいる。
ときどき自分の胸にも手を当てて心臓の音が同じタイミングで鼓動を打たないか挑戦しているようだ。
これは以前言っていたみたいに、俺の心臓の鼓動とシロの心臓の鼓動が同じになったら俺と一つになれると考えているらしい。

合わせてあげたいけれど、こんなにかわいい子にベッドでぴったりとくっつかれて冷静でいられる男はいるのだろうか。
俺の心臓はいつも鼓動を速めていただろうから、これから眠ろうとしているシロと合うことはないように思えた。

最近、ひとつ追加になったことがある。

「かみさま、おやすみなさい」

(ちゅ)

シロは寝る前必ずキスをしてから寝る。

この『据え膳』はどういう状況だろうか。
もしかしたら、豪華料理が目の前に並んで、既に『あーん』の状態まで来ているかもしれない。
後は、ただ俺が口を閉じるだけ・・・

キフォティラピア・フロントーサ・・・つまり子供を口の中で育てる魚は、自分の子供を決して食べない。
俺が口を閉じるということは、シロの期待を裏切ることになるのかもしれない・・・
それが怖かった。

「かみさま、疲れてますか?」

シロが心配して声をかけてきた。

「いいや、どうして?」

「かみさまの顔笑ってなかったから・・・ちゅーしたら元気になる?パンツ見る?」

俺を何だと思っているのだろうか・・・
今元気になったら大変なんだが・・・

「ありがとう」と言ってシロの頭を撫でる。
シロが目を細めた。

しばらくして、シロががばっと起きて両掌で俺の頬をホールドした。

(ちゅー)

唇を重ねるキス。

「シロは、かみさまが好きってことを何とか伝えたいの」

真剣な顔だった。

「もう、十分伝わってるよ」

「ダメ!まだ足りないの!でも・・・どうしたら伝わるか分からないの・・・」

「俺もシロが大好きだよ。十分伝わってるよ」

本心だ。
ただ、シロの好きは保護者に対するもののような気もする。

「かみさま、もっと『ちゅー』よりも好きを伝えることってない?」

「『ちゅー』以上は恋人同士のすることだよ。ちゅーも本当はそうかもだけど」

まあ、子供の時は親は子供にちゅーくらいするだろうからセーフだ。
そうに違いない。

「『こいびと』・・・もっと上はないの?」

「恋人の上は夫婦かなぁ」

「『ふうふ』・・・もっと上は?」

「もっと上?そうだなぁ、『おじいちゃん・おばあちゃん』になっちゃうなぁ」

「シロも『おじいちゃん』になれる?」

「ふふふ、シロは女だから『おじいちゃん』にはなれないな。なるなら、『おばあちゃん』だな」

「あ、じゃあ、かみさまが『おじいちゃん』?」

「そうだな」

「まず、『こいびと』・・・」

シロは真剣な顔で何か考えているようだった。
真剣な顔がまたかわいいんだよなぁ。

美人は何をしていても絵になるから羨ましいなぁ。

「シロ、『こいびと』になりたい。かみさまも一緒に『こいびと』になって!」

言葉だけ聞いたら美少女に口説かれているようで興奮する。
でも、どこかニュアンスが違う様で違和感も感じる。

それでも、形だけでもシロと恋人になれるのならば嬉しいかもしれない。

「うん、じゃあ、俺とシロは恋人同士になろう」

「はいっ!『こいびとどうし』!」

定義上はシロと恋人同士になれたわけだ。
それが俺の一方的な自己満足だとしても、やっぱり嬉しいもんだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない

たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。 何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

夫は帰ってこないので、別の人を愛することにしました。

ララ
恋愛
帰らない夫、悲しむ娘。 私の思い描いた幸せはそこにはなかった。 だから私は……

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

処理中です...