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奴隷との新しい生活
027_奴隷と大家さん
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(ピンポーン)昼過ぎに呼び鈴が鳴った。
「あ!大家さんかも!」
シロが、嬉しそうに反応した。
今までのシロだったら、呼び鈴はトラウマを呼び起こす悪い存在だった。
家から全く出ず、人と関わらない生活をしていても、たまにはセールスや宅配便が来る。
その呼び鈴の音に、シロは度々怯えてきた。
こういったトラウマはちょっとやそっとでは抜けないと思っていた。
ところが、そのトラウマを嬉しい気持ちに書き換える存在が現れたのだ。
その方法とは、『パブロフの犬』だ。
『パブロフの犬』とは、犬にエサを与える前にベルを鳴らすようにしていると、仕舞いには、ベルを鳴らすだけで、エサが犬をたらすように・・・もとい、犬がよだれをたらすようになるという実験で、この実験を考えた科学者の名前からパブロフの犬と言われている。
そう、この呼び鈴が鳴るたびに、大家さんが来ていたのだ。
そして、この大家さんは、来るたびに『夕飯のお裾分け』と『お菓子』を持ってきてくれていた。
もう何度来てくれただろう。
『呼び鈴が鳴る』→『お菓子が食べたられる』
この繰り返しで、シロは完全に篭絡されていた。
そして、数回前の訪問から、大家さんはうちにあがって一緒にお茶を飲むところまで打ち解けていた。
「こんにちは~、シロちゃん!」
「大家さん」
「今日はこれ持ってきたよ!」
大家さんの手には、箱入りのちょっといいクッキーが持たれていた
「チョコチップ!シロ、チョコチップ好き」
「よかった、またちょっとだけ一緒にお茶飲まない?」
「うん、いいよ」
大家さんは良い人で、シロのやけどの跡を見ても何も聞かないでいてくれた。
銀髪もめちゃくちゃ目立つし、かわいさも絶対異次元だ。
ただ、訳ありなのは察してくれているようで、おかずをちょいちょい差し入れてくれていた。
お節介なくらいに親切、それが俺の大家さんの印象だ。
大家さんは俺というよりは、シロに興味があるみたいだ。
確かに、シロはかわいいので当然だろう。
うちのテーブルは2人用なので、1脚折り畳みの椅子を出して、3人でテーブルにつく。
俺がコーヒーを淹れて、シロがお菓子を食べる。
どんな役回りなのかよく分からないが、そういう感じに収まってきた。
シロと大家さんの話はいつも取り止めがなく、ほんとにただ話に来ているだけなのだと感じる。
(サクサクサクサクサクサクサク)
シロがクッキーを小動物のように食べる。
「シロちゃんは、本当にお菓子が好きねぇ」
「うん、お菓子好き」
「他にどんなものが好きなの?」
「かみさまのシチュー!」
「『神様のシチュー』!?なにそれ!すごそうね!」
「かみさまが作ってくれるシチューだよ。シロも作り方を教えてもらったの」
「あ、『かみさま』って俺のことです。神谷(かみや)だから、ニックネーム的な」
慌てて俺がフォローに入った。
「ああ、ニックネーム!びっくりした、神様って呼ばせてるのかと思っちゃった」
「そんな、そんな」
俺は単なる引きこもりだし・・・
「大家さんは、もう仕事に慣れましたか?」
「あはは、ありがとうございます、気にかけてくれて。大家って言っても祖母から引き継いだだけだし、管理人も兼ねてるからお掃除ばっかりで・・・」
「でも、アパートのオーナーとかすごいです。お金持ちなんですね」
「あ、いいえー、祖父が事業をやっていたのだけれど、もう他界して、その後は財産を食いつぶしているだけで・・・」
(もっもっもっもっ)
シロが、お茶請けの追加で出した豆大福を食べている。
真剣だ。
かわいい。
真顔で豆大福を食べる美少女。
なんかシュールだ。
銀髪少女と豆大福の取り合わせは過去に漫画やアニメでも見たことがない。
新しいジャンルが開かれた瞬間・・・かどうかは分からない。
「シロちゃんてほんとにかわいいですね!」
「ああ、確かに。それはそう思います!」
「あはははははは。否定しないんですね。素敵な彼氏さんです」
「カレシ?」
シロが反応した。
「シロちゃん、かっこよくて、優しい彼氏さんでいいわね」
「かみさまは、『カレシ』じゃなくて、かみさまだよ」
「神様かぁ、すごい表現ね。そんなに人を好きになれるって羨ましいなぁ」
「大家さんだったら、いい人がたくさんいそうですけどね」
「とととととんでもないです!私なんてっ!」
大家さんは真っ赤になっていた。
ピュアな人らしい。
シロが口の周りに豆大福の粉を付けたままで、俺に椅子ごと近づいた。
そして、服の背中の部分を摘まんだ。
多分、求肥(ぎゅうひ)・・・要するに大福の皮の部分が背中に付いたな。
後で洗濯だ。
それに気づいた大家さんがシロに言った。
「ふふふ、大丈夫ですよ、シロちゃん。素敵な神様を取りませんからね」
シロは無言で俺の背中に顔を付けた。
豆大福の粉も背中に付いたな・・・
「俺、最初2人で住んでいることを指摘されると思っていたんです・・・」
「ああ、それで!」
「どうかしましたか?」
「始めてお会いした時、すごく警戒されているなって・・・私なんかにどうしてって思っていたんです」
「契約書に一人で住むって書いてあった気がして・・・」
「確かに、杓子定規で言えばそうなりますね。でも、おばあちゃんが言っていたんですが、人は一人で住んでいても、出会って・・・結婚して・・・子供が出来たらワンルームでは狭くて旅立つって」
「寛大でありがたいです・・・こうなるとは思っていなかったから・・・」
「そうなんですね。出会いは突然ですからね・・・私には中々訪れてくれませんが・・・」
「ははは、そこはお力になれそうもありません・・・」
「かっこいいお友達がいたら紹介してくださいね!」
「俺、友達いないんで・・・」
「・・・残念です」
「かみさま」
「ああ、シロ、口の周りが粉だらけだ」
ティッシュではたいてやる。
「神様はほんとうにシロちゃんが好きなんですね」
「ははは」
「シロちゃんも神様を見る目が・・・もう好き好き光線が出てます。羨ましいなぁ・・・」
何も返せなかった。
だって、多分、俺の顔は真っ赤になっているのだから。
「あ!大家さんかも!」
シロが、嬉しそうに反応した。
今までのシロだったら、呼び鈴はトラウマを呼び起こす悪い存在だった。
家から全く出ず、人と関わらない生活をしていても、たまにはセールスや宅配便が来る。
その呼び鈴の音に、シロは度々怯えてきた。
こういったトラウマはちょっとやそっとでは抜けないと思っていた。
ところが、そのトラウマを嬉しい気持ちに書き換える存在が現れたのだ。
その方法とは、『パブロフの犬』だ。
『パブロフの犬』とは、犬にエサを与える前にベルを鳴らすようにしていると、仕舞いには、ベルを鳴らすだけで、エサが犬をたらすように・・・もとい、犬がよだれをたらすようになるという実験で、この実験を考えた科学者の名前からパブロフの犬と言われている。
そう、この呼び鈴が鳴るたびに、大家さんが来ていたのだ。
そして、この大家さんは、来るたびに『夕飯のお裾分け』と『お菓子』を持ってきてくれていた。
もう何度来てくれただろう。
『呼び鈴が鳴る』→『お菓子が食べたられる』
この繰り返しで、シロは完全に篭絡されていた。
そして、数回前の訪問から、大家さんはうちにあがって一緒にお茶を飲むところまで打ち解けていた。
「こんにちは~、シロちゃん!」
「大家さん」
「今日はこれ持ってきたよ!」
大家さんの手には、箱入りのちょっといいクッキーが持たれていた
「チョコチップ!シロ、チョコチップ好き」
「よかった、またちょっとだけ一緒にお茶飲まない?」
「うん、いいよ」
大家さんは良い人で、シロのやけどの跡を見ても何も聞かないでいてくれた。
銀髪もめちゃくちゃ目立つし、かわいさも絶対異次元だ。
ただ、訳ありなのは察してくれているようで、おかずをちょいちょい差し入れてくれていた。
お節介なくらいに親切、それが俺の大家さんの印象だ。
大家さんは俺というよりは、シロに興味があるみたいだ。
確かに、シロはかわいいので当然だろう。
うちのテーブルは2人用なので、1脚折り畳みの椅子を出して、3人でテーブルにつく。
俺がコーヒーを淹れて、シロがお菓子を食べる。
どんな役回りなのかよく分からないが、そういう感じに収まってきた。
シロと大家さんの話はいつも取り止めがなく、ほんとにただ話に来ているだけなのだと感じる。
(サクサクサクサクサクサクサク)
シロがクッキーを小動物のように食べる。
「シロちゃんは、本当にお菓子が好きねぇ」
「うん、お菓子好き」
「他にどんなものが好きなの?」
「かみさまのシチュー!」
「『神様のシチュー』!?なにそれ!すごそうね!」
「かみさまが作ってくれるシチューだよ。シロも作り方を教えてもらったの」
「あ、『かみさま』って俺のことです。神谷(かみや)だから、ニックネーム的な」
慌てて俺がフォローに入った。
「ああ、ニックネーム!びっくりした、神様って呼ばせてるのかと思っちゃった」
「そんな、そんな」
俺は単なる引きこもりだし・・・
「大家さんは、もう仕事に慣れましたか?」
「あはは、ありがとうございます、気にかけてくれて。大家って言っても祖母から引き継いだだけだし、管理人も兼ねてるからお掃除ばっかりで・・・」
「でも、アパートのオーナーとかすごいです。お金持ちなんですね」
「あ、いいえー、祖父が事業をやっていたのだけれど、もう他界して、その後は財産を食いつぶしているだけで・・・」
(もっもっもっもっ)
シロが、お茶請けの追加で出した豆大福を食べている。
真剣だ。
かわいい。
真顔で豆大福を食べる美少女。
なんかシュールだ。
銀髪少女と豆大福の取り合わせは過去に漫画やアニメでも見たことがない。
新しいジャンルが開かれた瞬間・・・かどうかは分からない。
「シロちゃんてほんとにかわいいですね!」
「ああ、確かに。それはそう思います!」
「あはははははは。否定しないんですね。素敵な彼氏さんです」
「カレシ?」
シロが反応した。
「シロちゃん、かっこよくて、優しい彼氏さんでいいわね」
「かみさまは、『カレシ』じゃなくて、かみさまだよ」
「神様かぁ、すごい表現ね。そんなに人を好きになれるって羨ましいなぁ」
「大家さんだったら、いい人がたくさんいそうですけどね」
「とととととんでもないです!私なんてっ!」
大家さんは真っ赤になっていた。
ピュアな人らしい。
シロが口の周りに豆大福の粉を付けたままで、俺に椅子ごと近づいた。
そして、服の背中の部分を摘まんだ。
多分、求肥(ぎゅうひ)・・・要するに大福の皮の部分が背中に付いたな。
後で洗濯だ。
それに気づいた大家さんがシロに言った。
「ふふふ、大丈夫ですよ、シロちゃん。素敵な神様を取りませんからね」
シロは無言で俺の背中に顔を付けた。
豆大福の粉も背中に付いたな・・・
「俺、最初2人で住んでいることを指摘されると思っていたんです・・・」
「ああ、それで!」
「どうかしましたか?」
「始めてお会いした時、すごく警戒されているなって・・・私なんかにどうしてって思っていたんです」
「契約書に一人で住むって書いてあった気がして・・・」
「確かに、杓子定規で言えばそうなりますね。でも、おばあちゃんが言っていたんですが、人は一人で住んでいても、出会って・・・結婚して・・・子供が出来たらワンルームでは狭くて旅立つって」
「寛大でありがたいです・・・こうなるとは思っていなかったから・・・」
「そうなんですね。出会いは突然ですからね・・・私には中々訪れてくれませんが・・・」
「ははは、そこはお力になれそうもありません・・・」
「かっこいいお友達がいたら紹介してくださいね!」
「俺、友達いないんで・・・」
「・・・残念です」
「かみさま」
「ああ、シロ、口の周りが粉だらけだ」
ティッシュではたいてやる。
「神様はほんとうにシロちゃんが好きなんですね」
「ははは」
「シロちゃんも神様を見る目が・・・もう好き好き光線が出てます。羨ましいなぁ・・・」
何も返せなかった。
だって、多分、俺の顔は真っ赤になっているのだから。
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