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第二章 俺の外れスキルは『ものマネ』 ~ジェミニ王国のディオの場合
第19話 大嘘
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~プロプスダンジョン二十一階層 レダ視点side
「おい、結構離れたしここら辺でいいだろ? これ以上進むと壁が邪魔になる」
私の声を聴いて先頭を歩いていたジャヴェロットが振り向き槍を構える。
私も刀を構えた――なるほど強いな。
……
二人は互いに地面を蹴り、一気に間合いを詰める。当然ジャヴェロットの武器の方がリーチは長いが『はやぶさ斬り』で槍の穂を攻撃し上方にいなし、更にそこからジャヴェロットの体を連続で斬りつけた。しかしジャヴェロットはいなされた勢いを利用し槍を反転させ槍の尻、石突だけで私の二撃目を受け止め、そして三撃目は私と身体を入れ替えるようにヒラリと躱した。
―――――――――――――
『はやぶさ斬り』:高速で3連続攻撃をする。
―――――――――――――
何だ、この男の動きは? 何かのスキル技を使っているわけではなく、まさか戦闘センスだけで私のスキル技に対抗しているのか?
「次は俺っちの番だぜ」
そう言いジャヴェロットは無造作に槍を突き出した。一瞬反応が遅れたが『円月斬り』を使って受け流そうとした。刹那、槍の穂がバリバリと音を立てて光り、私の刀に雷撃が走った。バックステップで私はジャヴェロットと距離を取った。
「へー、すごいぜ 普通の剣なら今の攻撃で刃が腐食して崩れ落ちるんだぜ、もしかしてそっちも名の有る刀だったりするのか?」
まただ、また技名を叫んでいないのに技を繰り出した。どういう事だ? 『無詠唱魔法』とかそういう類のスキルなのか? それとも槍の能力なのか?
「何だよ、無視はつれないぜ、もっと会話を楽しもうぜ――」
――返事をしない私に向けて高速で槍を投げつけてきた。
私は間一髪でそれを避けた。投げた槍はそのまま飛んで行きダンジョンの壁に深く突き刺さった。
馬鹿な!? 破壊不可能なはずのダンジョンの壁が突き刺さった槍を中心に深く抉られている――い、いやそれよりも今が好機だ。奴は武器を持っていない!
地面を蹴り一気に間合いを詰めジャヴェロットを刀の間合いに入れる。
「『兜割り』」
―――――――――――――
『兜割り』:破壊力を大幅に上げた一振りで攻撃する。
―――――――――――――
ジャヴェロットに向かって飛び込み渾身の一撃を脳天に振り下ろす。が、なにか嫌な予感がし、このままただ思い切り振り下ろせば終わるはずの『兜割り』を途中で『キャンセル』した。
カキンッ
え? 力の乘っていない私の刀の一撃をジャヴェロットは槍で受け止めた。そしてすかさず槍を物凄い勢いで突いてきた。しかし技を途中で『キャンセル』したおかげで次の行動に移れ、辛うじて躱すことができ、私は一旦距離を取った。
痛っ、ほほから血が流れている。躱しきれなかったか。
さっきまで槍が突き刺さっていた壁をチラリと見た。――槍が無い……。
困惑している私にジャヴェロットが口を開く。
「引っかからなかったかぁ、よく避けたな、凄いぜ。今までの奴らは槍を手放すとすぐ馬鹿みたいに突っ込んで来てくれて、それで終了だったんだけどなぁ」
「これも魔槍の能力か?」
「これも?――ああそういう事か。今までの奴らはあれこれと考える暇もなく死んでいった様だからそんな質問されたのは初めてだぜ」
「と言う事は私の質問に答えてくれるのかな?」
「ははは、いいぜ、俺っちの相棒『魔槍・グングニル』は所有者が望めばどんなに離れていても所有者の手元に戻ってくるんだぜ、ダンジョンの壁を破壊できたのも相棒の能力だぜ。ただお嬢さんが一番聞きたいであろう、技名を叫ばなくても技を繰り出せるのは相棒の能力ではないぜ」
「なんだと!?」
「おっ? 驚いているぜ、魔法の詠唱ならともかく、格ゲーや漫画じゃないんだぜ、いちいち叫ばなくても技は出せるぜ、逆にいちいち技名を叫んでいたら相手にばれてしまうぜ、そんなの馬鹿だぜ」
「格ゲーや漫画?……なんだそれは?」
「ああ、気にするな、お嬢さんには関係のない話だぜ、他に質問が無いなら暗くなってきたしもう終わらせるぜ」
やはりこのエリアは時間の概念があるようだ。ただ地上よりは時間の進み具合が早いのだろう。先ほどよりかなり暗くなっている。
ジャヴェロットが槍を連続で繰り出してきが、『はやぶさ斬り』で槍をいなすと、ジャヴェロットは体制を崩し隙が出来た。すかさず二撃目、三撃目をジャヴェロットに繰り出す。槍の石突で受け止めたがそのままジャヴェロットごと吹っ飛ばす。
私は更にジャヴェロットを追い「『兜割り』」を叩きこむ。ジャヴェロットは躱しきれず肩口を斬られ血を流す。刹那、私に向けて槍を投げてきたので距離を取る。
「おいおい、どういう事だ!? さっきと動きも威力も違うぜ、なんかのスキルか? あっ!? しかもさっき付けたほほの傷が治っているぜ」
「……」
「だんまりかよ、俺っちは色々教えてやったのにずるいぜ――あれ!? いつの間にかその刀全体に黒い靄が纏っているんだぜ――この感じまさか……」
「……『妖刀』だ、この刀は私の相棒『妖刀・昼行燈』――能力は周りが闇に染まれば染まるほど所有者の能力を上げる。そしてもう一つ、血を吸う事で所有者を回復させることができる」
「『妖刀』だと! やっぱりか、その刀はどこで手に――いや誰だ? 誰から貰った?」
「なんだ気になるのか? この刀は師匠から貰った。師匠の名は『村正』だ」
「師匠!? 村正? 村正だと、はははっ、そうか、そうかお嬢さんの師匠は村正か、なるほど、なるほど」
「もしかして貴様、師匠を知っているのか?」
「いーや知らないぜ、そんな女」
いつの間にか手元に戻っていた槍を持ちこちらに向かってきた。突き出して来た槍を『円月斬り』で受け流そうとしたが手元に槍を引き、刀を透かされた。
体制を崩した私は腹に槍の石突を叩きこまれ、今度は私が吹っ飛ばされた。ゴロゴロと転がり、そこから即座に立ち上がり刀を引き、足を踏ん張りジャヴェロットの胸に向け構える。そして一呼吸置いた後――。
「『刺突放鷹』はぁぁぁぁぁ!」
刀を素早く前に突き出しジャヴェロットに向けヒュンと音を飛ばす。ジャヴェロットの心臓を音が貫く。ジャヴェロットは一瞬ニヤリと笑みを浮かべが、右の口角から赤いものがドロリと流れるのが見えた。そして両膝が静かに地面に付き――倒れた。
―――――――――――――
『刺突放鷹』:切っ先から力を込めた突きを音速で放つ。
―――――――――――――
ふぅ、なんとか勝てたか……私の方もこれ以上は体力が持たなかった、やはりお弁当は肉にするべきだったか。私はゆっくりとジャヴェロットに近づいた。まだ息はあるようだ。警戒はしているが流石に心臓を貫いたんだ。もう無理だろう。
私が近づいて来た事に気づき、ゆっくりと顔を私の方に向けて呟いた。
「お嬢さん強いな、俺っちこうみえても毎朝特訓をしていたんだぜ、それなのに負けたぜ」
「そうか意外と努力家なんだな、でも私は朝も晩も毎日特訓しているけどな」
「はは、そうか……俺っちも次に生まれ変われたら……そう……する……ぜ……」
そしてジャヴェロットはそのまま動かなくなった。
「ふぅ 終わったか……、本来なら戦利品としてその武器、しかも『神話級の魔槍』なので絶対に貰って帰りたいところだが貴様の『相棒』だしな、その気持ちは私にも分かる――だから今回は置いていく」
そして私は少年の元に急いだのだった――。
――それから数分後、先程まで死体だった物がもぞもぞと動き出す。
それはゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡し誰もいないことを確認すると、服を脱ぎだした、そして脱皮でもするかのように皮も脱ぎだした。
すると、その中からもう一人のジャヴェロットが裸で出てきた。
「いてててて、あーあ、肩の部分が斬られてしまっているな」
それは腰の小さな袋からポーションを取り出し傷口に掛ける。
「特殊な糸で編んだ『リアルアバター用肉襦袢君3号』が斬られてしまうとは、流石妖刀だな」
それは斬られた箇所を手でこすっている。
「これは後で直してもらわないとダメだな、それにしても着てきたのが『リアルアバター用肉襦袢君3号』でよかったよな、ちゃんと相手が思うような死に方を見せられたようだし、それ以前の肉襦袢君は死んだふり機能は付いていないからな。ただこの『一人称を変える』とか『語尾を変える』とかのおまけ機能は要らないな、試しに『俺っち』とか『だぜ』とかにしてみたけど話す度に笑いそうになったわ、はは」
それは『リアルアバター用肉襦袢君3号』を丁寧に折りたたんで小さな袋にしまう。この袋は『魔法の袋』で見た目よりたくさん物が入る、いわゆる『マジックバック』と言うものだ。
「しかし今考えると恥ずかしいよな、サービスで最後に思わず熱血格闘マンガみないセリフを言ってしまった。あー、あとはあれだな『刺突放鷹』って技だっけ? あの技だけは村正が使うとこを見たことがあるから知っていたけど、全然威力が違ったな。村正が使った『刺突放鷹』は前方にある物全て綺麗に吹き飛ばしていたのにな。なんだよ、心臓を貫くだけって、笑いを堪えるのが大変だったわ」
それは『マジックバック』から着替えを取り出した。
「そもそもあの村正が弟子を取り、しかも妖刀を渡すとはな。俺にはあのお嬢ちゃんがそこまでの強者とは思えないんだが……まあ聞いた事のない名前の妖刀だったし、なんか企んでいるんだろうなぁ。今回は同じ刀匠が打った武器を使っているって事で、ある意味、義兄妹とも言えなくもないから見逃してやったけど、これで貸し借り無しでいいよな」
着替え終わったそれは、少し明るくなってきた空を見上げる。
「はぁ、ここの『虹色に光るクリスタル』は欲しかったんだけどなぁ、出来たばかりのダンジョンなら抜いてもそこまで大事にならないから。まあ、仕方がないか。他のダンジョンを探すか」
それは、そう独り言を言うとどこかに消えて行った――。
「おい、結構離れたしここら辺でいいだろ? これ以上進むと壁が邪魔になる」
私の声を聴いて先頭を歩いていたジャヴェロットが振り向き槍を構える。
私も刀を構えた――なるほど強いな。
……
二人は互いに地面を蹴り、一気に間合いを詰める。当然ジャヴェロットの武器の方がリーチは長いが『はやぶさ斬り』で槍の穂を攻撃し上方にいなし、更にそこからジャヴェロットの体を連続で斬りつけた。しかしジャヴェロットはいなされた勢いを利用し槍を反転させ槍の尻、石突だけで私の二撃目を受け止め、そして三撃目は私と身体を入れ替えるようにヒラリと躱した。
―――――――――――――
『はやぶさ斬り』:高速で3連続攻撃をする。
―――――――――――――
何だ、この男の動きは? 何かのスキル技を使っているわけではなく、まさか戦闘センスだけで私のスキル技に対抗しているのか?
「次は俺っちの番だぜ」
そう言いジャヴェロットは無造作に槍を突き出した。一瞬反応が遅れたが『円月斬り』を使って受け流そうとした。刹那、槍の穂がバリバリと音を立てて光り、私の刀に雷撃が走った。バックステップで私はジャヴェロットと距離を取った。
「へー、すごいぜ 普通の剣なら今の攻撃で刃が腐食して崩れ落ちるんだぜ、もしかしてそっちも名の有る刀だったりするのか?」
まただ、また技名を叫んでいないのに技を繰り出した。どういう事だ? 『無詠唱魔法』とかそういう類のスキルなのか? それとも槍の能力なのか?
「何だよ、無視はつれないぜ、もっと会話を楽しもうぜ――」
――返事をしない私に向けて高速で槍を投げつけてきた。
私は間一髪でそれを避けた。投げた槍はそのまま飛んで行きダンジョンの壁に深く突き刺さった。
馬鹿な!? 破壊不可能なはずのダンジョンの壁が突き刺さった槍を中心に深く抉られている――い、いやそれよりも今が好機だ。奴は武器を持っていない!
地面を蹴り一気に間合いを詰めジャヴェロットを刀の間合いに入れる。
「『兜割り』」
―――――――――――――
『兜割り』:破壊力を大幅に上げた一振りで攻撃する。
―――――――――――――
ジャヴェロットに向かって飛び込み渾身の一撃を脳天に振り下ろす。が、なにか嫌な予感がし、このままただ思い切り振り下ろせば終わるはずの『兜割り』を途中で『キャンセル』した。
カキンッ
え? 力の乘っていない私の刀の一撃をジャヴェロットは槍で受け止めた。そしてすかさず槍を物凄い勢いで突いてきた。しかし技を途中で『キャンセル』したおかげで次の行動に移れ、辛うじて躱すことができ、私は一旦距離を取った。
痛っ、ほほから血が流れている。躱しきれなかったか。
さっきまで槍が突き刺さっていた壁をチラリと見た。――槍が無い……。
困惑している私にジャヴェロットが口を開く。
「引っかからなかったかぁ、よく避けたな、凄いぜ。今までの奴らは槍を手放すとすぐ馬鹿みたいに突っ込んで来てくれて、それで終了だったんだけどなぁ」
「これも魔槍の能力か?」
「これも?――ああそういう事か。今までの奴らはあれこれと考える暇もなく死んでいった様だからそんな質問されたのは初めてだぜ」
「と言う事は私の質問に答えてくれるのかな?」
「ははは、いいぜ、俺っちの相棒『魔槍・グングニル』は所有者が望めばどんなに離れていても所有者の手元に戻ってくるんだぜ、ダンジョンの壁を破壊できたのも相棒の能力だぜ。ただお嬢さんが一番聞きたいであろう、技名を叫ばなくても技を繰り出せるのは相棒の能力ではないぜ」
「なんだと!?」
「おっ? 驚いているぜ、魔法の詠唱ならともかく、格ゲーや漫画じゃないんだぜ、いちいち叫ばなくても技は出せるぜ、逆にいちいち技名を叫んでいたら相手にばれてしまうぜ、そんなの馬鹿だぜ」
「格ゲーや漫画?……なんだそれは?」
「ああ、気にするな、お嬢さんには関係のない話だぜ、他に質問が無いなら暗くなってきたしもう終わらせるぜ」
やはりこのエリアは時間の概念があるようだ。ただ地上よりは時間の進み具合が早いのだろう。先ほどよりかなり暗くなっている。
ジャヴェロットが槍を連続で繰り出してきが、『はやぶさ斬り』で槍をいなすと、ジャヴェロットは体制を崩し隙が出来た。すかさず二撃目、三撃目をジャヴェロットに繰り出す。槍の石突で受け止めたがそのままジャヴェロットごと吹っ飛ばす。
私は更にジャヴェロットを追い「『兜割り』」を叩きこむ。ジャヴェロットは躱しきれず肩口を斬られ血を流す。刹那、私に向けて槍を投げてきたので距離を取る。
「おいおい、どういう事だ!? さっきと動きも威力も違うぜ、なんかのスキルか? あっ!? しかもさっき付けたほほの傷が治っているぜ」
「……」
「だんまりかよ、俺っちは色々教えてやったのにずるいぜ――あれ!? いつの間にかその刀全体に黒い靄が纏っているんだぜ――この感じまさか……」
「……『妖刀』だ、この刀は私の相棒『妖刀・昼行燈』――能力は周りが闇に染まれば染まるほど所有者の能力を上げる。そしてもう一つ、血を吸う事で所有者を回復させることができる」
「『妖刀』だと! やっぱりか、その刀はどこで手に――いや誰だ? 誰から貰った?」
「なんだ気になるのか? この刀は師匠から貰った。師匠の名は『村正』だ」
「師匠!? 村正? 村正だと、はははっ、そうか、そうかお嬢さんの師匠は村正か、なるほど、なるほど」
「もしかして貴様、師匠を知っているのか?」
「いーや知らないぜ、そんな女」
いつの間にか手元に戻っていた槍を持ちこちらに向かってきた。突き出して来た槍を『円月斬り』で受け流そうとしたが手元に槍を引き、刀を透かされた。
体制を崩した私は腹に槍の石突を叩きこまれ、今度は私が吹っ飛ばされた。ゴロゴロと転がり、そこから即座に立ち上がり刀を引き、足を踏ん張りジャヴェロットの胸に向け構える。そして一呼吸置いた後――。
「『刺突放鷹』はぁぁぁぁぁ!」
刀を素早く前に突き出しジャヴェロットに向けヒュンと音を飛ばす。ジャヴェロットの心臓を音が貫く。ジャヴェロットは一瞬ニヤリと笑みを浮かべが、右の口角から赤いものがドロリと流れるのが見えた。そして両膝が静かに地面に付き――倒れた。
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『刺突放鷹』:切っ先から力を込めた突きを音速で放つ。
―――――――――――――
ふぅ、なんとか勝てたか……私の方もこれ以上は体力が持たなかった、やはりお弁当は肉にするべきだったか。私はゆっくりとジャヴェロットに近づいた。まだ息はあるようだ。警戒はしているが流石に心臓を貫いたんだ。もう無理だろう。
私が近づいて来た事に気づき、ゆっくりと顔を私の方に向けて呟いた。
「お嬢さん強いな、俺っちこうみえても毎朝特訓をしていたんだぜ、それなのに負けたぜ」
「そうか意外と努力家なんだな、でも私は朝も晩も毎日特訓しているけどな」
「はは、そうか……俺っちも次に生まれ変われたら……そう……する……ぜ……」
そしてジャヴェロットはそのまま動かなくなった。
「ふぅ 終わったか……、本来なら戦利品としてその武器、しかも『神話級の魔槍』なので絶対に貰って帰りたいところだが貴様の『相棒』だしな、その気持ちは私にも分かる――だから今回は置いていく」
そして私は少年の元に急いだのだった――。
――それから数分後、先程まで死体だった物がもぞもぞと動き出す。
それはゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡し誰もいないことを確認すると、服を脱ぎだした、そして脱皮でもするかのように皮も脱ぎだした。
すると、その中からもう一人のジャヴェロットが裸で出てきた。
「いてててて、あーあ、肩の部分が斬られてしまっているな」
それは腰の小さな袋からポーションを取り出し傷口に掛ける。
「特殊な糸で編んだ『リアルアバター用肉襦袢君3号』が斬られてしまうとは、流石妖刀だな」
それは斬られた箇所を手でこすっている。
「これは後で直してもらわないとダメだな、それにしても着てきたのが『リアルアバター用肉襦袢君3号』でよかったよな、ちゃんと相手が思うような死に方を見せられたようだし、それ以前の肉襦袢君は死んだふり機能は付いていないからな。ただこの『一人称を変える』とか『語尾を変える』とかのおまけ機能は要らないな、試しに『俺っち』とか『だぜ』とかにしてみたけど話す度に笑いそうになったわ、はは」
それは『リアルアバター用肉襦袢君3号』を丁寧に折りたたんで小さな袋にしまう。この袋は『魔法の袋』で見た目よりたくさん物が入る、いわゆる『マジックバック』と言うものだ。
「しかし今考えると恥ずかしいよな、サービスで最後に思わず熱血格闘マンガみないセリフを言ってしまった。あー、あとはあれだな『刺突放鷹』って技だっけ? あの技だけは村正が使うとこを見たことがあるから知っていたけど、全然威力が違ったな。村正が使った『刺突放鷹』は前方にある物全て綺麗に吹き飛ばしていたのにな。なんだよ、心臓を貫くだけって、笑いを堪えるのが大変だったわ」
それは『マジックバック』から着替えを取り出した。
「そもそもあの村正が弟子を取り、しかも妖刀を渡すとはな。俺にはあのお嬢ちゃんがそこまでの強者とは思えないんだが……まあ聞いた事のない名前の妖刀だったし、なんか企んでいるんだろうなぁ。今回は同じ刀匠が打った武器を使っているって事で、ある意味、義兄妹とも言えなくもないから見逃してやったけど、これで貸し借り無しでいいよな」
着替え終わったそれは、少し明るくなってきた空を見上げる。
「はぁ、ここの『虹色に光るクリスタル』は欲しかったんだけどなぁ、出来たばかりのダンジョンなら抜いてもそこまで大事にならないから。まあ、仕方がないか。他のダンジョンを探すか」
それは、そう独り言を言うとどこかに消えて行った――。
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