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第二章 俺の外れスキルは『ものマネ』 ~ジェミニ王国のディオの場合

第02話 自立

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 俺は自分のステータスを確認し溜息をつく。

「はぁぁ……」

 やっぱり何度確認しても『ものマネ士』、『ものマネ』そして『声マネ』か。
 でもスキルにレベルがあるって事は成長するって事だよな。もしかしたらすごい他の技も覚える可能性もある。

 それに俺は剣術のジョブやスキルが無くてもゴブリン程度なら余裕で倒せる自信はある――戦った事は無いけど。まあ何とかなるか。色々あって疲れたし、とりあえず今日はもう宿屋に行って休むか。

▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 次の日の朝。俺は宿屋を出て冒険者ギルドへと向かった。
 重い扉を開け中に入ると――うーんなんだろう、いっぱい視線を感じる……。

 どうやら俺の事はすでに噂になっていたらしい。
 それはそうか、今回の『祝福の儀』には現領主の息子二人も参加していたから結構人が集まっていたしなぁ……はぁ。

「おいおいアイツ見ろよ、役立たずの期待の次期領主様じゃねぇか?」

「違うぞ、次期領主様だろ! わっはっは」

「ば、馬鹿! お前等、領主様のご子息にそんな事言ったら処罰されるぞ」

「心配するな大丈夫だって、どうやら屋敷を追い出されたらしいからな」

「それは違うぞ、正確には勘当されたらしい。屋敷で働いて居るメイドの知り合いから聞いたから確かだぞ! わっはっは」

――勘当された事まで知れ渡っているのか……。

「俺も教会で見ていたけどあいつ『ものマネ』と言うレアスキル授かったんだぜ」

「確かに今まで聞いたことのないスキル名だからレアって言えばレアだが、名前からしてどう考えても外れスキル・・・・・だろ! がっはっは」

「はっはっはっ、逃げたお前の女房のマネでもしてもらえよ」

「うるせぇ、まあ、近くに魔物が多いこの辺境の街イーダースで領主になるには剣術系か攻撃魔法系のスキル持ちじゃないと誰もついて来ないからな、困ったワン」

「なに犬のマネしているんだよ、お前のスキルも『ものマネ』か、わっはっは」

 随分楽しそうだが、俺はその声を無視してギルドの受付けへと向かった。

「いらっしゃいませ。本日はどのような御用でしょうか?」

「えーと、冒険者登録したいのですが」

「かしこまりました。ではこちらの水晶に手をかざし魔力を流し込んでください」

 おお、これが『ステータス』を確認できるという水晶か、初めて見た。
 そして俺が水晶に魔力を流し込むと水晶の中に俺の情報が表示された。
 
―――――――――――――
ディオ (男、15歳)
種族:人間族
冒険者ランク:未登録

ジョブ:ものマネ士
スキル:ものマネ
―――――――――――――

「ありがとうございました、ディオさんですね」

「え? あっはい」

 へぇー、『ステータス』魔法と違ってスキルレベルやスキル技は表示されないみたいだな。ん? あれ? 俺の家名のポルックスが外されて、ただのディオになっている。やる事が早いな……、まあどっちにしろ、外して貰うつもりだったから構わないけど。
 ちなみに後から『ステータス』魔法で確認したがそっちの方でもポルックスが外れていた。仕組みが分からないけど認識の問題なんだろうか。

「剣の修行はしていたとの事ですが、ジョブが『ものマネ士』ですか……。今までの冒険者登録開始ランクリストに『ものマネ士』というジョブの記載がないので、規制通り最低ランクの『F』からのスタートになりますがよろしいですか?」

「あ、はい。構いません」

「もしご不満であるなら、今回のような場合はギルドマスターに判断を乞うことができますが?」

「判断ですか? いえこのま――」

「その必要は無いぞ、その坊主は最低ランクの『F』でいいぞ」

 声のした方を見ると、上半身裸のガタイの良い強面の一人の大男が二階から降りてきた。

「ギルマス!? 聴いていらしたのですか?」

「ああ、おい坊主! お前領主の息子だろ、いや元か。朝一番で領主の使いの者が来てな、はした金と一緒にポルックス家の家紋で封蝋した手紙を置いて行ったぞ」

――くっ、まずいな何か先手を打たれたか?

「おいおい勘違いするな、これでも俺はこの街のギルドマスターだぞ、領主の指示に何でもかんでもホイホイ従う義理はねぇ――が【勘当したから家名を外せ】と書かれていたら、すまんがそこに関しては指示に従うしかなかった」

「それは仕方がないです」

「たださっきもそこの受付のねーちゃんが言ったように冒険者ランクに関しては今までのリストに前例がないから最低のFランクにするしかないんだよ」

(ねーちゃんって……、この子がギルマスの真似して私の事ねーちゃんって呼び出したらどうするのよ、もう)
 受付のおねーさんからそんな心の声がボソリと聞こえた。

「前例が無くても剣術系や攻撃魔法系のスキルだったらランクに考慮はするんだがなぁ……ジョブが『ものマネ士』でそのスキルも『ものマネ』ってだけなら……流石にちょっとなぁ」

「いえ、別にFランクで構いません」

「悪いな、じゃあ俺は用があるから、冒険者の詳しい話は受付のねーちゃんに聞いてくれ、あとお前等! あんまり新人を虐めるなよ! 分かったか! じゃあな」

「「は、はい!」」

 さっきまで俺を馬鹿にしていたおっさん達が縮こまっている、見た目とは裏腹に中々優しいギルマスのようだ。
 ギルマスはギルドのドアを開け『うっ、久しぶりの日光だ』と言い出て行った。

「ごほんっ! では説明させていただきますね」
 
 お姉さんから聴いた内容を簡単に要約すると。 
 
 一つ、冒険者ランクには下からF,E,D,C、B、A、Sと七つのランクがある。
 
 一つ、依頼は自分のランクと同等かその一つ下のランクの依頼を受けることができる。

 一つ、数回依頼をこなし成功すればランクが上がる。逆に数回失敗するか、一定の期間依頼を受けなければランクが下がる。Fまで下がるとその下は存在しない為冒険者登録破棄となり、再度登録し直さなければならない。

 一つ、受けた依頼を失敗した場合はその内容によりペナルティ・・・・・がある。一定期間の謹慎、罰金、冒険者登録剥奪、奴隷落ち、最悪死罪など。

 一つ、冒険者カードは身分証にもなり、無くした場合は再発行に時間と料金が掛かる。

 他にも色々細かい規約はあるが大体こんな感じになる。ただ国によっては微妙に違うらしい。

 ちなみに冒険者ランクなどに使われるこの『F』や『E』、『S』などの文字は昔このギルドという仕組みを作った『勇者』と言う『覚醒職』のジョブを持った人が考えた文字だと言う。当初はそれぞれの文字に意味があったらしいが、年数が経つにつれて忘れられてしまった。そんな話を先生から聴いた事がある。

 それで俺のランクでも受けられる依頼は、今ある中では随時依頼している『薬草採取』と『スライム討伐』くらいしか無いとの事で、薬草には詳しくない俺は『スライム討伐』を受けた。

―――――――――――――――――――― 
・依頼難易度:F
・依頼内容:イーダースの北の森のスライムの討伐
・討伐証明部位:スライムの核
・報酬:スライム1体に付き銅貨1枚
・買い取り素材:無し
・期限:随時
――――――――――――――――――――
 
 うーん銅貨一枚か……大体この街なら小銀貨五枚、銅貨にして五十枚で普通の宿屋(二食付き)に一泊できるから最低でも五十匹は倒したいな。
 ちなみにイーダースの北の森は周囲にある他の森とくらべると距離的に一番近いが魔物の数、種類、強さが桁違いで通称『魔物の森・・・・』と呼ばれている。

「一つ質問なのですが、これは魔物の森のスライムでなければダメなのですか?」

「そんな事はないですが、わざわざ遠くまで行ってスライムを倒してくるメリットはありませんよ?」

「そうですよね、いえ、ただの確認です。では行ってきますね」

「あっ待ってください! この時期ディオさんと同じ新人冒険者・・・・・が多くて早く行かないと森の入り口付近のスライムは、すぐ討伐されてしまうのですが、かと言ってあまり森の奥まで行ってしまうと危険なので気を付けて下さいね」

「はい、分かりました、ありがとうございます」

 俺は貰った冒険者カードを仕舞い、冒険者ギルドを後にした。
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