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発露
6.
しおりを挟む「…っ、あなたの助けなどいらない!」
気付いた時には、範子は天井を見上げていた。
上向いた範子の上に敦宣が覆い被さっていた。長いぬばたまの黒髪が帳のようにはらはらと落ちてくる。
ようやっと彼に押し倒されたと気付いた。
「あつ、の…」
呼掛けようとしたが、声が出ない。今度は動かせた手足はしかし、敦宣に力を籠めて押さえ付けられ身動きを封じられた。
「助けなんていりません! なぜ放っておいてくれないのですか! あなたに出会ってからずっとずっと惨めでした。どんなに髪を伸ばそうとも、どんなに絢爛な衣で着飾ろうとも、わたくしはずっとなりそこないのまま。なのに似た者同士のはずのあなたは堂々と胸を張っていてとても眩しい。“逆転者”としても才覚をあらわして、きっとわたくしなど直ぐに追い抜いていく。もう全て持っているくせ、そのうえわたくしから“逆転者”のお鉢も奪うのですか。…ええ、そうです。ずっとあなたが妬ましかった! わたくしとあなたとでは何が違うのかと苦しかった! もう放っておいて! 姉様も、わたくしのことも…!」
範子を床に押さえ付けた敦宣が叫ぶ。
「あなたを友人と思ったことなど一度だってない。本当はあなたなんて大嫌いでした…!」
一際大きな敦宣の声が部屋に響いてやがて消えた。
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