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発露
2.
しおりを挟む「何故、というお顔ですね。言いましたでしょう? わたくしが持ち得ないものを全て持つあなたにはわからないと。けれど、わたくしがあなたを疎ましいと思っていたことには薄々感付いていたのではないのですか?」
言いつつ「ああ…」と合点がいったように声をあげる。
「もしや、お声が出ませんか? ふふ、少しやり過ぎてしまったようです。でなければあなたを抑えられないと思いまして…。でも、このままでは満足に話せませんね。――――なれば範子さま、どうぞ、楽になさってわたくしとお話ししましょうか」
途端、勝手に範子の身体が動く。糸で操られる人形のように見えない力が彼女の身体を動かす。ゆっくりと両の手をついて上体を起こし、板間に腰を落ち着ける。
彼女の意思を離れ座した身体に、敦宣の白い手が伸びてきた。乱れた衣を調え、最後に空で喉を撫でるような動きをみせる。
すると、圧迫されていた喉のつかえが嘘のようになくなった。
どうやら今の範子は彼の言いなりになってしまうようだ。
心の臓の疾走がなかなかおさまらない。制御を離れた身体に頭が混乱し、全身が緊張しているのだ。
ひとつ、ふたつ、と大きく息をついてから、範子は先程の敦宣の問い掛けに答えた。
「…気付いていたよ。君が悩んでいて、その原因に私があると」
「気付いていたのなら、わたくしから離れてくださればよかったのに。馬鹿なひと」
「君が訳もなくこんなことをするはずがないから」
間髪入れず返った範子の言葉に、敦宣は嘲るように小さく喉の奥で笑った。
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