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しおりを挟む「え…、は!?」
混乱ここに極まっていると、俄にガヤガヤと大勢のひとの気配が近付き、
「アリス!」
バタン、と大きな音を立てて扉が開かれたと思ったら、それは綺麗な金髪の女性が現れた。ベッドの上の私を見るなり駆け寄ってきて、次の瞬間には思い切り抱き締められていた。
「ああ、アリス…! よかったわ…、心配したのよ」
めちゃくちゃ良い匂いのする柔らかな腕の中で硬直する。頭上からは心底の安堵を滲ませた声が降ってくる。何、なんなんだ、もう無理、キャパオーバーだよ…。
「アリス? どうしたの?」
反応がないのを訝しんだのか、抱き締めていた身体を放し不思議そうに女のひとが覗き込んできた。うわあ、綺麗すぎる。目が蒼い。金髪きらきら。すごい。現実逃避をはかる頭が呑気な感想を呟く。
金魚よろしく口を開いたり閉じたりしていると、
「お可哀相に…お話しできないほど怖い思いをしたのですね」
別な声がした。
目を向ける。
ゆったりとした足取りでこちらに近付いてくる姿を捉えた。
次に目にしたのは銀色の髪。白衣のような外套の上に乗っているのはまたとんでもない美形な顔だった。
銀髪の煌めきに目を眩ませていたら、その整った顔が私をじっと見据えてきた。美形が無表情でただただ見詰めてくる。え、なに怖…。
金髪の女性が長い髪を翻らせて美形に振り向く。
「流石ね、貴方の言うとおりだったわ。医者は皆匙を投げたのよ」
「いえ、わたしは何も。すべてはアリス様御自身のお力ですよ」
銀髪の美形が今までの真顔など初めからなかったかのように柔和な笑みを浮かべて謙遜する。
え、いや待って、今の真顔誰か見てない!?
銀髪の美形ーー銀髪さんは再び視線を向けると、ビクッと肩を揺らしてビビる私に向けて恭しく頭を下げた。
「おはようございます、レディアリス。お目覚めになられてまずは何より」
顔をあげた銀髪さんがにこりと微笑む。
彼の後ろの方、扉付近で控えるようにして立っている女のひと-さっき部屋を飛び出していった全力悲鳴のひとだ-が銀髪さんを後ろから見詰めて頬を染めているのが視界に入る。
いやぽーっと見惚れてるけど、私にはさっきの真顔が怖すぎてこの笑みが偽物にしか見えないんだけど!
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