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15 ダンスパーティーでの悲劇

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 その日、わたくしはランド殿下と学園のダンスパーティーに参加いたしました。

 今まで、わたくしはダンスパーティーに参加する際、相手はお兄様だったり、親戚筋の従兄だったり、最近でしたらお友達とフリーの状態で参加するのが常でした。別にダンスパーティーはペアで参加する必要はないからです。フリー参加の場合は会場の中で、同じようにフリー参加の男性と1曲踊るのです。
 出会いの場となるため、フリー参加も大歓迎、という訳ですね。

 そして、今年は、私にとっては初めての身内以外の男性とのペア参加。しかも、そのお相手がランド殿下!大いに緊張いたしました。

 入場の際は多くの皆様の目に触れますから、粗相のないようにしないと!と思っていましたが、緊張している私をご覧になった殿下の「大丈夫だ。俺がついている」という心強い囁きをいただきまして、見事、真っ赤な顔での入場となりました。お、お恥ずかしい・・・。

 そうして、今年も華やかにダンスパーティーが始まりました。

 そして、わたくしには一つ、一大決心をしていたことがあるのです。

 殿下とダンスを踊った後に・・・殿下に告白をするのです。
 最もロマンチックで、気分が高揚したタイミングで告白をするのです。
 そうでないとわたくし・・・たぶん一生後悔すると思ったのです。

 殿下と踊るのはダンスパーティーの後半です。基本的にペアの男女が参加した場合は、前半と後半のダンスタイムで踊るのが習わしですが、格の高い貴族や、王族は後半に踊るのが通例となっています。殿下は王族ですし、わたくしも公爵家の令嬢、間違いなく後半で踊ることになる訳です。

 なので、後半のダンスタイムまでの時間は殿下と一緒に会場内を回ったりする訳です。立食形式の美味しいお料理もたくさんありますので、軽くお食事をするのも良いですわね。

「殿下。わたくし、いくつかお食事を持って参りますわ」
「ああ、ありがとう。アテナ嬢」

 ふふふ。殿下のお好きなお料理はしっかり把握してありますのよ!わたくしも自分の好きなお料理をとってきましょう!なんたって、こういう言葉があるでしょう?

 「腹が減っては戦はできぬ」と!

 そう、告白という戦で勝つには、しっかり腹ごしらえが必要なのですのよ!



・・・



「あ、ああああ・・・」

「あらー?ごめんあそばせー!!!」
「まぁまぁ、アテナ様ったらせっかくのドレスが台無しですわねぇ」

 わたくし・・・ドレスを汚してしまいました・・・。
 ・・・わたくしはビュッフェのお料理を取りに向かったんです。

 そうしたら、すれ違ったご令嬢の方が足を伸ばしてきて・・・躓いた私が、目の前のご令嬢が持っていたお料理やお飲み物にぶつかってしまったのです!

 幸い、目の前のご令嬢のドレスは無事だったのでホッとしたのですが・・・。

 わたくしのドレスには、お料理のソースやお飲み物がかかってしまいました。


「これはこれは、アテナ様じゃありませんか?まぁ!どうしたんですの!?ひどい恰好じゃありませんか!これではランド殿下とのダンスは、踊れませんわねぇ?・・・よろしければ、私があなたの代役で殿下とダンスを踊って差し上げましょうか?殿下もせっかく参加されたのに、相手がいないのは困るでしょうし・・・」

 わたくしの前に、突然、バルクス公爵家のご令嬢のルイーネ様が現れて、そのようにおっしゃいました。・・・なんだか、すごくタイミング良く私の前に来た気がするのですが、気のせいでしょうか?

「ルイーネ様!それがいいですわ!アテナ様!よかったですわねぇ!殿下がお恥をかかなくて済みますわよ!」
「ペアで参加したのに、ダンスを踊らないなんて恥ですからねぇ・・・あ!でもアテナ様は仕方ないと思いますわよ!だってお召し物が汚れてしまったんですもの!」

 わたくしに足をかけてきたご令嬢と、わたくしの目の前で料理を持っていたご令嬢が、ルイーネ様とわたくしにそう声をおかけになりました。

 ・・・たしか、このお二人、ベラ様とエレーナ様です。わたくしの記憶が正しければ、このお二人はルイーネ様と大変仲の良いご友人達、そして・・・ルイーネ様は殿下のことを・・・。

 このことに思い至った時、わたくしは知ってしまったのです。

 わたくしが、この方々にハメられてしまったことに。

 しかし、わたくしにはどうすることもできません。おそらく、わたくしがここで何を言っても、状況は悪くなるだけでしょう。

 大変悔しいですが・・・。


「・・・わかりました。ルイーネ様、ありがとうございます。殿下に事情を説明して参りますから、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか」
「ええ、もちろんですわよ」

 ルイーネ様は満面の笑みを浮かべていらっしゃいました。
 ・・・わたくしは悔しさで涙が出そうになるのを堪えながら、殿下の元へ急ぎました。


 その途中です。


 わたくしは、レオン様とローラ様に会いました。
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