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10 ランドとレオン2
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「ランド、こないだの動物園は楽しかったね、ありがとう」
「・・・・・」
僕は目の前に座っている親友に話かけた。
親友の名前は、ランド・ヴァリアス。この国の王子だ。
しかし、僕の声に、彼は全く反応しない。これは・・・・
「アテナ嬢とのデートは、楽しかったかい?」
びくぅ!
「な!いや!ああ!まぁ、悪くなかったな・・・」
アテナ嬢の名前を出した途端、これだ。
顔なんて真っ赤だよ。
アテナ嬢、という名前を出しただけでこんな反応をする親友の姿はものすごく新鮮だ。少し前の僕は、まさかこんな彼の姿を見られるようになるなんて思わなかっただろう。
「結局動物園ではお昼を食べる時だけ一緒で、ずっと別行動だったね。ランドがアテナ嬢と一緒にいてくれたおかげで、僕もローラ嬢と楽しく動物園を満喫できたよ」
「そうか、それなら下見した甲斐があったな」
彼、わざわざ前日に下見に行ってくれたんだよね。
しかも、僕のお願いで。
誰か女の子と一緒に行ってきてくれない?ってお願いしたんだ。
うん、僕の口から、誰と一緒に言ってきて、とは言ってないんだ。
まぁ、彼が誰と一緒に行くかなんて、それまでの様子を見れば一目瞭然だったからね。彼が今、最も気になる女の子と一緒にいくだろう、ってね。
僕とローラ嬢を恋仲にするため、っていう立派なお題目があるわけだから、誘いやすいだろうしね。
一応、僕らのデートの下見で行ってもらう訳だから、一緒に行く相手とは、恋人のように接してほしいとは伝えたんだ。恋人目線で見た方がより参考になる!、って理由を付けてね。ちょっと難しい注文だったかな~って思ってたけど、ローラ嬢の話を聞く限り、目の前の彼は、立派にそれを全うできたらしい。
でも、結局動物園で別行動しちゃったから、あんまり下見してもらった意味がなくなってしまったかな~って思ったけど、彼らもなんやかんや楽しかったみたいだ。
そうだよね、あの動物園の広さじゃ、1日では回り切れない。彼らは下見で回りきれなかったところを見て回ったようだ。
「そういえば、昨日はどうしたんだい?午後、めずらしくどこかへ出かけていたようだけど」
びくぅ!
あ、やっぱりね。
「ね、猫と遊んでいた・・・」
「へ~、彼女の猫は可愛かったかい?」
僕はそう自然に聞いてみた。カップの紅茶を口に運びながらね。そうしたら・・・
「ああ、俺の膝に乗ってきてな。何度も撫でた・・・。だが、彼女の可愛さには、勝てないな」
ぶぅ!!!
僕は、思わず、口に含んだ紅茶を噴きだしてしまった!
笑ったからじゃないよ。驚いたんだ。僕の目の前にいる彼は、本当にランドか?!ってね。
だって、彼がそんなことを口にするなんて、全然思ってもなかったからね!
「うお!どうしたんだレオン!・・・・って、俺は今何を口走った!?」
もう、昔からランドのこと見てるけど・・・こんな彼、見た事ないよ!
これはもう、ゾッコンですね。完全に彼女のことしか頭にないよ。恋の病だ。
「ごめんごめん。ちょっとびっくりしちゃって。・・・ねぇランド。ちょっと落ち着いて聞いて欲しいんだけどさ。いいかい?」
「な、なんだ?」
挙動不審に僕を見るランドに、僕は背筋を伸ばしてこう口にした。
「君は今、アテナ嬢に恋してるんだよ。間違いない。彼女のことが四六時中、頭の中から離れないだろう?」
「う・・・そんなことは・・・」
「恥ずかしがることはないんだよ。普通のことさ。僕だって、ローラ嬢の事が好きだよ。今こうやって君と話している間も、彼女の顔が頭に浮かんでるくらいさ」
「そ・・・そうなのか?」
「そうさ。それが普通のことなのさ」
ちょっと盛って話した部分はあるけど、僕もローラ嬢のことが好きだ。でなければ、ランドとアテナ嬢の仲をくっつけるためとはいえ、何度も彼女とデートはしない。
彼女も、友人であるアテナ嬢の幸せを心から願う、優しい女の子だ。趣味も合うんだから僕が好きにならない訳がないんだよね。
・・・というか、実は僕らは、もう付き合ってるんだ。この前の動物園デートで、僕は彼女に正式にプロポーズした。もう少し経てば、お互いの家同士で、婚約の手続きをとる予定だ。
だから、僕らの婚約が発表される前に、我が親愛なる目の前の友人にも、恋人を作って欲しいんだよねぇ。
・・・もう少し発破をかけてみようかな。
「それにね、ランド?彼女、自分の恋愛には鈍感なようだから自覚してないと思うけど、君に好意を寄せてると思うよ。ローラ嬢もそう言ってたから間違いないはずさ。・・・でもね、彼女を狙ってる男はすごく多いんだよ?」
「な、なに!?」
ランドは真っ赤な顔だよ。
その表情は、嬉しさ半分、焦り半分ってところだね。すごくわかりやすいよね彼。
「ローラ嬢に聞いたんだ。女神の二つ名は伊達じゃないのさ。彼女のあの容姿に、お人好しな性格だよ?もうさ、学園中の男が狙っているんだよ。うかうかしてると、今度のダンスパーティーのお相手、誰かに取られちゃうよ?」
「う・・・」
ふふふふ。焦ってる焦ってる。
さーて、僕はやれるだけのことはやったし、これ以上のおせっかいはやめておこうかな。
今度のダンスパーティーが楽しみだ。
「・・・・・」
僕は目の前に座っている親友に話かけた。
親友の名前は、ランド・ヴァリアス。この国の王子だ。
しかし、僕の声に、彼は全く反応しない。これは・・・・
「アテナ嬢とのデートは、楽しかったかい?」
びくぅ!
「な!いや!ああ!まぁ、悪くなかったな・・・」
アテナ嬢の名前を出した途端、これだ。
顔なんて真っ赤だよ。
アテナ嬢、という名前を出しただけでこんな反応をする親友の姿はものすごく新鮮だ。少し前の僕は、まさかこんな彼の姿を見られるようになるなんて思わなかっただろう。
「結局動物園ではお昼を食べる時だけ一緒で、ずっと別行動だったね。ランドがアテナ嬢と一緒にいてくれたおかげで、僕もローラ嬢と楽しく動物園を満喫できたよ」
「そうか、それなら下見した甲斐があったな」
彼、わざわざ前日に下見に行ってくれたんだよね。
しかも、僕のお願いで。
誰か女の子と一緒に行ってきてくれない?ってお願いしたんだ。
うん、僕の口から、誰と一緒に言ってきて、とは言ってないんだ。
まぁ、彼が誰と一緒に行くかなんて、それまでの様子を見れば一目瞭然だったからね。彼が今、最も気になる女の子と一緒にいくだろう、ってね。
僕とローラ嬢を恋仲にするため、っていう立派なお題目があるわけだから、誘いやすいだろうしね。
一応、僕らのデートの下見で行ってもらう訳だから、一緒に行く相手とは、恋人のように接してほしいとは伝えたんだ。恋人目線で見た方がより参考になる!、って理由を付けてね。ちょっと難しい注文だったかな~って思ってたけど、ローラ嬢の話を聞く限り、目の前の彼は、立派にそれを全うできたらしい。
でも、結局動物園で別行動しちゃったから、あんまり下見してもらった意味がなくなってしまったかな~って思ったけど、彼らもなんやかんや楽しかったみたいだ。
そうだよね、あの動物園の広さじゃ、1日では回り切れない。彼らは下見で回りきれなかったところを見て回ったようだ。
「そういえば、昨日はどうしたんだい?午後、めずらしくどこかへ出かけていたようだけど」
びくぅ!
あ、やっぱりね。
「ね、猫と遊んでいた・・・」
「へ~、彼女の猫は可愛かったかい?」
僕はそう自然に聞いてみた。カップの紅茶を口に運びながらね。そうしたら・・・
「ああ、俺の膝に乗ってきてな。何度も撫でた・・・。だが、彼女の可愛さには、勝てないな」
ぶぅ!!!
僕は、思わず、口に含んだ紅茶を噴きだしてしまった!
笑ったからじゃないよ。驚いたんだ。僕の目の前にいる彼は、本当にランドか?!ってね。
だって、彼がそんなことを口にするなんて、全然思ってもなかったからね!
「うお!どうしたんだレオン!・・・・って、俺は今何を口走った!?」
もう、昔からランドのこと見てるけど・・・こんな彼、見た事ないよ!
これはもう、ゾッコンですね。完全に彼女のことしか頭にないよ。恋の病だ。
「ごめんごめん。ちょっとびっくりしちゃって。・・・ねぇランド。ちょっと落ち着いて聞いて欲しいんだけどさ。いいかい?」
「な、なんだ?」
挙動不審に僕を見るランドに、僕は背筋を伸ばしてこう口にした。
「君は今、アテナ嬢に恋してるんだよ。間違いない。彼女のことが四六時中、頭の中から離れないだろう?」
「う・・・そんなことは・・・」
「恥ずかしがることはないんだよ。普通のことさ。僕だって、ローラ嬢の事が好きだよ。今こうやって君と話している間も、彼女の顔が頭に浮かんでるくらいさ」
「そ・・・そうなのか?」
「そうさ。それが普通のことなのさ」
ちょっと盛って話した部分はあるけど、僕もローラ嬢のことが好きだ。でなければ、ランドとアテナ嬢の仲をくっつけるためとはいえ、何度も彼女とデートはしない。
彼女も、友人であるアテナ嬢の幸せを心から願う、優しい女の子だ。趣味も合うんだから僕が好きにならない訳がないんだよね。
・・・というか、実は僕らは、もう付き合ってるんだ。この前の動物園デートで、僕は彼女に正式にプロポーズした。もう少し経てば、お互いの家同士で、婚約の手続きをとる予定だ。
だから、僕らの婚約が発表される前に、我が親愛なる目の前の友人にも、恋人を作って欲しいんだよねぇ。
・・・もう少し発破をかけてみようかな。
「それにね、ランド?彼女、自分の恋愛には鈍感なようだから自覚してないと思うけど、君に好意を寄せてると思うよ。ローラ嬢もそう言ってたから間違いないはずさ。・・・でもね、彼女を狙ってる男はすごく多いんだよ?」
「な、なに!?」
ランドは真っ赤な顔だよ。
その表情は、嬉しさ半分、焦り半分ってところだね。すごくわかりやすいよね彼。
「ローラ嬢に聞いたんだ。女神の二つ名は伊達じゃないのさ。彼女のあの容姿に、お人好しな性格だよ?もうさ、学園中の男が狙っているんだよ。うかうかしてると、今度のダンスパーティーのお相手、誰かに取られちゃうよ?」
「う・・・」
ふふふふ。焦ってる焦ってる。
さーて、僕はやれるだけのことはやったし、これ以上のおせっかいはやめておこうかな。
今度のダンスパーティーが楽しみだ。
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