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不死の姫と魔女戦争

91 商業の町「カフマン」

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 朝日が出た頃に出発し、現在はすでに日が沈みつつある。最初の内は追われ気味の仕事から解放され、馬車に揺られる心地よさに浸っていた。しかし、それが一日中となるとどうも暇を持て余してしまう。

 ソワソワ、ムズムズと体を揺らし、国王としも一人の淑女としてもあまりお行儀がいいとは言えない。馬車に乗って以降、置き物と化したように微動だとしないリーザに何度から窘(たしな)められつつ時間が過ぎるのを我慢した。

 走り始めた頃は、馬車の窓から移りゆく風景を楽しんでいたラルフであったが、ある時を境に俯いてしまい、時折小さなうめきを漏らすだけになってしまった。恐らく馬車酔いしたのだろう。私が休むかと提案したが彼は頑なに拒み、今に至る。

 これが往復で十日程度続くのかと考えると先が思いやられる。ラルフに至っては護衛と言う任があるのだが、この様子では私かリーザが先頭に立って彼を護衛しないといけないやもしれない。

 完全に日が落ちた頃、ようやく宿泊予定の町、カフマンに到着した。ここはベルクの北側の国々、ノーデン地方の小国たちの中間地点にあたり、交易の拠点として注目されている町だ。この町から馬車を走らせ、半日から一日で到着する国々が出資を行ったり、治安を守る組織に人を貸し出したりしている。

「到着致しました。それでは私(わたくし)は町の外れに馬車を止めて参りますのでお先にどうぞ。出発は明朝、こちらにてお待ちしております」

 私たちが下車した後、ルッツがそう告げて馬車を走らせ消える。降りてしばらくの間ラルフを休ませる。ぐったりしていた彼が調子を取り戻したのを見計らい、私たちはカフマンの喧騒の中に飲み込まれて行く。

 他国への旅路の際に何度か来た事があるのだが、夜だと言うのに露店が立ち並び至る所から客引きの声が聞こえる。訪れるたび、賑やかさに拍車が掛かっているのではないかと、毎度驚かされる。

 そんな町中を練り歩く三人組は注目の的である。一人は銀の鎧に身を包む騎士、一人は黒のドレスに白のエプロン姿の従者、一人は茶色のローブに身を包み、布を巻いた得物を持ち歩く銀髪の娘。私は否応なく目立つだろう。

 しかし、彼らはそれほどおかしいこともない。ラルフは治安維持組織の見張りに見えるだろうし、リーザはどこかのお屋敷から使いに出た従者に見える。まぁそれが一緒くたになっているのだからどう考えても目立つ。

「見ろよ、ベルクの女王様だぜ」
「ええ! あれがあの帝国をねじ伏せた国王だって? 若くね?」
「あの騎士様かっこいい!」
「従者の子なんか怒ってないか?」

 至るところから声が聞こえる。別にお忍びで来ているわけではないので構わないのだが、目立ちすぎるのも疲れる。

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