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不死の姫と魔女戦争

84 最強の剣と最強の盾

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「俺は君より強くなりたい!」

 な、なんなのよそれ……

 体の力が抜け、踏ん張りがきかなくなる。苦手なヒールを履いているせいもあり、バランスを崩し茂みにぶつかる。勿論それに気が付かない二人ではない。

「姫様、こんなところで何をなされているのですか?」

 差し伸べられたリーザの手を取り、起き上がる。白いドレスに付いた葉を手で簡単に払う。

「廊下を歩いてたら二人が見えてたから、気になって様子を見ていたのよ」
「姫様、覗き見とはあまり良い趣味とは言えませんよ?」
「そうね、貴方の言う通りだわリーザ。面白がって見ていたのはあやまるわ。それにしてもラルフはどうしてリーザと勝負なんてしてるの?」

 ラルフは木剣を握りしめ、真剣な表情を見せる。

「それは……六年前の戦いで私は大したお役に立てませんでした」
「そんなことないわ! 貴方は騎士団をまとめ、あの激しい戦いの中で死者をださずに戦い抜いたじゃない」
「そう言って頂けるのはありがたいのですが……あの戦いで私は自分の無力さを痛感致しました。次期騎士団長などと言われて驕っていたのです。リーザが姫様最強の剣であるならば、私は最強の盾となりたい」

 そうやってひたむきに頑張れるのがすでにすごいと、私は素直に関心する。

「それでリーザと勝負をしてたの?」
「はい、ですがやはり今だ勝てた試がありません」

 重要な作戦の前、リーザは自分よりも強いとラルフは言っていたが、それは彼が私を励ますために言った方便だと思っていた。

 だが、リーザは六年前の戦いにおいて帝国の騎士団長を負かした実績がある。それが決定打となり、帝国との戦争は終結へと向かったのだ。

「ラルフが勝てないのは当然です。私とラルフでは決定的に違うことがありますから」
「そ、それは⁉ 教えてくれリーザ!」
「それは……姫様をお慕いする気持ちです!」

 いつも淡々とした口調で話すリーザが珍しく語気を強める。よっぽどの自信の表れなのだろう。

「まぁそれはさておき、ラルフはもう少し今までの自分自身を信じてみればいいのではないでしょうか」
「自分自身……」

 リーザの言っていることにはさっぱり要領を得ないが、一応助言と言うことなのだろうか。ラルフもその言葉を噛みしめ、考えているようだ。

「それでは私(わたくし)は仕事に戻りますので」

 そう言ってリーザは城内に消えていった。

「姫様、それでは私も夜の警護の時間ですので失礼致します」
「ねぇラルフ、さっきリーザが言っていたことが分かるの?」
「いえ……だけど何かのきっかけになりそうな気がします……」

 そして、彼も城内に入っていった。

 自分自身を信じる、か……


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