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不死の姫と勇敢な騎士

77 騎士

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 迫るコルネリウスに迎撃の準備をする。わざわざ相手から迫ってきているのだ、迎え討ってやればいい。右手を前に槍を構える。ラルフとの訓練を思い出せ。今まで騎兵との対峙であったり、怒りに我を忘れていたりで積み上げたものを発揮していなかったが、今の私は比較的冷静だ。

 さぁ、どう狙う。セオリーならばコルネリウスの露出した頭か、剣を持つ手であろうか。しかし、無類の切れ味を誇るヴァルハラならば鎧を刺し貫くことのほうが簡単だ。ならば狙うは胴だ。

 走りくるコルネリウスの胴を標的にし、機会をみて左手で聖槍を押し出す。右手で精密に操り突きを繰り出す。剣を両手で握り、天に掲げる形で疾走する奴は防ぎようがないであろう。

 しかし、必中だと確信した突きを体を捻り、右回りに回転し避ける。ヴァルハラの穂先はコルネリウスの鎧を掠り、削り取っただけに終わる。あれだけの勢いをつけ、普通ならば鎧に阻まれ、通らぬと過信する突きを避けられるとは思わなかった。

 だが、その態勢では攻撃に移ることは不可の――

 奴は右足を前に出し踏ん張り、走る勢いと回転の勢いを全て剣に乗せ振り上げ、ヴァルハラを弾く。

「ぐっ!」

 重い。体中にビリビリと衝撃が伝わる。左手に力を込め、辛うじてヴァルハラは離さなかったが体勢は大きく崩された。反射で後ろに右足を引き後ろに倒れることは免れたが、無防備な私に剣を振り下ろすのが見える。

 目を閉じ、次に来る衝撃と痛みに心を備える。体は痛みの予感に硬くなる。

 ギッィイン!

 私の目の前であろう場所から耳をつんざく金属音が鳴り響く。目を開けると二本の直剣が交差し、コルネリウスの剣を受け止めていた。

「「姫様!」」

 左右の耳にそれぞれの声が入ってくる。ラルフとリーザだ。二人はそのまま剣を押し上げコルネリウスを後退させる。

「くっ! 取り損ねたか」

 剣を構え直し対峙するコルネリウス。

「ご無事で何よりです」

 リーザが私に顔を向け言った。

「どうして、私は不死――」
「そうであろうとも……痛みはあるのでしょう?」

 私の言葉を遮り、リーザが問う。無言で佇む私の答えを肯定と捉えたのかのかリーザが話を続ける。

「そうであるのならば……不死であろうと、痛みで苦しむ姫様をお守りしない理由はありません。姫様の流す血は、私の流す血と同じでございます。姫様の痛みは私の痛みでございます」

 リーザは剣を構え、コルネリウスを睨み付ける。

「さぁ、ベルク騎士団長お墨付きの従者リーザがお相手をして差し上げましょう」
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