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不死の姫と勇敢な騎士
60 心配
しおりを挟む私たちは早速作戦の準備に取り掛かった。退路はあるにしろ、地の利を捨て百戦錬磨の帝国相手に真っ向からの勝負となるのだ。相応の覚悟が必要となるだろう。
そして、この作戦の要と言える帝国の負傷者役……最も責任がのしかかり、危険な仕事だ。撤退の途中で見つかっても、事を成し離脱の際に捕まっても待っているのは死……いやそれよりも恐ろしいことが待ち受けているかもしれない。
そんな重圧がのしかかる大役に自ら名乗りだす者などいないだろう……そう頭を悩ませていたら二人名乗りを上げた。
「発案者自らが危険の前に立たねば、誰も付いては来てくれません。まぁ今の自分に追従する者などいないと思うが……それに今更裏切りの心配もないでしょう? 聖槍の力は嘘偽りではない。それを受けた自分だからこそわかります」
そう語って志願したのはテオドール。そして、もう一人は……
「私(わたくし)にお任せください」
まさかの候補者だった。
「リーザ……ダメよ! そんな危険なところに貴方を行かせるなんて」
「危険だからこそ、こんな重要な作戦を他の誰かに任せることは出来ません。それに私は国のめ、ひいてはブリュンヒルド様のためになるのであれば、敵であろうと、味方であろうと躊躇なく殺します。迷いなどありません」
「で、でも!」
私はリーザには行って欲しくなかった。民や騎士団、誰にも死んでほしくないのは勿論ではある。しかし、リーザはまた特別な存在だ。幼馴染だとか、自分の従者だとかそんな域を超え、家族以上とも言える大切な人。
「姫様の気持ちは大変うれしく思います。ですので私の無事を祈り、信じてお待ちいただけないでしょうか? これ程までに気を掛けて頂けるリーザは幸せ者でございます。その姫様の気持ちを踏みにじり、一人で死ぬような裏切りを私は許しません」
どうか……どうかと懇願され、これ以上は私を慕ってくれている彼女への侮辱だと感じ、断腸の思いで承諾した。
作戦の決行はその日の夕方だ。日が沈む時間に後方に下がることで帝国が深追いすることを防ぎ、テオドールとリーザが紛れ込みやすいようにと考えた結果だ。
落ち着かない心をどうにか抑えようと努めるが、うまくいかない。リーザのことを考えると尚更だ。今も彼女にどんな言葉をかけ送り出したものかと考えても考えても答えが出ない。
「不安ですか?」
後ろから聞こえる声に振り返るとそこにはベルク騎士団団長のラルフが立っていた。
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