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ゲーム前
召喚された人
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「ーーー召・喚!!」
私の叫びと共に、ふんわりと淡い光が漂う。
まるで、そう。
闇夜に浮かぶ月の光のような、淡い光。
その中に、人物の影が現れる。
光が弱くなると同時に、ふわりと舞う銀色に輝く美しい髪。
伏せられたまつ毛がふるりと震えて、露わになった瞳は青空のような澄んだ青。
「美、美少女、出た…」
人智を超えた美しさの前に呆然とする私。
そんな私をキョトンと見返した少女は、次の瞬間大きく目を見開き、驚愕へと表情を変えた。
ーーうん、そんな驚きの表情でも美人は美人。羨ましい。
「ビアンカ…」
「…っ!?」
美少女の可愛らしい口からポツリと呟かれた名前に、何故か魂が揺さぶられるような衝撃を受けた。
そして、次に去来したのは、言葉には表せないほど強大な歓喜。
「そう。アビゲイルが言っていた、今がその時なのね」
「アビ、ゲイル…」
彼女から発された名前を復唱しただけなのに、胸がポカポカと暖かくなる。
そして、同じくらい温かいものが私の頬を滑り落ちた。
「そう、アビゲイル。彼は、今でも貴女のことを思ってる」
そう言いながら、美少女は私の頬を優しく撫でて、流れる涙を拭ってくれた。
それはとても優しくて、その手に縋り付きたくなるほど温かくて、離したくなくて。
私も連れて帰ってと願いたくなるほどに、込み上げてくるのは、哀愁。
おかしいな、私の前世は日本人だったはずなのに。
戸惑う私を、美少女はふんわりと宥めるように抱きしめると、次の瞬間には真剣な顔つきで宙に浮いたビー玉を見つめる。
「元凶は、これね」
訳知り顔で呟くと、美少女は徐に両手で触れるか触れないかの感覚でそれを包み込むと、ふっと息を吹きかけた。
その瞬間、どろどろと渦を巻いてビー玉の中を漂っていたソレが、一気に霧が晴れるように霧散して、眩いばかりの美しい球へと姿を変えた。
『ーーーっ!』
これには、今まで黙って様子を見ていたカルマ様も息を呑んだ。
それほどまでに、神々しく光り輝くソレ。
あまりの神々しさに立ちすくむ私たちを他所に、美少女はさも当然のように私たちを振り返ってにっこり微笑んだ。
「これで大丈夫よ、ビアンカ。
この世界もあっちの世界も」
頭では全然理解できないのに、心は安堵に包まれて私はホッと息を吐いた。
「ティア、時間だよ」
私たちだけだったはずの空間に、突如として男性の声が割り込んできた。
穏やかだけど、聞く人によっては震え上がるくらい裏に何かを含んでそうな声と共に、まるで太陽のように眩い光を背に現れたのは、金色の髪に青々とした緑を彷彿とさせる瞳を持つ、これまた美青年。
何これ。
違う意味で目が痛いんですけど。
「アル、迎えに来てくれたのね。
ありがとう。
よくここが分かったわね」
嬉しそうに青年に抱きつく、ティアと呼ばれた少女。
『い、一体其方たちは、な、何者なのじゃ…?』
戸惑うカルマ様に全力で同意したい。
「あ、あの、ティア、様…?」
「ビアンカ。すまないが、ティアをティアと呼べるのは私だけなんだ。君は、どうかリーゼ、と呼んで欲しい」
ものすんごい下手に提案されているはずなのに、その言葉とは裏腹に掛けられる圧が半端ない。
次ティアと呼んだ瞬間、抹殺されるのが目に浮かぶほどの威圧感に、一も二もなく頷いた。
『何と、ここにも彼奴らと同類が…』
アルと呼ばれる青年の言葉を聞いて、愕然と呟くカルマ様。
彼奴ら?え、同類?
「カルマ様、何の話…」
「あら?そうだったの?」
私の言葉とほぼ同時に発せられたリーゼ様の言葉に、私とカルマ様は同時に彼女を振り向く。
いやいや、本人がティア呼びとリーゼ呼びとの違いというか、特別感分かってないってどういうことなの?
ありなの?
無しでしょ、無し!!
『無し!』
カルマ様とどうやら通じていたらしい。
顔を見合わせて、お互いに同意するように深く頷き合った。
そんな感じで、心の中でツッコミを繰り広げている私たちなど気にすることなく、アルと呼ばれた青年は、徐にその眩いばかりの神々しい球を手に取った。
と、その時、静寂に包まれていたはずの空間がミシミシと音を立てて軋み始めた。
遠くでは、ゴーゴーという地響きのような音と、半端ない程の魔力の圧。
「え!?」
何事かと身をすくめる私の耳に、カルマ様の呆れたような声が微かに届いた。
『あの馬鹿め。
これくらいの時間も我慢できんのでは、先が思いやられるのぉ』
あの馬鹿とは誰ですか?
我慢って、何の我慢でしょう?
そんな中、少しも動じず優雅さを保ったままリーゼ様とアルと呼ばれた青年が、2人一緒にカルマ様の元へ近づいて行く。
それに何故か慌てた出すカルマ様。
『こ、これは我が愚息が愛しい女子と離されたことに動揺しているだけであって、全く其方らに害を与えるつもりは一切合切ないのじゃ!!』
「え!?」
『な、何!?こちらも無自覚じゃと!?』
驚きの声を上げる私に、更に驚きの声を上げるカルマ様だったが、近づいてくる2人に気を取り直し、何をされるのかと身構えた。
そんなカルマ様に、リーゼ様が安心させるように笑みを浮かべる。
「大丈夫ですわ。そんなに警戒なさらないで。
これは、我が世界では月の雫と呼ばれるもの。
ざっくり言うと、奇跡を起こす神秘の球ですわ」
リーゼ様はそう言うと、アルと呼ばれる青年から球を受け取り、そっとカルマ様の胸元へ翳した。
「貴女に授けるのが一番いい気がするのです。
汝らに、幸多からんことを…ーーー」
そして、次の瞬間。
球から発せられた優しい光で、闇に覆われた魔空間は消えて行った。
「また会えるわ、ビアンカ。
それまで、元気で…ーーー」
かすみゆく視界の片隅で、リーゼ様の優しい言葉が聞こえたような気がした。
私の叫びと共に、ふんわりと淡い光が漂う。
まるで、そう。
闇夜に浮かぶ月の光のような、淡い光。
その中に、人物の影が現れる。
光が弱くなると同時に、ふわりと舞う銀色に輝く美しい髪。
伏せられたまつ毛がふるりと震えて、露わになった瞳は青空のような澄んだ青。
「美、美少女、出た…」
人智を超えた美しさの前に呆然とする私。
そんな私をキョトンと見返した少女は、次の瞬間大きく目を見開き、驚愕へと表情を変えた。
ーーうん、そんな驚きの表情でも美人は美人。羨ましい。
「ビアンカ…」
「…っ!?」
美少女の可愛らしい口からポツリと呟かれた名前に、何故か魂が揺さぶられるような衝撃を受けた。
そして、次に去来したのは、言葉には表せないほど強大な歓喜。
「そう。アビゲイルが言っていた、今がその時なのね」
「アビ、ゲイル…」
彼女から発された名前を復唱しただけなのに、胸がポカポカと暖かくなる。
そして、同じくらい温かいものが私の頬を滑り落ちた。
「そう、アビゲイル。彼は、今でも貴女のことを思ってる」
そう言いながら、美少女は私の頬を優しく撫でて、流れる涙を拭ってくれた。
それはとても優しくて、その手に縋り付きたくなるほど温かくて、離したくなくて。
私も連れて帰ってと願いたくなるほどに、込み上げてくるのは、哀愁。
おかしいな、私の前世は日本人だったはずなのに。
戸惑う私を、美少女はふんわりと宥めるように抱きしめると、次の瞬間には真剣な顔つきで宙に浮いたビー玉を見つめる。
「元凶は、これね」
訳知り顔で呟くと、美少女は徐に両手で触れるか触れないかの感覚でそれを包み込むと、ふっと息を吹きかけた。
その瞬間、どろどろと渦を巻いてビー玉の中を漂っていたソレが、一気に霧が晴れるように霧散して、眩いばかりの美しい球へと姿を変えた。
『ーーーっ!』
これには、今まで黙って様子を見ていたカルマ様も息を呑んだ。
それほどまでに、神々しく光り輝くソレ。
あまりの神々しさに立ちすくむ私たちを他所に、美少女はさも当然のように私たちを振り返ってにっこり微笑んだ。
「これで大丈夫よ、ビアンカ。
この世界もあっちの世界も」
頭では全然理解できないのに、心は安堵に包まれて私はホッと息を吐いた。
「ティア、時間だよ」
私たちだけだったはずの空間に、突如として男性の声が割り込んできた。
穏やかだけど、聞く人によっては震え上がるくらい裏に何かを含んでそうな声と共に、まるで太陽のように眩い光を背に現れたのは、金色の髪に青々とした緑を彷彿とさせる瞳を持つ、これまた美青年。
何これ。
違う意味で目が痛いんですけど。
「アル、迎えに来てくれたのね。
ありがとう。
よくここが分かったわね」
嬉しそうに青年に抱きつく、ティアと呼ばれた少女。
『い、一体其方たちは、な、何者なのじゃ…?』
戸惑うカルマ様に全力で同意したい。
「あ、あの、ティア、様…?」
「ビアンカ。すまないが、ティアをティアと呼べるのは私だけなんだ。君は、どうかリーゼ、と呼んで欲しい」
ものすんごい下手に提案されているはずなのに、その言葉とは裏腹に掛けられる圧が半端ない。
次ティアと呼んだ瞬間、抹殺されるのが目に浮かぶほどの威圧感に、一も二もなく頷いた。
『何と、ここにも彼奴らと同類が…』
アルと呼ばれる青年の言葉を聞いて、愕然と呟くカルマ様。
彼奴ら?え、同類?
「カルマ様、何の話…」
「あら?そうだったの?」
私の言葉とほぼ同時に発せられたリーゼ様の言葉に、私とカルマ様は同時に彼女を振り向く。
いやいや、本人がティア呼びとリーゼ呼びとの違いというか、特別感分かってないってどういうことなの?
ありなの?
無しでしょ、無し!!
『無し!』
カルマ様とどうやら通じていたらしい。
顔を見合わせて、お互いに同意するように深く頷き合った。
そんな感じで、心の中でツッコミを繰り広げている私たちなど気にすることなく、アルと呼ばれた青年は、徐にその眩いばかりの神々しい球を手に取った。
と、その時、静寂に包まれていたはずの空間がミシミシと音を立てて軋み始めた。
遠くでは、ゴーゴーという地響きのような音と、半端ない程の魔力の圧。
「え!?」
何事かと身をすくめる私の耳に、カルマ様の呆れたような声が微かに届いた。
『あの馬鹿め。
これくらいの時間も我慢できんのでは、先が思いやられるのぉ』
あの馬鹿とは誰ですか?
我慢って、何の我慢でしょう?
そんな中、少しも動じず優雅さを保ったままリーゼ様とアルと呼ばれた青年が、2人一緒にカルマ様の元へ近づいて行く。
それに何故か慌てた出すカルマ様。
『こ、これは我が愚息が愛しい女子と離されたことに動揺しているだけであって、全く其方らに害を与えるつもりは一切合切ないのじゃ!!』
「え!?」
『な、何!?こちらも無自覚じゃと!?』
驚きの声を上げる私に、更に驚きの声を上げるカルマ様だったが、近づいてくる2人に気を取り直し、何をされるのかと身構えた。
そんなカルマ様に、リーゼ様が安心させるように笑みを浮かべる。
「大丈夫ですわ。そんなに警戒なさらないで。
これは、我が世界では月の雫と呼ばれるもの。
ざっくり言うと、奇跡を起こす神秘の球ですわ」
リーゼ様はそう言うと、アルと呼ばれる青年から球を受け取り、そっとカルマ様の胸元へ翳した。
「貴女に授けるのが一番いい気がするのです。
汝らに、幸多からんことを…ーーー」
そして、次の瞬間。
球から発せられた優しい光で、闇に覆われた魔空間は消えて行った。
「また会えるわ、ビアンカ。
それまで、元気で…ーーー」
かすみゆく視界の片隅で、リーゼ様の優しい言葉が聞こえたような気がした。
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