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ゲーム前
双子
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ナタリア様に案内されたのは子爵家の一室だった。
膝の上でルビィが警戒するように、お茶を準備する侍女たちの様子を窺っている。
そのルビィの様子に、ルー様がナタリア様の様子を聞いて、私のことを心配していたことが思い出される。
そして、先程の思い詰めたようなナタリア様。
はたして、ナタリア様の思惑は一体どこにあるのか。
今は席を外しているナタリア様のことを思案しながら、ルビィを落ち着かせるように艶やかながらも柔らかい毛を優しく撫でる。
「ルビィ」
囁くようにその名を呼ぶと、侍女を観察するのはそのままに、耳だけピンとそばだてる様子が可愛くて、くすりと笑みが自然と浮かぶ。
「そういえば、あなたを介して話ができるって以前ルー様が仰っていたけど、本当かしら?」
侍女に聞こえない程の囁きで、ルビィに問い掛ける。
ペロリと私の手を一舐めして私の問いに答えるようなルビィの仕草に、ホッと息を吐いたことで、私もこの状況を少し不安に思っていたのだと気付く。
「あなたが一緒で心強いわ。
でも、このことは私がいいって言うまで悟られてはダメよ」
切り札は、とっておきのときの時に使ってこそ意味があるのよ。
ルビィの顎の下を擽りながら呟くと、分かっていると言うかのように私の指にルビィが顔を寄せた。
その感触を楽しんでいると、お茶の準備を終えた侍女と入れ違いに、ナタリア様が入ってきた。
その後ろには、双子のイザベラ様も。
不安を悟られないように、敢えてゆったりとした笑顔で2人を迎える。
その私の態度に意表を突かれたように息を飲む2人。
さすが双子。
息がぴったり。
「あ、あの、ユリアーナ様。
今日は急なお誘いに応じていただいて、ありがとうございます」
ナタリア様が恐縮したように頭を下げる。
「いいえ、大丈夫ですわ。
私もナタリア様とはゆっくりお話したいと思っていましたので」
苦笑しながら答える私に、ナタリア様は怪訝そうに首を傾げた。
「私と、ですか…?」
「ええ。
だって、この前はあまりお話できなかったでしょう?
あの後、何だか気になってしまって。
何度か声を掛けようと思ったのですが、なかなかタイミングが合わなくて」
「…」
予想外のことだったのか、ぽかん、と口を開けたナタリア様があまりにも無防備で、再び苦笑が漏れる。
少しだけ場が和んだような雰囲気の中、ナタリア様の後ろに控えていたイザベラ様が徐に口を開いた。
「寛大なお心、感謝します。
ユリアーナ様、お初にお目にかかります、ナタリアの姉のイザベラでございます」
私とナタリア様のやり取りを遮るように、そう挨拶をしたイザベラ様は、社交上手だという噂とは打って変わった冷たい声に、こちらを分析するような鋭い目線を投げ掛けてきた。
「ユリアーナ・ジルコニアです。
寛大だなんて、大袈裟ですわ」
その噂とは異なるイザベラ様の態度に、少し瞑目してしまったが、すぐに笑顔で切り返せたのは、お茶会の特訓の産物だろう。
向かい合う椅子に2人が腰掛ける。
ナタリア様の表情は、困惑の表情。
対して、イザベラ様は相変わらずこちらを値踏みするかのような表情。
一卵性双生児でも、これだけ挙動が違えば分かりやすいものだと感心しながら2人を見つめる。
勿論、笑顔の仮面は被ったままで。
「それで、私に何のご用がおありなのですか?」
私が空気を読まずに本題へと突入したことに、ナタリア様は分かりやすく動揺し怯えるような様子だったが、イザベラ様に大きな態度の変化はなかった。
うん、明らかにイザベラ様の方が策士だ。
今回の件も恐らくイザベラ様が主導しているに違いない。
そう判断した私は、手っ取り早く主導している方へ注意を向ける。
短慮だと言われてもしょうがない。
何せ時間が時間だ。
家族を心配させる事態は避けたい。
いえ、お母様に叱られるのが恐いとか、そんなこと全然思ってません…よ?うん。
「お話くださいますか、イザベラ様?」
脳裏に浮かんだ、怒りで般若のようになるお母様の顔にお尻を叩かれ、イザベラ様へ向き合う。
イザベラ様は、唇を軽く引き結び、こちらをじっと見つめる。
私が見つめ返すその先で、膝の上でドレスのスカートをぎゅっと握るイザベラ様に、ナタリア様がすがるように手を重ねる。
それは、イザベラ様を止めようとしているのか、後押しをしているのか、判断はできなかった。
イザベラ様は考えを纏めるように、ぎゅっと瞳も閉じる。
そして、その瞳が開かれたとき、そこには確固たる決意と、すがるような色合いが入り交じっていた。
膝の上でルビィが警戒するように、お茶を準備する侍女たちの様子を窺っている。
そのルビィの様子に、ルー様がナタリア様の様子を聞いて、私のことを心配していたことが思い出される。
そして、先程の思い詰めたようなナタリア様。
はたして、ナタリア様の思惑は一体どこにあるのか。
今は席を外しているナタリア様のことを思案しながら、ルビィを落ち着かせるように艶やかながらも柔らかい毛を優しく撫でる。
「ルビィ」
囁くようにその名を呼ぶと、侍女を観察するのはそのままに、耳だけピンとそばだてる様子が可愛くて、くすりと笑みが自然と浮かぶ。
「そういえば、あなたを介して話ができるって以前ルー様が仰っていたけど、本当かしら?」
侍女に聞こえない程の囁きで、ルビィに問い掛ける。
ペロリと私の手を一舐めして私の問いに答えるようなルビィの仕草に、ホッと息を吐いたことで、私もこの状況を少し不安に思っていたのだと気付く。
「あなたが一緒で心強いわ。
でも、このことは私がいいって言うまで悟られてはダメよ」
切り札は、とっておきのときの時に使ってこそ意味があるのよ。
ルビィの顎の下を擽りながら呟くと、分かっていると言うかのように私の指にルビィが顔を寄せた。
その感触を楽しんでいると、お茶の準備を終えた侍女と入れ違いに、ナタリア様が入ってきた。
その後ろには、双子のイザベラ様も。
不安を悟られないように、敢えてゆったりとした笑顔で2人を迎える。
その私の態度に意表を突かれたように息を飲む2人。
さすが双子。
息がぴったり。
「あ、あの、ユリアーナ様。
今日は急なお誘いに応じていただいて、ありがとうございます」
ナタリア様が恐縮したように頭を下げる。
「いいえ、大丈夫ですわ。
私もナタリア様とはゆっくりお話したいと思っていましたので」
苦笑しながら答える私に、ナタリア様は怪訝そうに首を傾げた。
「私と、ですか…?」
「ええ。
だって、この前はあまりお話できなかったでしょう?
あの後、何だか気になってしまって。
何度か声を掛けようと思ったのですが、なかなかタイミングが合わなくて」
「…」
予想外のことだったのか、ぽかん、と口を開けたナタリア様があまりにも無防備で、再び苦笑が漏れる。
少しだけ場が和んだような雰囲気の中、ナタリア様の後ろに控えていたイザベラ様が徐に口を開いた。
「寛大なお心、感謝します。
ユリアーナ様、お初にお目にかかります、ナタリアの姉のイザベラでございます」
私とナタリア様のやり取りを遮るように、そう挨拶をしたイザベラ様は、社交上手だという噂とは打って変わった冷たい声に、こちらを分析するような鋭い目線を投げ掛けてきた。
「ユリアーナ・ジルコニアです。
寛大だなんて、大袈裟ですわ」
その噂とは異なるイザベラ様の態度に、少し瞑目してしまったが、すぐに笑顔で切り返せたのは、お茶会の特訓の産物だろう。
向かい合う椅子に2人が腰掛ける。
ナタリア様の表情は、困惑の表情。
対して、イザベラ様は相変わらずこちらを値踏みするかのような表情。
一卵性双生児でも、これだけ挙動が違えば分かりやすいものだと感心しながら2人を見つめる。
勿論、笑顔の仮面は被ったままで。
「それで、私に何のご用がおありなのですか?」
私が空気を読まずに本題へと突入したことに、ナタリア様は分かりやすく動揺し怯えるような様子だったが、イザベラ様に大きな態度の変化はなかった。
うん、明らかにイザベラ様の方が策士だ。
今回の件も恐らくイザベラ様が主導しているに違いない。
そう判断した私は、手っ取り早く主導している方へ注意を向ける。
短慮だと言われてもしょうがない。
何せ時間が時間だ。
家族を心配させる事態は避けたい。
いえ、お母様に叱られるのが恐いとか、そんなこと全然思ってません…よ?うん。
「お話くださいますか、イザベラ様?」
脳裏に浮かんだ、怒りで般若のようになるお母様の顔にお尻を叩かれ、イザベラ様へ向き合う。
イザベラ様は、唇を軽く引き結び、こちらをじっと見つめる。
私が見つめ返すその先で、膝の上でドレスのスカートをぎゅっと握るイザベラ様に、ナタリア様がすがるように手を重ねる。
それは、イザベラ様を止めようとしているのか、後押しをしているのか、判断はできなかった。
イザベラ様は考えを纏めるように、ぎゅっと瞳も閉じる。
そして、その瞳が開かれたとき、そこには確固たる決意と、すがるような色合いが入り交じっていた。
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