40 / 62
聖なる森と月の乙女
公爵令嬢と事の真相
しおりを挟む
「神官だっただけあって、各国の神書には結構精通しているんですよ。
中でも特殊な能力を持つ月の乙女には、大層興味が引かれましてね。
まさか、本当に会えるとは思っていませんでしたが。」
「…、なぜリーぜが月の乙女だと?」
ニコニコと話すルナベルト様に、お兄様が思案顔で問い掛ける。
「なぜなら、癒しと退魔の能力があること、術の発動を何らかの方法で感知できるのは、歴代の月の乙女が共通して有していた能力だからです。
それに加えて、これはこちらの国の神書を研究して分かったことですが、昨日ティアリーゼ様が行った魂を浄化させる能力は、月の導きと言って、初代月の乙女が有していた能力でした。
これまでの記録では、その能力を持った月の乙女がいなかったことを考えると、ティアリーゼ様は歴代の中でも初代に匹敵するほど高い能力を有していると考えても良いでしょう。」
「…では、婚約者の方のご病気が月の雫でしか治らないというのは?」
嘘だったのですか、と謀られたことへの憤りと悲しさで言葉が震える。
「まさか!それは本当ですよ。
私の婚約者こそが、ルナマリア・クリスチナ公爵令嬢なのですから。」
それに、とルナベルト様は目を伏せて苦笑しながら言葉を続ける。
「ルナマリアを助けたくて、各国の神書という神書を漁り始めたのです。」
その言葉に、一瞬でもルナベルト様を疑ってしまったことに罪悪感を感じる。
ごめんなさい、と小さく謝ると、ルナベルト様はゆるゆると首を振って答えた。
「いいえ、こちらが最初に騙すような真似をしたのですから、疑われても当然です。
それに、あなたから頂いた回復薬をルナマリアに飲ませたら、大分調子が戻ってきたそうで、今までベッドに起き上がるのがやっとだったのに、庭に散歩に出られるほど元気が出たと、手紙に書いてありました。
ティアリーゼ様にはとても感謝しているのです。」
「まぁ…!それは良かったですわ!」
気にかけていただけあって、回復を聞いた瞬間、パアッと一気に気持ちが明るくなるとともに、ほっこりと胸が温かくなった。
「お礼に、是非とも我が国に来ていただいて、おもてなしをさせていただきたいと、ルナマリアと話しているのです。」
「是非お伺いしてみたいですわ!
ルナマリア様ともお会いしたいですもの。」
今度こそ本物の友達を作るのだと意気込む私の隣から、もう大分定番になってきた冷気がすっと漂ってくる。
まさかと思って隣を見上げると、アルフレッドは完全な無表情だが、瞳は鋭くルナベルト様を見据えていた。
「…………もちろん、アルフレッド殿もご一緒に。」
ルナベルト様が口元を引き攣らせながら、そう付け足した隣で、お兄様が乾いた笑いをしていた。
ーーーーーー
その後の話し合いで、帝国と公国との間に不可侵条約が締結され、ルナベルト様が即位した後には同盟を結ぶこと、私の能力は秘匿とすること、秘薬の解毒剤の情報を公国側へ提供すること、人材育成のために定期的に交換留学制度を設けることが定められた。
緑豊かである公国は、それ故に他国から狙われつつあったが、帝国と友好関係を作ることでそれを牽制できる。
帝国内の不穏分子の勢いも少しは殺ぐことができるだろう。
これからルナベルト様がどう帝国を立て直していくのか楽しみだとアルフレッドが期待に目を輝かせていた。
なんだかんだ、ルナベルト様を認めているアルフレッドが可愛くて、少し笑ったのは内緒だ。
しかし、帝国内の平定のためにはアビゲイルの処遇が大きな鍵となることは間違いない。
2国間でどのような決議がなされるのか、全ては明日決まる…。
中でも特殊な能力を持つ月の乙女には、大層興味が引かれましてね。
まさか、本当に会えるとは思っていませんでしたが。」
「…、なぜリーぜが月の乙女だと?」
ニコニコと話すルナベルト様に、お兄様が思案顔で問い掛ける。
「なぜなら、癒しと退魔の能力があること、術の発動を何らかの方法で感知できるのは、歴代の月の乙女が共通して有していた能力だからです。
それに加えて、これはこちらの国の神書を研究して分かったことですが、昨日ティアリーゼ様が行った魂を浄化させる能力は、月の導きと言って、初代月の乙女が有していた能力でした。
これまでの記録では、その能力を持った月の乙女がいなかったことを考えると、ティアリーゼ様は歴代の中でも初代に匹敵するほど高い能力を有していると考えても良いでしょう。」
「…では、婚約者の方のご病気が月の雫でしか治らないというのは?」
嘘だったのですか、と謀られたことへの憤りと悲しさで言葉が震える。
「まさか!それは本当ですよ。
私の婚約者こそが、ルナマリア・クリスチナ公爵令嬢なのですから。」
それに、とルナベルト様は目を伏せて苦笑しながら言葉を続ける。
「ルナマリアを助けたくて、各国の神書という神書を漁り始めたのです。」
その言葉に、一瞬でもルナベルト様を疑ってしまったことに罪悪感を感じる。
ごめんなさい、と小さく謝ると、ルナベルト様はゆるゆると首を振って答えた。
「いいえ、こちらが最初に騙すような真似をしたのですから、疑われても当然です。
それに、あなたから頂いた回復薬をルナマリアに飲ませたら、大分調子が戻ってきたそうで、今までベッドに起き上がるのがやっとだったのに、庭に散歩に出られるほど元気が出たと、手紙に書いてありました。
ティアリーゼ様にはとても感謝しているのです。」
「まぁ…!それは良かったですわ!」
気にかけていただけあって、回復を聞いた瞬間、パアッと一気に気持ちが明るくなるとともに、ほっこりと胸が温かくなった。
「お礼に、是非とも我が国に来ていただいて、おもてなしをさせていただきたいと、ルナマリアと話しているのです。」
「是非お伺いしてみたいですわ!
ルナマリア様ともお会いしたいですもの。」
今度こそ本物の友達を作るのだと意気込む私の隣から、もう大分定番になってきた冷気がすっと漂ってくる。
まさかと思って隣を見上げると、アルフレッドは完全な無表情だが、瞳は鋭くルナベルト様を見据えていた。
「…………もちろん、アルフレッド殿もご一緒に。」
ルナベルト様が口元を引き攣らせながら、そう付け足した隣で、お兄様が乾いた笑いをしていた。
ーーーーーー
その後の話し合いで、帝国と公国との間に不可侵条約が締結され、ルナベルト様が即位した後には同盟を結ぶこと、私の能力は秘匿とすること、秘薬の解毒剤の情報を公国側へ提供すること、人材育成のために定期的に交換留学制度を設けることが定められた。
緑豊かである公国は、それ故に他国から狙われつつあったが、帝国と友好関係を作ることでそれを牽制できる。
帝国内の不穏分子の勢いも少しは殺ぐことができるだろう。
これからルナベルト様がどう帝国を立て直していくのか楽しみだとアルフレッドが期待に目を輝かせていた。
なんだかんだ、ルナベルト様を認めているアルフレッドが可愛くて、少し笑ったのは内緒だ。
しかし、帝国内の平定のためにはアビゲイルの処遇が大きな鍵となることは間違いない。
2国間でどのような決議がなされるのか、全ては明日決まる…。
1
お気に入りに追加
2,040
あなたにおすすめの小説
殿下、お探しの精霊の愛し子はそこの妹ではありません! ひっそり生きてきましたが、今日も王子と精霊に溺愛されています!
Rohdea
恋愛
旧題:ひっそり生きてきた私、今日も王子と精霊に溺愛されています! ~殿下、お探しの愛し子はそこの妹ではありません~
双子の姉妹のうち、姉であるアリスティアは双子なのに妹ともあまり似ておらず、
かつ、家族の誰とも違う色を持つ事から、虐げられ世間からは隠されてひっそりと育って来た。
厄介払いをしたかったらしい両親により決められた婚約者も双子の妹、セレスティナに奪われてしまう……
そんなアリスティアは物心がついた時から、他の人には見えない者が見えていた。
それは“精霊”と呼ばれる者たち。
実は、精霊の気まぐれで“愛し子”となってしまっていたアリスティア。
しかし、実は本来“愛し子”となるべきだった人はこの国の王子様。
よって、王家と王子は“愛し子”を長年探し続けていた。
……王家に迎える為に。
しかし、何故か王家はセレスティナを“愛し子”だと思い込んだようで……
そんなある日、街でちょっとワケありな様子の男性を助けた事から、
その男性と仲良くなり仲を深めていくアリスティア。
だけど、その人は──
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
【完結】生贄として育てられた少女は、魔術師団長に溺愛される
未知香
恋愛
【完結まで毎日1話~数話投稿します・最初はおおめ】
ミシェラは生贄として育てられている。
彼女が生まれた時から白い髪をしているという理由だけで。
生贄であるミシェラは、同じ人間として扱われず虐げ続けられてきた。
繰り返される苦痛の生活の中でミシェラは、次第に生贄になる時を心待ちにするようになった。
そんな時ミシェラが出会ったのは、村では竜神様と呼ばれるドラゴンの調査に来た魔術師団長だった。
生贄として育てられたミシェラが、魔術師団長に愛され、自分の生い立ちと決別するお話。
ハッピーエンドです!
※※※
他サイト様にものせてます
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
元カノと復縁する方法
なとみ
恋愛
「別れよっか」
同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。
会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。
自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。
表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる