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03 魔導師レイフォード・ラッセン
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レイフォードのお願いはアシュリーだけに見える力を借りたいとのことだった。
目が見えなくなり特にする事もなかったアシュリーはカイルの事もあり快く引き受けた。
詳細をとのことで、魔法省にあるレイフォードの執務室に連れてこられた。
今、部屋にいるのは連れて来たレイフォードとアシュリー、アトラスと元から部屋にいたと思われる赤のオーラを持っているマディという人物だ。
ソファーまで誘導して座らせたアシュリーの前にレイフォードは無作為に選んだ魔術士を数人呼んで立たせた。
アシュリーは
「左から緑、白、赤、赤、緑ですね。大きさは皆さま拳大くらいでしょうか?左から4番目の方が1番大きいです。左から3番目の赤の方は色が少し濁ってらっしゃるように見えます。」
4度目の時にそう言った。今までの3組は色、大きさのみだった。疑われているのだろう事は容易に想像できる。組み替えて何度か同じ人を入れられていただろうからだ。人物は見えなくてもオーラが同じだからわかるのだ。
この赤のオーラの人はオーラが濁っている。
もちろん同じ赤でも人それぞれで微妙に違っていたが、これはそれとは違う。まるで黒いフィルター越しに見るような色だ。
そう伝えた。
少し周りが雑然としていたが、オーラを見るのはそれで終わったようだ。
レイフォードが執務机からソファーに移動してアシュリーの前に座った。
「気がついていたようだが、君の事少しを疑っていた。すまなかった。確かに本物のようだ。」
ぼんやりと見える風景でレイフォードが頭を下げているだろうとわかった。
「頭を上げてください。誰だってこんな話信じられないでしょうから。気にしてません。」
レイフォードの方向に微笑みながら言う。
このオーラを見ている間に、彼の秘書的な役割をしているマディがお茶を入れてくれたようだ。
ぼんやりと見えるが、取っ手の細いカップらしく持ち手が良く見えない。
取っ手を探る為に両手を伸ばし恐々触れる。
「あつっ。」
思ったよりカップが熱かったようだ。ビクッとした瞬間、取っ手にぶつかりカップが傾き手に紅茶がかかった。
マディが拭くものを持ってきてくれた横でアトラスが魔法で火傷を治してくれた。
その後レイフォードがお礼をすると言うので遠慮がちにアシュリーは気になっていた事を言った。
レイフォードはアシュリーがオーラを感じたい触りたいと言い出した時、やっぱり他の令嬢と同じだ。と、意気消沈した。
パーティに出向けば、周りを令嬢達に囲まれ用もなく体をベタベタと触られる。
しかしお礼をすると言ったのは自分なのだ。仕方ない、我慢するしかない。
アシュリーはゆっくりと近づいて恐々とレイフォードに手を伸ばした。
そしてレイフォードに触れないギリギリの距離でアシュリーの顔が花開くように笑顔になった。
「ラッセン様。ありがとうございます。オーラに触れました。といっても形がわかるのではなく温度が感じられるのです。
ラッセン様のオーラはラピス色で少し冷たい印象でしたが、陽だまりのような優しい暖かさです。アトラス様の治療も暖かさを感じました。
オーラの暖かさはきっと魔力や本人の質なのでしょうね。」
レイフォードを見上げてにこっと微笑み手を引っ込める。
てっきりベタベタ触られると思ったレイフォードは拍子抜けした。言わなくてもいいのに聞いていた。
「今のでわかるのか?」
「ラッセン様はオーラが大きくて身体からはみ出てます。だからお願いしたのです。アトラス様の治癒魔法をかけていただいた時に暖かいと感じました。違いがあるのか知りたくなったのです。」
アシュリーはイタズラっぽく笑った。
レイフォードが魔導師として地位を確立したときから今までこんなに気を使わなくて話ができる令嬢は初めてだった。
若い女性は自分を魔導師ではなく、見目麗しい優良な結婚相手としてしか見てくれなかったからだ。
レイフォードはそんなアシュリーの事をもっと知りたいと思った。
「ありがとうございます。ラッセン様、カイルの事はよろしくお願いします。
私のできる事はもうお終いですね。それでは失礼いたします。」
そう言って綺麗な礼をしてくるりと背を向けたアシュリーに
「スナイスター嬢、侍従がいない今1人で戻るのは大変でしょう。案内しますよ。」
そう言ってアシュリーに詰め寄った。
アシュリーは少し困ったような戸惑った表情で
「道案内していただけるというのはありがたいのですが、お仕事中でしょうしご迷惑でしょう?」
「来た方向とは違うところへ行こうとしているのを見て放っておけませんよ。」
するとアシュリーは顔を真っ赤にしてレイフォードには聞こえないように小さく『意地悪』と言い何事もなかった様に
「それではお願いします。」
彼女の小さな囁きも聞こえていたレイフォードは頬が緩むのを止められなかった。
そんなレイフォードの様子をアトラスは唖然として見ていた。
目が見えなくなり特にする事もなかったアシュリーはカイルの事もあり快く引き受けた。
詳細をとのことで、魔法省にあるレイフォードの執務室に連れてこられた。
今、部屋にいるのは連れて来たレイフォードとアシュリー、アトラスと元から部屋にいたと思われる赤のオーラを持っているマディという人物だ。
ソファーまで誘導して座らせたアシュリーの前にレイフォードは無作為に選んだ魔術士を数人呼んで立たせた。
アシュリーは
「左から緑、白、赤、赤、緑ですね。大きさは皆さま拳大くらいでしょうか?左から4番目の方が1番大きいです。左から3番目の赤の方は色が少し濁ってらっしゃるように見えます。」
4度目の時にそう言った。今までの3組は色、大きさのみだった。疑われているのだろう事は容易に想像できる。組み替えて何度か同じ人を入れられていただろうからだ。人物は見えなくてもオーラが同じだからわかるのだ。
この赤のオーラの人はオーラが濁っている。
もちろん同じ赤でも人それぞれで微妙に違っていたが、これはそれとは違う。まるで黒いフィルター越しに見るような色だ。
そう伝えた。
少し周りが雑然としていたが、オーラを見るのはそれで終わったようだ。
レイフォードが執務机からソファーに移動してアシュリーの前に座った。
「気がついていたようだが、君の事少しを疑っていた。すまなかった。確かに本物のようだ。」
ぼんやりと見える風景でレイフォードが頭を下げているだろうとわかった。
「頭を上げてください。誰だってこんな話信じられないでしょうから。気にしてません。」
レイフォードの方向に微笑みながら言う。
このオーラを見ている間に、彼の秘書的な役割をしているマディがお茶を入れてくれたようだ。
ぼんやりと見えるが、取っ手の細いカップらしく持ち手が良く見えない。
取っ手を探る為に両手を伸ばし恐々触れる。
「あつっ。」
思ったよりカップが熱かったようだ。ビクッとした瞬間、取っ手にぶつかりカップが傾き手に紅茶がかかった。
マディが拭くものを持ってきてくれた横でアトラスが魔法で火傷を治してくれた。
その後レイフォードがお礼をすると言うので遠慮がちにアシュリーは気になっていた事を言った。
レイフォードはアシュリーがオーラを感じたい触りたいと言い出した時、やっぱり他の令嬢と同じだ。と、意気消沈した。
パーティに出向けば、周りを令嬢達に囲まれ用もなく体をベタベタと触られる。
しかしお礼をすると言ったのは自分なのだ。仕方ない、我慢するしかない。
アシュリーはゆっくりと近づいて恐々とレイフォードに手を伸ばした。
そしてレイフォードに触れないギリギリの距離でアシュリーの顔が花開くように笑顔になった。
「ラッセン様。ありがとうございます。オーラに触れました。といっても形がわかるのではなく温度が感じられるのです。
ラッセン様のオーラはラピス色で少し冷たい印象でしたが、陽だまりのような優しい暖かさです。アトラス様の治療も暖かさを感じました。
オーラの暖かさはきっと魔力や本人の質なのでしょうね。」
レイフォードを見上げてにこっと微笑み手を引っ込める。
てっきりベタベタ触られると思ったレイフォードは拍子抜けした。言わなくてもいいのに聞いていた。
「今のでわかるのか?」
「ラッセン様はオーラが大きくて身体からはみ出てます。だからお願いしたのです。アトラス様の治癒魔法をかけていただいた時に暖かいと感じました。違いがあるのか知りたくなったのです。」
アシュリーはイタズラっぽく笑った。
レイフォードが魔導師として地位を確立したときから今までこんなに気を使わなくて話ができる令嬢は初めてだった。
若い女性は自分を魔導師ではなく、見目麗しい優良な結婚相手としてしか見てくれなかったからだ。
レイフォードはそんなアシュリーの事をもっと知りたいと思った。
「ありがとうございます。ラッセン様、カイルの事はよろしくお願いします。
私のできる事はもうお終いですね。それでは失礼いたします。」
そう言って綺麗な礼をしてくるりと背を向けたアシュリーに
「スナイスター嬢、侍従がいない今1人で戻るのは大変でしょう。案内しますよ。」
そう言ってアシュリーに詰め寄った。
アシュリーは少し困ったような戸惑った表情で
「道案内していただけるというのはありがたいのですが、お仕事中でしょうしご迷惑でしょう?」
「来た方向とは違うところへ行こうとしているのを見て放っておけませんよ。」
するとアシュリーは顔を真っ赤にしてレイフォードには聞こえないように小さく『意地悪』と言い何事もなかった様に
「それではお願いします。」
彼女の小さな囁きも聞こえていたレイフォードは頬が緩むのを止められなかった。
そんなレイフォードの様子をアトラスは唖然として見ていた。
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