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2 ロベルト
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レノンの婚約者探しやアリエッタの養子先探しの難航など他人事で原因のロベルトは気になっていた子爵家の令嬢アリエッタと距離を縮めていった。
一方、元婚約者のソフィーリアはいつも通りだ。だが、全てが同じではない。
以前ロベルトが彼女の視界の中に入ると笑顔で話しかけに来てくれていた。会話も公式の場以外では親しげな砕けた口調だった。
それが2人の姿を見ても顔を強張らせるでもなく、ただ、ロベルトが視界に入っても近づぎもせず他の貴族令嬢と同じ様に黙礼して去っていくだけだ。
ロベルトから話しかけても態度は今までのように親しみのある話し方はせず終始敬語で話し、視線を合わせない、一歩引くなど王族に対する態度を崩すことがない。
ロベルトのお相手のアリエッタは王都からずいぶん離れた子爵家の一人娘だ。領地に宝石の出る鉱山があり裕福なことと周りに高位貴族がおらず甘やかされて育った。そのせいか人に甘えることが多く表情豊かですぐに気持ちが顔に出る。
深く関わっていなかった時は小柄で幼く見える容姿も甘えたり拗ねるような行動も可愛らしいとロベルトは思っていた。
ソフィーリアは貴族として凛とした立ち振る舞いで甘えられたことなどなかったからアリエッタはロベルトにとって目新しく好意的に映った。
ソフィーリアと婚約解消をしてすぐにアリエッタと恋仲になった。
アリエッタのお願いというわがままを叶えると嬉しそうに笑うのだ。その笑顔が見たくて小さなお願いをどんどん聞いていると、最初は可愛らしく思っていたわがままが増えてきた。王族だからと無理難題を押し付けられる様になっていた。
その頃には抑えていた本性が露わになったという言い方がよく似合う。
そうなるとロベルトはアリエッタと2人でいても8年間も一緒にいたソフィーリアとついつい比べてしまう。
アリエッタは可愛いが手に負えない。ソフィーリアは容姿は整っていて物腰も洗練されたまさに淑女だ。こちらを困らせるわがままなど言われたことがない。それどころか痒いところに手が届くとばかりにロベルトの行動を先読みしてくれていた。彼女と一緒にいて嫌だと思った事はなく、それどころか穏やかで落ち着いていた。と今になって気づく。
まだアリエッタとは恋人になったばかりでこれからだ。と思い直すと同時に今ならアリエッタと別れてソフィーリアと寄りを戻すことができるのではないか?そんな事を考えるようになっていた。
今日も昼休みにアリエッタと食堂で一緒に食事をとる。
だけどおかずが好きなものでなかった。デザートはもっとたくさん食べたい。と憤るアリエッタに自分のデザートを渡してご機嫌を取っていた。
そんな時ソフィーリアを視界の端に捉えた。
ああ、ソフィーリアはいつもこちらを気遣ってくれていた。自分を困らすようなわがままは一切言わなかったなぁ。
ソフィーリアの好物のデザートが出た時、自分の分も彼女に食べてもらおうとしたが、彼女は自分の好きなものを一緒に味わって欲しいと言って2人で食べたのだ。
ソフィーリアの側は居心地が良かった。
そんな昔の楽しかったことを思い出してソフィーリアから目が離せないでいた。するとソフィーリアが振り返り微笑んだ。
一瞬自分に向けられたのか?そう思ったが違っていた。
笑顔の相手は弟のレノンだった。
ソフィーリアはロベルトの婚約者として王宮に出入りしていた。
その際レノンと会う事もあり後々家族となる為ソフィーリアとも親しくしていた。
だが、今はあの頃よりもっと距離感が近いようだ。
ロベルトは気がつけばアリエッタを置き去りにしてレノンとソフィーリアの前に来ていた。
「やあ、兄上どうしたの。何か用?」
レノンのいつにない冷たい声をかけられてハッとした。ここに来て何を言うつもりだったのだ?
「特に用はないんだ。お前が学園でソフィーといるなんて意外だと思って…」
レノンの顔が少し顰められた。
「兄上、もう婚約者ではないのにその呼び方はどうかと思うよ。恋人の前だから誤解を受けないようにラスタード嬢とお呼びした方が良いのでは?」
言葉は丁寧だが怒りが伝わる。確かに考えなしだったかもしれない。そう思って謝ろうとすると
「ロベルトに対してその物言いは失礼よ?ロベルトは第二王子よ。あなたの兄なのよ。
それにそこのアナタ、私たちに挨拶すらできないの?だから婚約破棄されるのよ。」
いつの間にか横に来ていたアリエッタが噛み付きかねない勢いで口を出す。今まで可愛いと感じていた顔は消え失せていっそ醜いまでに顔を歪めて2人を睨みつけている。
それに対してソフィーリアは表情を変えることなく
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。ロベルト第二王子殿下。
そちらのご令嬢もご紹介がされていなかったとはいえ、挨拶が遅れました。私はラスタード侯爵の娘、ソフィーリア・ラスタードでございます。以後お見知りおきを」
と綺麗なカテーシーを披露した。
学園内だから厳しく言われないが、一般のマナーとして高位貴族から声をかけられなければ下位貴族は声をかける事は憚られるのだ。
それ以前に、そもそも紹介されていないのなら知っていても声をかけないのがマナーだ。
アリエッタの行為はそれに反していた。だからこそレノンが黙っていなかった。
「君こそ初対面のしかも王族の僕に対してその口の聞き方は失礼だとは思わないの?
それにソフィーリア嬢への態度もそうだよ。君は子爵令嬢で彼女は侯爵令嬢だよ。
いくら平等をうたっているとはいえ学園内は小さな社交界だというのに。マナーを疑うよ。
特に用事もないようですし、気分が悪いのでこれで失礼します。
行こう、ソフィーリア嬢」
レノンはアリエッタとそれを諌めれないロベルトに不快感を露わにした。ソフィーリアはこちらを気にして退去の挨拶だけしてレノンに腕を引っ張られて行った。
一方、元婚約者のソフィーリアはいつも通りだ。だが、全てが同じではない。
以前ロベルトが彼女の視界の中に入ると笑顔で話しかけに来てくれていた。会話も公式の場以外では親しげな砕けた口調だった。
それが2人の姿を見ても顔を強張らせるでもなく、ただ、ロベルトが視界に入っても近づぎもせず他の貴族令嬢と同じ様に黙礼して去っていくだけだ。
ロベルトから話しかけても態度は今までのように親しみのある話し方はせず終始敬語で話し、視線を合わせない、一歩引くなど王族に対する態度を崩すことがない。
ロベルトのお相手のアリエッタは王都からずいぶん離れた子爵家の一人娘だ。領地に宝石の出る鉱山があり裕福なことと周りに高位貴族がおらず甘やかされて育った。そのせいか人に甘えることが多く表情豊かですぐに気持ちが顔に出る。
深く関わっていなかった時は小柄で幼く見える容姿も甘えたり拗ねるような行動も可愛らしいとロベルトは思っていた。
ソフィーリアは貴族として凛とした立ち振る舞いで甘えられたことなどなかったからアリエッタはロベルトにとって目新しく好意的に映った。
ソフィーリアと婚約解消をしてすぐにアリエッタと恋仲になった。
アリエッタのお願いというわがままを叶えると嬉しそうに笑うのだ。その笑顔が見たくて小さなお願いをどんどん聞いていると、最初は可愛らしく思っていたわがままが増えてきた。王族だからと無理難題を押し付けられる様になっていた。
その頃には抑えていた本性が露わになったという言い方がよく似合う。
そうなるとロベルトはアリエッタと2人でいても8年間も一緒にいたソフィーリアとついつい比べてしまう。
アリエッタは可愛いが手に負えない。ソフィーリアは容姿は整っていて物腰も洗練されたまさに淑女だ。こちらを困らせるわがままなど言われたことがない。それどころか痒いところに手が届くとばかりにロベルトの行動を先読みしてくれていた。彼女と一緒にいて嫌だと思った事はなく、それどころか穏やかで落ち着いていた。と今になって気づく。
まだアリエッタとは恋人になったばかりでこれからだ。と思い直すと同時に今ならアリエッタと別れてソフィーリアと寄りを戻すことができるのではないか?そんな事を考えるようになっていた。
今日も昼休みにアリエッタと食堂で一緒に食事をとる。
だけどおかずが好きなものでなかった。デザートはもっとたくさん食べたい。と憤るアリエッタに自分のデザートを渡してご機嫌を取っていた。
そんな時ソフィーリアを視界の端に捉えた。
ああ、ソフィーリアはいつもこちらを気遣ってくれていた。自分を困らすようなわがままは一切言わなかったなぁ。
ソフィーリアの好物のデザートが出た時、自分の分も彼女に食べてもらおうとしたが、彼女は自分の好きなものを一緒に味わって欲しいと言って2人で食べたのだ。
ソフィーリアの側は居心地が良かった。
そんな昔の楽しかったことを思い出してソフィーリアから目が離せないでいた。するとソフィーリアが振り返り微笑んだ。
一瞬自分に向けられたのか?そう思ったが違っていた。
笑顔の相手は弟のレノンだった。
ソフィーリアはロベルトの婚約者として王宮に出入りしていた。
その際レノンと会う事もあり後々家族となる為ソフィーリアとも親しくしていた。
だが、今はあの頃よりもっと距離感が近いようだ。
ロベルトは気がつけばアリエッタを置き去りにしてレノンとソフィーリアの前に来ていた。
「やあ、兄上どうしたの。何か用?」
レノンのいつにない冷たい声をかけられてハッとした。ここに来て何を言うつもりだったのだ?
「特に用はないんだ。お前が学園でソフィーといるなんて意外だと思って…」
レノンの顔が少し顰められた。
「兄上、もう婚約者ではないのにその呼び方はどうかと思うよ。恋人の前だから誤解を受けないようにラスタード嬢とお呼びした方が良いのでは?」
言葉は丁寧だが怒りが伝わる。確かに考えなしだったかもしれない。そう思って謝ろうとすると
「ロベルトに対してその物言いは失礼よ?ロベルトは第二王子よ。あなたの兄なのよ。
それにそこのアナタ、私たちに挨拶すらできないの?だから婚約破棄されるのよ。」
いつの間にか横に来ていたアリエッタが噛み付きかねない勢いで口を出す。今まで可愛いと感じていた顔は消え失せていっそ醜いまでに顔を歪めて2人を睨みつけている。
それに対してソフィーリアは表情を変えることなく
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。ロベルト第二王子殿下。
そちらのご令嬢もご紹介がされていなかったとはいえ、挨拶が遅れました。私はラスタード侯爵の娘、ソフィーリア・ラスタードでございます。以後お見知りおきを」
と綺麗なカテーシーを披露した。
学園内だから厳しく言われないが、一般のマナーとして高位貴族から声をかけられなければ下位貴族は声をかける事は憚られるのだ。
それ以前に、そもそも紹介されていないのなら知っていても声をかけないのがマナーだ。
アリエッタの行為はそれに反していた。だからこそレノンが黙っていなかった。
「君こそ初対面のしかも王族の僕に対してその口の聞き方は失礼だとは思わないの?
それにソフィーリア嬢への態度もそうだよ。君は子爵令嬢で彼女は侯爵令嬢だよ。
いくら平等をうたっているとはいえ学園内は小さな社交界だというのに。マナーを疑うよ。
特に用事もないようですし、気分が悪いのでこれで失礼します。
行こう、ソフィーリア嬢」
レノンはアリエッタとそれを諌めれないロベルトに不快感を露わにした。ソフィーリアはこちらを気にして退去の挨拶だけしてレノンに腕を引っ張られて行った。
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