2 / 6
2 ロベルト
しおりを挟む
レノンの婚約者探しやアリエッタの養子先探しの難航など他人事で原因のロベルトは気になっていた子爵家の令嬢アリエッタと距離を縮めていった。
一方、元婚約者のソフィーリアはいつも通りだ。だが、全てが同じではない。
以前ロベルトが彼女の視界の中に入ると笑顔で話しかけに来てくれていた。会話も公式の場以外では親しげな砕けた口調だった。
それが2人の姿を見ても顔を強張らせるでもなく、ただ、ロベルトが視界に入っても近づぎもせず他の貴族令嬢と同じ様に黙礼して去っていくだけだ。
ロベルトから話しかけても態度は今までのように親しみのある話し方はせず終始敬語で話し、視線を合わせない、一歩引くなど王族に対する態度を崩すことがない。
ロベルトのお相手のアリエッタは王都からずいぶん離れた子爵家の一人娘だ。領地に宝石の出る鉱山があり裕福なことと周りに高位貴族がおらず甘やかされて育った。そのせいか人に甘えることが多く表情豊かですぐに気持ちが顔に出る。
深く関わっていなかった時は小柄で幼く見える容姿も甘えたり拗ねるような行動も可愛らしいとロベルトは思っていた。
ソフィーリアは貴族として凛とした立ち振る舞いで甘えられたことなどなかったからアリエッタはロベルトにとって目新しく好意的に映った。
ソフィーリアと婚約解消をしてすぐにアリエッタと恋仲になった。
アリエッタのお願いというわがままを叶えると嬉しそうに笑うのだ。その笑顔が見たくて小さなお願いをどんどん聞いていると、最初は可愛らしく思っていたわがままが増えてきた。王族だからと無理難題を押し付けられる様になっていた。
その頃には抑えていた本性が露わになったという言い方がよく似合う。
そうなるとロベルトはアリエッタと2人でいても8年間も一緒にいたソフィーリアとついつい比べてしまう。
アリエッタは可愛いが手に負えない。ソフィーリアは容姿は整っていて物腰も洗練されたまさに淑女だ。こちらを困らせるわがままなど言われたことがない。それどころか痒いところに手が届くとばかりにロベルトの行動を先読みしてくれていた。彼女と一緒にいて嫌だと思った事はなく、それどころか穏やかで落ち着いていた。と今になって気づく。
まだアリエッタとは恋人になったばかりでこれからだ。と思い直すと同時に今ならアリエッタと別れてソフィーリアと寄りを戻すことができるのではないか?そんな事を考えるようになっていた。
今日も昼休みにアリエッタと食堂で一緒に食事をとる。
だけどおかずが好きなものでなかった。デザートはもっとたくさん食べたい。と憤るアリエッタに自分のデザートを渡してご機嫌を取っていた。
そんな時ソフィーリアを視界の端に捉えた。
ああ、ソフィーリアはいつもこちらを気遣ってくれていた。自分を困らすようなわがままは一切言わなかったなぁ。
ソフィーリアの好物のデザートが出た時、自分の分も彼女に食べてもらおうとしたが、彼女は自分の好きなものを一緒に味わって欲しいと言って2人で食べたのだ。
ソフィーリアの側は居心地が良かった。
そんな昔の楽しかったことを思い出してソフィーリアから目が離せないでいた。するとソフィーリアが振り返り微笑んだ。
一瞬自分に向けられたのか?そう思ったが違っていた。
笑顔の相手は弟のレノンだった。
ソフィーリアはロベルトの婚約者として王宮に出入りしていた。
その際レノンと会う事もあり後々家族となる為ソフィーリアとも親しくしていた。
だが、今はあの頃よりもっと距離感が近いようだ。
ロベルトは気がつけばアリエッタを置き去りにしてレノンとソフィーリアの前に来ていた。
「やあ、兄上どうしたの。何か用?」
レノンのいつにない冷たい声をかけられてハッとした。ここに来て何を言うつもりだったのだ?
「特に用はないんだ。お前が学園でソフィーといるなんて意外だと思って…」
レノンの顔が少し顰められた。
「兄上、もう婚約者ではないのにその呼び方はどうかと思うよ。恋人の前だから誤解を受けないようにラスタード嬢とお呼びした方が良いのでは?」
言葉は丁寧だが怒りが伝わる。確かに考えなしだったかもしれない。そう思って謝ろうとすると
「ロベルトに対してその物言いは失礼よ?ロベルトは第二王子よ。あなたの兄なのよ。
それにそこのアナタ、私たちに挨拶すらできないの?だから婚約破棄されるのよ。」
いつの間にか横に来ていたアリエッタが噛み付きかねない勢いで口を出す。今まで可愛いと感じていた顔は消え失せていっそ醜いまでに顔を歪めて2人を睨みつけている。
それに対してソフィーリアは表情を変えることなく
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。ロベルト第二王子殿下。
そちらのご令嬢もご紹介がされていなかったとはいえ、挨拶が遅れました。私はラスタード侯爵の娘、ソフィーリア・ラスタードでございます。以後お見知りおきを」
と綺麗なカテーシーを披露した。
学園内だから厳しく言われないが、一般のマナーとして高位貴族から声をかけられなければ下位貴族は声をかける事は憚られるのだ。
それ以前に、そもそも紹介されていないのなら知っていても声をかけないのがマナーだ。
アリエッタの行為はそれに反していた。だからこそレノンが黙っていなかった。
「君こそ初対面のしかも王族の僕に対してその口の聞き方は失礼だとは思わないの?
それにソフィーリア嬢への態度もそうだよ。君は子爵令嬢で彼女は侯爵令嬢だよ。
いくら平等をうたっているとはいえ学園内は小さな社交界だというのに。マナーを疑うよ。
特に用事もないようですし、気分が悪いのでこれで失礼します。
行こう、ソフィーリア嬢」
レノンはアリエッタとそれを諌めれないロベルトに不快感を露わにした。ソフィーリアはこちらを気にして退去の挨拶だけしてレノンに腕を引っ張られて行った。
一方、元婚約者のソフィーリアはいつも通りだ。だが、全てが同じではない。
以前ロベルトが彼女の視界の中に入ると笑顔で話しかけに来てくれていた。会話も公式の場以外では親しげな砕けた口調だった。
それが2人の姿を見ても顔を強張らせるでもなく、ただ、ロベルトが視界に入っても近づぎもせず他の貴族令嬢と同じ様に黙礼して去っていくだけだ。
ロベルトから話しかけても態度は今までのように親しみのある話し方はせず終始敬語で話し、視線を合わせない、一歩引くなど王族に対する態度を崩すことがない。
ロベルトのお相手のアリエッタは王都からずいぶん離れた子爵家の一人娘だ。領地に宝石の出る鉱山があり裕福なことと周りに高位貴族がおらず甘やかされて育った。そのせいか人に甘えることが多く表情豊かですぐに気持ちが顔に出る。
深く関わっていなかった時は小柄で幼く見える容姿も甘えたり拗ねるような行動も可愛らしいとロベルトは思っていた。
ソフィーリアは貴族として凛とした立ち振る舞いで甘えられたことなどなかったからアリエッタはロベルトにとって目新しく好意的に映った。
ソフィーリアと婚約解消をしてすぐにアリエッタと恋仲になった。
アリエッタのお願いというわがままを叶えると嬉しそうに笑うのだ。その笑顔が見たくて小さなお願いをどんどん聞いていると、最初は可愛らしく思っていたわがままが増えてきた。王族だからと無理難題を押し付けられる様になっていた。
その頃には抑えていた本性が露わになったという言い方がよく似合う。
そうなるとロベルトはアリエッタと2人でいても8年間も一緒にいたソフィーリアとついつい比べてしまう。
アリエッタは可愛いが手に負えない。ソフィーリアは容姿は整っていて物腰も洗練されたまさに淑女だ。こちらを困らせるわがままなど言われたことがない。それどころか痒いところに手が届くとばかりにロベルトの行動を先読みしてくれていた。彼女と一緒にいて嫌だと思った事はなく、それどころか穏やかで落ち着いていた。と今になって気づく。
まだアリエッタとは恋人になったばかりでこれからだ。と思い直すと同時に今ならアリエッタと別れてソフィーリアと寄りを戻すことができるのではないか?そんな事を考えるようになっていた。
今日も昼休みにアリエッタと食堂で一緒に食事をとる。
だけどおかずが好きなものでなかった。デザートはもっとたくさん食べたい。と憤るアリエッタに自分のデザートを渡してご機嫌を取っていた。
そんな時ソフィーリアを視界の端に捉えた。
ああ、ソフィーリアはいつもこちらを気遣ってくれていた。自分を困らすようなわがままは一切言わなかったなぁ。
ソフィーリアの好物のデザートが出た時、自分の分も彼女に食べてもらおうとしたが、彼女は自分の好きなものを一緒に味わって欲しいと言って2人で食べたのだ。
ソフィーリアの側は居心地が良かった。
そんな昔の楽しかったことを思い出してソフィーリアから目が離せないでいた。するとソフィーリアが振り返り微笑んだ。
一瞬自分に向けられたのか?そう思ったが違っていた。
笑顔の相手は弟のレノンだった。
ソフィーリアはロベルトの婚約者として王宮に出入りしていた。
その際レノンと会う事もあり後々家族となる為ソフィーリアとも親しくしていた。
だが、今はあの頃よりもっと距離感が近いようだ。
ロベルトは気がつけばアリエッタを置き去りにしてレノンとソフィーリアの前に来ていた。
「やあ、兄上どうしたの。何か用?」
レノンのいつにない冷たい声をかけられてハッとした。ここに来て何を言うつもりだったのだ?
「特に用はないんだ。お前が学園でソフィーといるなんて意外だと思って…」
レノンの顔が少し顰められた。
「兄上、もう婚約者ではないのにその呼び方はどうかと思うよ。恋人の前だから誤解を受けないようにラスタード嬢とお呼びした方が良いのでは?」
言葉は丁寧だが怒りが伝わる。確かに考えなしだったかもしれない。そう思って謝ろうとすると
「ロベルトに対してその物言いは失礼よ?ロベルトは第二王子よ。あなたの兄なのよ。
それにそこのアナタ、私たちに挨拶すらできないの?だから婚約破棄されるのよ。」
いつの間にか横に来ていたアリエッタが噛み付きかねない勢いで口を出す。今まで可愛いと感じていた顔は消え失せていっそ醜いまでに顔を歪めて2人を睨みつけている。
それに対してソフィーリアは表情を変えることなく
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。ロベルト第二王子殿下。
そちらのご令嬢もご紹介がされていなかったとはいえ、挨拶が遅れました。私はラスタード侯爵の娘、ソフィーリア・ラスタードでございます。以後お見知りおきを」
と綺麗なカテーシーを披露した。
学園内だから厳しく言われないが、一般のマナーとして高位貴族から声をかけられなければ下位貴族は声をかける事は憚られるのだ。
それ以前に、そもそも紹介されていないのなら知っていても声をかけないのがマナーだ。
アリエッタの行為はそれに反していた。だからこそレノンが黙っていなかった。
「君こそ初対面のしかも王族の僕に対してその口の聞き方は失礼だとは思わないの?
それにソフィーリア嬢への態度もそうだよ。君は子爵令嬢で彼女は侯爵令嬢だよ。
いくら平等をうたっているとはいえ学園内は小さな社交界だというのに。マナーを疑うよ。
特に用事もないようですし、気分が悪いのでこれで失礼します。
行こう、ソフィーリア嬢」
レノンはアリエッタとそれを諌めれないロベルトに不快感を露わにした。ソフィーリアはこちらを気にして退去の挨拶だけしてレノンに腕を引っ張られて行った。
140
お気に入りに追加
629
あなたにおすすめの小説
幼馴染の公爵令嬢が、私の婚約者を狙っていたので、流れに身を任せてみる事にした。
完菜
恋愛
公爵令嬢のアンジェラは、自分の婚約者が大嫌いだった。アンジェラの婚約者は、エール王国の第二王子、アレックス・モーリア・エール。彼は、誰からも愛される美貌の持ち主。何度、アンジェラは、婚約を羨ましがられたかわからない。でもアンジェラ自身は、5歳の時に婚約してから一度も嬉しいなんて思った事はない。アンジェラの唯一の幼馴染、公爵令嬢エリーもアンジェラの婚約者を羨ましがったうちの一人。アンジェラが、何度この婚約が良いものではないと説明しても信じて貰えなかった。アンジェラ、エリー、アレックス、この三人が貴族学園に通い始めると同時に、物語は動き出す。
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?
のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。
両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。
そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった…
本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;)
本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。
ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?
お久しぶりですね、元婚約者様。わたしを捨てて幸せになれましたか?
柚木ゆず
恋愛
こんなことがあるなんて、予想外でした。
わたしが伯爵令嬢ミント・ロヴィックという名前と立場を失う原因となった、8年前の婚約破棄。当時わたしを裏切った人と、偶然出会いました。
元婚約者のレオナルド様。貴方様は『お前がいると不幸になる』と言い出し、理不尽な形でわたしとの関係を絶ちましたよね?
あのあと。貴方様はわたしを捨てて、幸せになれましたか?
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
ハイパー王太子殿下の隣はツライよ! ~突然の婚約解消~
緑谷めい
恋愛
私は公爵令嬢ナタリー・ランシス。17歳。
4歳年上の婚約者アルベルト王太子殿下は、超優秀で超絶イケメン!
一応美人の私だけれど、ハイパー王太子殿下の隣はツライものがある。
あれれ、おかしいぞ? ついに自分がゴミに思えてきましたわ!?
王太子殿下の弟、第2王子のロベルト殿下と私は、仲の良い幼馴染。
そのロベルト様の婚約者である隣国のエリーゼ王女と、私の婚約者のアルベルト王太子殿下が、結婚することになった!? よって、私と王太子殿下は、婚約解消してお別れ!? えっ!? 決定ですか? はっ? 一体どういうこと!?
* ハッピーエンドです。
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
6月8日、HOTランキング1位にランクインしました。たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる