54 / 57
その扉の先は7
しおりを挟む
「おい、桜庭。」
「......ん?」
愛先輩と錦のバトルを見ていた俺に、少しの吐息。
小声で名前を呼びながら、俺の袖の端をくいくいと引っ張る会長に振り返る。振り返りながらーー、
え、ちょっとまって。なに、それ。
真面目な顔でなにやってんの。
なにその、可愛い動き。
と思ったけれど、口には出さない。
こんなこと思ったなんて知られたら引かれかねない。
「こいつらがバカやってる内に廊下に出るぞ。愛に捕まったらめんどくせぇ。」
「あ、うん。分かった。」
一つ頷き、会長の手を握りなおす。途端、ぽっ、と赤くなった耳に口元が緩むのが止められない。
愛先輩と錦の横を静かに歩いて、廊下に出る。会長と手を繋いでいた方の右手。
いきなり離れた会長の手に、残念な気持ちになりながら小さく息をはく。その時、
............え。なにこれ。
冷静になって見えたのは、生徒会室を取り囲むように、ずらりと並ぶ生徒たち。
少し様子がおかしいな、と観察してみればすごく嬉しそうな子、大量の涙をながしながらこちらを見ている子もいる。
なにこれ。全く状況がつかめ......、ーーあれ。
「............。」
ふと目についた、新聞のような紙に視線が釘付けになる。
それは会長も同じ様で、二人無言のままこの状況を整理する。
あれは、この学園の校内新聞ではなかっただろうか。
その月の行事や、行われた行事の結果。なにか重大なことでも起これば、1日に何号でも印刷される新聞。
それがどうして今?
そこまで考えて去年同室者だったやつの顔が浮かぶ。
そうだ。悠のやつ、さっき生徒会室でカシャカシャと不気味な音を鳴らしていた。その後、なぜか一瞬居なくなってて、......まさか。
「......犬飼か。」
会長の声に、大きく頷く。怒りや恥ずかしさやらで、引いていった熱がまたもや復活しそうだ。
「あの、」
「ぇ?」
生徒たちの集団のなかから一人、見覚えのある顔。
たしか会長の親衛隊の子だった気がする。
小さく震える左手には、あの新聞が握られている。きっと、あることないこと書かれているんだろうなぁ、と思いつつ身体を引いて会長の肩を押す。
会長を前に押し出す形で、自分は後ろに。二人のやりとりを見守ろうとしていた矢先。あのっ、っと。
2回目の呼び声に、後ろから顔を出す。
「あ、あのっ! ぼくっ、会長様ではなくて桜庭様にお話があってっ。」
「え、あ......うん。」
てっきり会長に用事があると思っていたから、驚きつつ足を動かす。
会長の視線が一瞬、頼りなく揺れたのが見えてこの先の展開が予想できてしまった。
「あの、」
親衛隊とは、その人を崇拝する者。その人を尊敬する者。その人を守りたい者。その人が好きな者。
そんな人たちが入る組織で、その人たちは皆一様にその人が好きで。見返りを求める者。そうでない者。そんな違いはあっても、その人を大事に思っているこは変わらない。
だから。
彼が俺の目の前に立っている理由も、その身体が震えている理由も、いまにもこぼれ落ちそうな涙を目にいっぱい浮かべている理由も。
分かる気がした。
「......ん?」
愛先輩と錦のバトルを見ていた俺に、少しの吐息。
小声で名前を呼びながら、俺の袖の端をくいくいと引っ張る会長に振り返る。振り返りながらーー、
え、ちょっとまって。なに、それ。
真面目な顔でなにやってんの。
なにその、可愛い動き。
と思ったけれど、口には出さない。
こんなこと思ったなんて知られたら引かれかねない。
「こいつらがバカやってる内に廊下に出るぞ。愛に捕まったらめんどくせぇ。」
「あ、うん。分かった。」
一つ頷き、会長の手を握りなおす。途端、ぽっ、と赤くなった耳に口元が緩むのが止められない。
愛先輩と錦の横を静かに歩いて、廊下に出る。会長と手を繋いでいた方の右手。
いきなり離れた会長の手に、残念な気持ちになりながら小さく息をはく。その時、
............え。なにこれ。
冷静になって見えたのは、生徒会室を取り囲むように、ずらりと並ぶ生徒たち。
少し様子がおかしいな、と観察してみればすごく嬉しそうな子、大量の涙をながしながらこちらを見ている子もいる。
なにこれ。全く状況がつかめ......、ーーあれ。
「............。」
ふと目についた、新聞のような紙に視線が釘付けになる。
それは会長も同じ様で、二人無言のままこの状況を整理する。
あれは、この学園の校内新聞ではなかっただろうか。
その月の行事や、行われた行事の結果。なにか重大なことでも起これば、1日に何号でも印刷される新聞。
それがどうして今?
そこまで考えて去年同室者だったやつの顔が浮かぶ。
そうだ。悠のやつ、さっき生徒会室でカシャカシャと不気味な音を鳴らしていた。その後、なぜか一瞬居なくなってて、......まさか。
「......犬飼か。」
会長の声に、大きく頷く。怒りや恥ずかしさやらで、引いていった熱がまたもや復活しそうだ。
「あの、」
「ぇ?」
生徒たちの集団のなかから一人、見覚えのある顔。
たしか会長の親衛隊の子だった気がする。
小さく震える左手には、あの新聞が握られている。きっと、あることないこと書かれているんだろうなぁ、と思いつつ身体を引いて会長の肩を押す。
会長を前に押し出す形で、自分は後ろに。二人のやりとりを見守ろうとしていた矢先。あのっ、っと。
2回目の呼び声に、後ろから顔を出す。
「あ、あのっ! ぼくっ、会長様ではなくて桜庭様にお話があってっ。」
「え、あ......うん。」
てっきり会長に用事があると思っていたから、驚きつつ足を動かす。
会長の視線が一瞬、頼りなく揺れたのが見えてこの先の展開が予想できてしまった。
「あの、」
親衛隊とは、その人を崇拝する者。その人を尊敬する者。その人を守りたい者。その人が好きな者。
そんな人たちが入る組織で、その人たちは皆一様にその人が好きで。見返りを求める者。そうでない者。そんな違いはあっても、その人を大事に思っているこは変わらない。
だから。
彼が俺の目の前に立っている理由も、その身体が震えている理由も、いまにもこぼれ落ちそうな涙を目にいっぱい浮かべている理由も。
分かる気がした。
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
BL学園の姫になってしまいました!
内田ぴえろ
BL
人里離れた場所にある全寮制の男子校、私立百華咲学園。
その学園で、姫として生徒から持て囃されているのは、高等部の2年生である白川 雪月(しらかわ ゆづき)。
彼は、前世の記憶を持つ転生者で、前世ではオタクで腐女子だった。
何の因果か、男に生まれ変わって男子校に入学してしまい、同じ転生者&前世の魂の双子であり、今世では黒騎士と呼ばれている、黒瀬 凪(くろせ なぎ)と共に学園生活を送ることに。
歓喜に震えながらも姫としての体裁を守るために腐っていることを隠しつつ、今世で出来たリアルの推しに貢ぐことをやめない、波乱万丈なオタ活BL学園ライフが今始まる!
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
アリスの苦難
浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ)
彼は生徒会の庶務だった。
突然壊れた日常。
全校生徒からの繰り返される”制裁”
それでも彼はその事実を受け入れた。
…自分は受けるべき人間だからと。
総受けなんか、なりたくない!!
はる
BL
ある日、王道学園に入学することになった柳瀬 晴人(主人公)。
イケメン達のホモ活を見守るべく、目立たないように専念するがー…?
どきどき!ハラハラ!!王道学園のBLが
今ここに!!
俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!
しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎
高校2年生のちょっと激しめの甘党
顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい
身長は170、、、行ってる、、、し
ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ!
そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、
それは、、、
俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!!
容姿端麗、文武両道
金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい)
一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏!
名前を堂坂レオンくん!
俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで
(自己肯定感が高すぎるって?
実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して
結局レオンからわからせという名のおしお、(re
、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!)
ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど
なんとある日空から人が降って来て!
※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ
信じられるか?いや、信じろ
腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生!
、、、ってなんだ?
兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる?
いやなんだよ平凡巻き込まれ役って!
あーもう!そんな睨むな!牽制するな!
俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!!
※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません
※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です
※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇♀️
※シリアスは皆無です
終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる