王様のナミダ

白雨あめ

文字の大きさ
上 下
28 / 57

生徒会室と風紀副委員長2

しおりを挟む

会長の金色に隠れた耳がほんのり赤い。……きがする。
あえて、そこから目をそらしてカップに口をつける。

席に戻って小さく。小さく息を吐き出した。

「桜庭。」

「ん?」

「お前、なんでここにいんだ。」

「え? なんでって。......なんでだろう。」

「てめぇ、」

「あーっ、うそうそ。会長のお手伝いだよ。お手伝い。風紀も結構暇だからさ。会長に会いにきてるっていうのもあるけど。」

ホント半分、ウソ半分。

会長に会いたいというのは本音だけど、風紀が暇というのはまったくのでたらめだ。
午前中はこうやって会長の手伝いが出来るけど、午後には風紀室に戻らなくてはいけいない。

あの転校生がくるまでは比較的暇な時も多かったのに、あの子が来てから風紀に暇はない。

冬至なんてそろそろ、あの転校生を闇討ちでもするんじゃないかと見てるこっちが心配になる。

「なんで、......なり。」

「え?」

もごもごと小さい会長の声を拾って首をかしげる。

もう一度、の意味をこめて会長を見つめるも、彼はもう口を開いてはくれないらしい。

肩を落とす俺へ代わりに届いたのは、3回のドアノック。

会長の返事を受けて開かれたドアに、さらに深く肩を落としそうになる。

「失礼......、します。理巧、なんでこいつがここいにいるんだよ? てめぇもなんで生徒会室なんかにいるんだよ。あ?」

「愛先輩、こんにちは。」

「こんにちは、じゃねぇよ! 質問に答えろ! 質問にっ!」

指をびしっと指して俺を睨んでくる愛先輩は、今日もその童顔を歪めてご立腹らしい。
本当に俺は嫌われてるなぁ、と思うけど俺自身どうしてこんなに嫌われているのか分からない。

この関係が中学の中頃で始まったというのは覚えているけれど。

「おい、愛。うるせぇ。」

「うるせぇとはなんだ! うるせぇとはっ。俺は理巧にも怒ってんだけど!」

「はあぁ。」

「ため息つくな!」

めんどくさそうに頭に手をやる会長に愛先輩の声がとぶ。
一目みて仲がいいと分かる二人に嫌な気持ちが募っていく。

これまでは全く感じなかった、身体が重くなるような感情。それと同時に、


あぁ、いいなぁ。


純粋にそう思った。

「あっ、今日はハンバーグだぞ。俺の手作り。」

「いらねぇっていってんだろうが。」

「だってお前、もってこないと食わねぇじゃん! 身体に悪いだろうが!」

「そうだよ。ちゃんと食べなよ。身体にもよくないよ。」

「パクってんじゃねぇよ!」

「美味しそうですね。」

愛先輩が机に置いたパックのなか、久しぶりにみたハンバーグは本当に美味しそうだ。愛先輩が料理ができるとは思わなかった。

顔だけみれば美少女だけど、口を開いたら............、あれだしね。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

僕の王子様

くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。 無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。 そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。 見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。 元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。 ※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。

もういいや

senri
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが…… まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん! しかも男子校かよ……… ーーーーーーーー 亀更新です☆期待しないでください☆

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

華麗に素敵な俺様最高!

モカ
BL
俺は天才だ。 これは驕りでも、自惚れでもなく、紛れも無い事実だ。決してナルシストなどではない! そんな俺に、成し遂げられないことなど、ないと思っていた。 ……けれど、 「好きだよ、史彦」 何で、よりよってあんたがそんなこと言うんだ…!

王子様と魔法は取り扱いが難しい

南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。 特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。 ※濃縮版

王道学園なのに会長だけなんか違くない?

ばなな
BL
※更新遅め この学園。柵野下学園の生徒会はよくある王道的なも のだった。 …だが会長は違ったーー この作品は王道の俺様会長では無い面倒くさがりな主人公とその周りの話です。 ちなみに会長総受け…になる予定?です。

眠るライオン起こすことなかれ

鶴機 亀輔
BL
アンチ王道たちが痛い目(?)に合います。 ケンカ両成敗! 平凡風紀副委員長×天然生徒会補佐 前提の天然総受け

処理中です...