王様のナミダ

白雨あめ

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犬猿の仲の2人3

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会長が俺の言葉で止まってくれた。驚きだ。
いったい、どうしたというんだろう。

これはもう、彼の体調不良を疑うレベルだが。


バン、と机をなにかで叩きつけたような音がする。冬至だ。
会長の睨みから既に回復していたのか、ソファーに腰掛けた冬至は、険しい表情を浮かべ、会長を睨み付ける。

おそらく机に叩きつけたのであろう紙の束の反対の手には、会長の飲みかけのコーヒー。

「おい、貴様。人に出してもらったものをこんなに残すとは何事だ。ここを出ていくんなら、全部胃のなかに納めていけ。もったいないだろう。」

険しい表情を浮かべ、もっともなことを言う冬至は正真正銘立派な風紀委員長に見える。

だが、その実。
ただ会長が口をつけたコーヒーを、自分が掃除した給水場で処理したくないというのがその本音だろう。
能力、容姿、家柄、ともに類まれなるものをもっているためか、なぜかこの2人は波風立てずに関わるということができないのだ。

会長は冬至の言葉に舌打ちをひとつ。やはり良家でもお残しはよくないとされているのか、たんたんとコーヒーを受け取る会長。苦渋の決断であることは顔をみなくてもわかる。
普段あの二人があんなに近づくことはない。揃って、学園の一二を争う美形のせいか、その光景はどこぞの画のように美しい。

「おい、どうしたんだ。」

いつまでもカップを握り、口をつけない会長に焦れたのか、冬至の不審な声がとぶ。
一体どうしたというのか。

それに、会長は一瞥をくれると、酷くゆっくりそのカップを傾けた。


「......っ!」


あつい、という顔。これぞ正しく顔に書いてある、というやつだ。
会長、猫舌なんだ。それなら言ってくれればいいのに。
さっきもコーヒー飲むの大変だったよね。

「はっ。なんだ、貴様。猫舌なのか? あの生徒会長様がコーヒーもろくに飲めない猫舌なんてな。」

「うっせぇよ。カスが。」

「なんだ、貴様。いつも生徒会室で飲むときは、息を吹きかけて冷まして飲んでいるのか? はっ、それはさも見物だろうな。天下の生徒会長様がふーふーとは。」

先程、やられた分の腹いせか。
いつにも増して、会長を攻める言葉の数々にいい気はしない。

「ふっ。黙りか。まぁ、いいんじゃないか。猫舌というのは、なんの罪にもならないんだからな。」

なぜか、反論しない会長にも腹がたつ。いいじゃないか、猫舌。
俺は猫結構すきだけどな。

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