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パートナーになれたみたいです 3 *

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「魔力というのはな、奪い合うことができる」
 今日の座学でアーレン様は、そんなことを説明しました。「俺がお前の魔力を奪うこともできるし、その逆もしかりだ。そういう意味で、魔力は無尽蔵とも言える」
「すごいですね!」
「言っておくが魔力は生命力と同義だ。使いすぎたり、今言ったように奪われることで一度に少なくなりすぎると、気を失うどころか生命ごと失う」
 つまり『若返りの薬』はトキネの魔力を一度にすべて使う必要がある技術なんだと――
 アーレン様は言いました。そのため、命も失うことになる、と。
「……お、恐ろしいですね……」
 改めてぞっとします。
 逆に魔力を回復させるには、休むことが一番。あるいは魔力が豊富な人に魔力を譲ってもらうこと。
 アーレン様は「よく理解しておけ」と私を見つめながら、
「俺はお前に魔力を自覚させるためにお前に魔力を送り込んでいるが、あのときはお前の魔力になじむようにしている。そしてなじんだ時点ですでに俺の魔力ではない。ああすることで、お前の魔力量が増えることになるんだ」
「え? アーレン様の魔力じゃなくて、ですか?」
「そうだ。お前の魔力となるんだ。俺の体に戻せば別だが」
 その一方で。アーレン様の講義はまだ続きます。
「最初にお前とやったときのように、わざと魔力が混ざり合わないよう……反発するように注ぎ込むこともできる。反発する状態の魔力を注ぎ込まれると、魔力は悪い意味で乱される。魔力が逆流すると暴走が始まる。だから逆流だけは避けなければならない」
 む、難しい。魔力って絶対私の頭の許容量を超えてる。
 でも……悪い意味で乱される。
 ということは、いい意味で乱されることもあるということ。それは――
「さて」
 アーレン様は開いていた本をぱたんと閉じました。
 あ……実技の時間の合図です!
 王宮でのパーティに備えて、アーレン様は座学よりも実技をよく行うようになりました。
 実技、と言っても、アレです。いつかやった、向き合っててのひら同士を合わせて魔力を感じる、あの作業です。
 毎日何回もそれを行ううち、私はこれが好きになっていました。
「始めるぞ」
「はい!」
 アーレン様と向き直り、わくわくした声で私が返事をすると、アーレン様は眉をひそめました。
「なぜそんなに楽しそうなんだ」
「だって好きなんですもんこれ! とっても気持ちいい!」
 ゆるやかな波に身をゆだねているようなものです。ざぶんざぶんと波は優しく私に降りかかって、私はその中にたゆたっている。本当に気持ちいいんですよ!
 しかも最近は、アーレン様の魔力を私の体に通わせたりもするようになりました。
 そうするとアーレン様の魔力も私の魔力とは別の波となって、私を心地よく揺らしてくれるんです。
 そう、今さっき考えた『いい意味で乱される』はきっとこのこと。
 魔力はゆったりと混ざり合っていく。まるで、アーレン様とひとつになるようで嬉しい。
 え、エッチな意味じゃありませんよ!

 まあ実際には、そうやってわざと乱した魔力を私が自分で整えるという、文字通り『制御』の授業なので、のんびり流れに浸ってる場合ではないんですが。

「………」
 アーレン様はあごに手をやり、私をじっと見ました。何でしょう? どこか悪戯な目です。
「……そうだな。お前もこれにずいぶん慣れた。少し上の段階へ行くか」
「ほへ?」
「こっちへ来い」
 手を差し出され、私は反射的にその手を握りました。
 するとアーレン様は私を引っ張り――くるんと私の体を反転させて、すとんとアーレン様のお膝に座らせたのです。
 ひえええ! いつぞやのあの体勢ですかあああ!
 アーレン様は私のお腹に手を回してぐっと私を抱きしめます。前のときより力が強い! 完全に密着してるぅぅぅ!
 じ、実は私たちはあの日以降、エッチなことをしていません。
 あの日、魔力の流れを感じながら行為をしたことで痛みはまったくなかったのですが、何しろ行為そのものも、魔力の流れにあそこまで触れたのも初めてだったもので、疲労で私の体が悲鳴を上げたのです。
 実技が増えたのはそのせいもありました。魔力の流れを自覚し、流れを制御することに『慣れる』、そのことが本当に大事だとアーレン様に言い聞かせられて。
 魔力の流れを知ることは、魔力を操ることへの第一歩。
 でもでも、エッチなことをされるとそれどころじゃなくなっちゃうんです! たしかに魔力がすごく分かりやすく感じられましたけれども!
 硬直していると、耳元でくす、とした笑い声。
「お前、今、期待しただろう?」
「――ッ、ア、アーレン様の意地悪っ!」
 くすくすと笑いながら、アーレン様のなめらかな指先が私の唇をなぞります。
 もうそれだけでぞくぞくする。「口を開けて」と耳元で囁かれ、私の唇は勝手に開いてしまいました。
 するりと、アーレン様の指先が私の口の中へ。
「……っ、……!」
 私は声にならない声を上げて身もだえしました。しかしアーレン様は左腕でがっちり私の体をホールドしています。
 侵入してきた指先で、彼は私の舌を撫でたり挟んだり、もてあそぶ――
「ア、アーレン、ひゃま」
「動揺するな。このまま自分の魔力だけに集中してみろ」
「ひょ、ひょんなあ」
「何があっても心を落ち着かせて自分の魔力を暴走させない訓練だ。やってみろ」
 何があってもって、こんないやらしい事態そもそもアーレン様が相手のとき以外ありえませんよね!?
 でも……動揺しているときに魔力を、というのはたしかに難しい。一瞬頭が真っ白になって、魔力の感じ方を忘れてしまいました。
(お、落ち着いて、落ち着いて)
 アーレン様の指が私の口内をまんべんなくつつつと這っていく。……だめ! そっちに気を取られちゃだめ!
 私は必死で意識を魔力に集中させました。
 波を思い出して。魔力の端を掴んで。
 うん。――よしっ、見えた!
 動揺のせいで荒れている波を、いつもの通りに穏やかな波にして。
「へひまひた!」
 訳:できました! 魔力の流れを整えましたよ! 口の中にいる悪戯鬼に勝ちましたよ!
「思ったより早かったな」
 アーレン様は指を引き抜きました。あ……少し寂しい。
 でも今アーレン様もちょっとつまらなそうだった気がします。だったらもっとしてくれてもいいのに、な、なんて。
 口の中が熱いです。火種がくすぶっているみたい。
 でも私は、何事もなかったかのように笑顔を作って、
「さ、次はなんですか!?」
 とアーレン様を促しました。
「……今日はお前に、術をひとつ教えるつもりだったんだが」
 アーレン様は私のうなじの後ろで、ぼそりとつぶやきました。
 え、術!? 初めて魔法を教えてもらえるの!?
 魔力は制御のほうが大切だから、今までひたすら魔力の流れを知り、それを整えることに終始していたのですが――
「その前にもう少し、強い刺激でやってみるか?」
 耳たぶをふうっと吹かれて。
 アーレン様は私の太ももを撫でました。私は体を震わせました。
 強い……刺激? それって……もしかして。
 ドキドキと胸が高鳴り、期待感で体がうずきます。
 あの夜のエッチ以来、一度も触れてもらってない。“恋人”になったのにそれがちょっと寂しかった私は、心のどこかでやっぱり期待せずにいられなかったんです。
「アーレン様、私……」
 我ながら切なそうな声が出た気がします。もじもじと足を揺らして、私は太ももを撫でるアーレン様の手に応えました。
「魔力修行――だからな」
 耳元で悪戯な声。ああもう絶対そんなつもりじゃない!
 私のお師匠様は最初に思っていたより厳格じゃなかったみたいです。でもそれも、恋人と認めてくれたからかな?
 するりと、スカートの中に手がすべりこみます。内股を撫でるアーレン様の手からは、たしかに魔力の波動を感じました。
 反応して、私の魔力が揺らぎます。私はあえて、魔力をそのままにしました。今は魔力よりも、アーレン様の手を感じていたい――
 内股をつつと伝った指はやがて私の下着に隠された秘部へ。
 つう、となぞりあげられて、私はあえぎました。
 彼は下着を横にずらし、直接私の秘所に触れます。その割れ目からは今まさにとろりと蜜があふれたところで、アーレン様はそれを指に塗りました。そしてぬかるみの中へと、ゆっくり差し込んでゆきます。
 ああ――アーレン様の指先からくる魔力が熱い。
 私の魔力を乱そうとしているのが分かります。抜き差ししながら、先端からは微量の魔力が放出されて、私を女としても魔法士としても狂わそうとしていました。
 くちゅくちゅとあっと間に音まで鳴り始めるそこ。ああ、私って本当に濡れやすいんですね。改めて恥ずかしいです!
「……アーレン様は……」
「ん。どうした」
「……こ、こんなに濡れる女は、お嫌いですか……」
 以前のエッチでひとつだけはっきりしたことがあります。この人、彼女いない歴年齢のくせに絶対初めてじゃない! と。
 嫉妬で苦しんだ夜もありました。でもアーレン様ほどの顔と地位の持ち主なら、遊んでくれる女の人などたくさんいたはず。仕方がない。仕方がないんです!
 それに、だからこそ『恋人』と認めてもらえたことに意義があると思ってからは、少しだけ気持ちが軽くなりました。
 そんなわけで……たくさん女性を知っているはずの彼にとって、私の体は満足できるものなのかどうか、今はそれが不安なんです。
 私がぼそぼそと尋ねた事柄を、アーレン様は呆れた声で一蹴しました。
「つまらんことを気にするな。お前がいやらしい女だということは、最初に触れた瞬間から分かってる」
「!」
「――それでも俺はお前をパートナーにすると言ったが、何か不満か?」
「アーレン様ぁ」
 私は体をひねって無理やりアーレン様に抱きつきました。ちょうど私のお腹を抱く腕から力が抜けていたのでできたことですが、我ながら無理な体勢です。
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