月闇の扉

瑞原チヒロ

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第一章 その日、青い光が飛んだ。

35 ユキナ

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『面白い……何て面白いのかしら。あれだけ朱雀の術を撒き散らしておきながら、玄武の≪虚無≫を使ってくるなんて! わたくし初めて目にしてよ、わたくし以外にその組み合わせの≪印≫を持つ者を――!』

 少女の瞳は、蠱惑的こわくてきな輝きをもってシグリィを眺め回した。

 二人の間にはそれなりの距離があるというのに、少女の瞳はこれ以上ないほどはっきりとシグリィにも見える。

 呑み込まれそうな、闇そのものの色。

 だがその瞳の迫力より何より、シグリィの意識を捉えたのは、少女の言葉だった。

 〝わたくし以外に〟。

(……予想通り、か)

 鳥の姿のときから感じていた。敵が、朱雀の力だけではなく玄武の力も持ち合わせている可能性を。

 根拠と言われると、彼自身もそうだからとしか言いようがないが――

 だから、他の二体にそうしておきながら、肝心のあの鳥には≪虚無≫を使わなかったのだ。玄武の術者同士がまともに力をぶつけ合うのは危険だった。ただでさえ、滅多なことでは発揮しない方がよい能力なのである。

(鳥の姿を保つのに使っている力が、朱雀の術だけで助かった)

 もしもあの少女が、あらかじめ鳥の身に玄武の結界術か何かを施していたなら、シグリィにとってこの上ない不利だった。

 それがなかったことが幸運だ。もっとも、少女がそれをしなかったことが意外だというわけでもない。
 彼の知る限り、二つ以上の≪印≫を持つ稀な者たちも、大抵はそのうちひとつの能力だけを使う。どうしても得手不得手というものがあるらしい。

 ――少女がシレジアの人間であるのなら、朱雀の術に特化しているのはごく自然のこと。

 空中に身を置いたまま、少女は悠然とドレスを揺らす。

 鳥の姿であったときよりも、ずっと脆弱そうな体つきの少女でありながら。
 その身に宿す力の量は、鳥のときと比べ物にならない。

 少女が指先を少し動かすだけで、空気そのものの流れが変わりそうだった。多分、彼女にその気があったなら本当にそうなったのだろう――

 しかし、しなやかな指先を顎にかけて嫣然えんぜんと歳に似合わぬ笑みを広げる少女は、むやみに力を誇示するつもりはないようだった。
 今シグリィが感じ取っているものは、それこそ彼女にとって抑えがたい、呼吸ほどに当たり前の力の欠片なのかもしれない。

(強い)

 シグリィは胸中で、ただそう呟いた。

 少女はそんなシグリィを見て、軽く小首をかしげた。

『おかしいですわね……あなた、そうしているとどの≪印≫の気配もしない。どういうことなのかしら?』

 まるで好奇心の塊の子供のように、無邪気な声音で。

「どういうことでもない。力の使いすぎで弱っているというところかな」

 軽口で応答すると、ころころと笑い声が返ってきた。

『よく言うわ、まだまだ空っぽにはほど遠いくせに。うふふ、いいわ――自分から秘密を言いたくなるまで追いつめてあげる』

 優雅に片手で空気を薙いで。

 ふわり、とドレスの裾をなびかせながら、少女は言った。もちろん分かっているのでしょう――? と。

『――わたくしのこの体は本体じゃなくってよ。あくまでも分身――本体よりもずっと力が劣るわ。でも大丈夫、あなたに勝機が生まれるほど弱く作ってもいないもの。せいぜいあがいてわたくしを楽しませてちょうだい』

 簡単に死ぬことは、許さない。

 幼さと妖艶さの同居する顔つきのまま、少女は。
 闇色の瞳に――残酷なほど純粋な輝きを、見せた。


『さあいらっしゃい! 遊んであげるわ……!』


『――悪いけど、そこまでにしてくれるかな』


 突如として割り込んできた声は、張り詰めていた糸を軽やかに弾くような、そんな悪戯な響きをはらんでいた。

 予想外の揺さぶりに緊張がかき乱される。闇の気配に塗りこめられようとしていた場の空気が、ふっと緩む。

 シグリィは背後から――洞穴の入口から――聞こえる声に耳を傾けた。知らない声だ――

『楽しそうで結構だね。でも天気も悪くなってきているんだし、そろそろ家に帰ったら? かわいいお嬢ちゃん』

 挑発。
 それは強者に向けて行うには、あまりにも危険な行為。

 だがその一方で――みるみると顔色を変えた闇の少女の様子に、シグリィはこれも有効な手だと納得した。

 泰然としていた少女から、一切の余裕が消える。どうやら挑発だけが理由ではなかったようだ。この距離で分かるほどに真っ赤に顔を染めた少女が、わなわなと全身を震わせる。殺意のほとばしる瞳。紅をはいたような鮮やかな唇から、きしんだ声が漏れた。

――っ! っ! なぜ生きている! なぜまたわたくしの前に姿を現す……!』

 唸るような声に、獰猛な響き。
 ほんの数秒前まで無邪気に鈴の音を転がしていた唇が、別人のもののように犬歯を覗かせる。

 シグリィは少女から目を逸らさなかった。美しい少女が憎悪に歪んだ顔をむき出しにするそのさまを、一瞬たりとも逃さなかった。

 少女はまるで空に向かって吼えるように、腹の底から叫び声を上げた。

『――! お前はわたくしが殺したのよ、わたくしが、この手で……!』



 獣の咆哮のような叫びが外に轟いた、まさにその一瞬。

「―――っ!」

 カミルの腕の中で、ラナーニャが目を覚ました。

「――あ――」

 喘ぐように、細い喉が鳴る。うお、とジオが勢い込んで少女の顔を覗き込んだ。

「大丈夫か、嬢ちゃん!」

 カミルはジオを視線で制した。

 ――ラナーニャの様子がおかしい。

「……リー……」

 色を失った唇が震えている。言葉は今にも消え入りそうな、儚い響きで。

「……リー……ディナ……」

 うつろな瞳が虚空を見つめている。その目尻から、つうと零れ落ちたのは――涙。



『残念だけど、それはわたしの半身の方だね』

 洞穴の入口から聞こえる声は、吼える少女に何ら動じることもなく、告げた。

『わたしは。リーディナは生き別れた双子の片割れだ』

 そして、唄うような口調の娘はなぜか、嬉しそうに声を立てて笑った。

『そうかあ。見間違えるほど似ているんだね。まあ当たり前なんだけど――そうかあ』

 それなら、良かった。

 シグリィは初めて振り返った。いきり立つ闇色の少女から視線を外すのは危険だと冷静に考えながらも、そうせずにはいられなかった。

 洞穴の中には今、女性はラナーニャしかいなかったはずだ。ならばこの声の主は誰なのか――

(ユキナという名の女性は)

 洞穴の入口、外にぎりぎり出ない位置に、彼女はいた。
 狭いはずのその部分に労せず立っていられるほど、細身の娘。

(――もう死んでいると)

 長い檸檬レモン色の髪。
 夕焼け色の瞳。

 シグリィの視線に気づき、少し年上に見えるその女性は、ふわりと笑みを咲かせた。

 空からは訝し気な声が、独り言のような形で降ってくる。

『双子……? 双子ですって? そんな話は聞いたことが』

『そうだろうね。だってごく小さいうちにわたしは両親に連れられてシレジアを出たから。リーディナは親戚の家に預けたはずだけど――まあ、誰もわたしの話はしたがらなかったんじゃないかな。リーディナだって、迂闊うかつには口にできなかったんだろう』

『何の話をしているのかしら? まるで貴女は忌み嫌われる存在だったかのような言い方ね』

 ほんの少し冷静さを取り戻したのか、闇色の少女が傲然と顎をそらす。

 彼女は気づいていないのだ。今、目の前にいる夕焼け色の瞳を持つ女性ひとはその身に朱雀の気配をさせているから。

 だが――シグリィは知っている。
 ユキナという名の人は、ということを。

(≪印≫がなかったから、国を追われたのか)

 いかに〝慈愛の女神〟が守護するシレジア国といえども、≪印≫のない者を簡単に受け入れることはできなかったのだ。

 しかしユキナは――ユキナと名乗る女性は、そんな過去など微塵も感じさせない泰然とした様子でそこにいる。シグリィは彼女の姿を知らなかったが、伝え聞く前村長のイメージ――加えて日誌を読んで思い描いたそれと今目の前にいる人とは、見事に合致していた。

 合致しすぎなほどに。

 ユキナはシグリィを見る。その目と指先が、何かを合図している。それを視線だけで追ったシグリィは――

 急にくるりと向きを変えた。空でドレスを揺らし続ける少女に向かって。

御灯明みあかしよ!」

 短縮した詠唱、本来は周囲を照らすための魔術の光が凝縮され、闇色の瞳に真っ向から叩き付けられる。

『―――っ!!!』

 少女は両手で顔を覆った。一瞬、その体がぐらりと傾く。翼を貫かれた鳥のように落下しそうになった少女は、しかし強引に空に留まった。姿勢までは整えられない――目を押さえて悶えながら、呪いの言葉を吐く。

 その言葉が詠唱となり、あちこちで爆発が起こった。どれもこれもシグリィたちとは見当違いの場所だ。とは言え闇雲やみくもに連発した術が全て失敗せずに発動成功している時点で、やはり並の力量ではないのだが。

 ユキナが洞穴の中に姿を消す。

 それを追って、シグリィもそこへ駆け込んだ。滑り込むと同時にもう一度振り返り、入口に今度こそ力をこめて結界を張る。時間をかけて構成する余裕はないが、今までの即席よりはずっと強固だ。

「シグリィ様」

 カミルの声がした。彼がそれ以上言うより早く、

「私は大丈夫だ。ラナーニャは――」

 シグリィはカミルたちの元へ走り寄った。

 そしてそこで、うつろを見つめ涙を流す少女を見た。

「ラナーニャ?」
「……先ほどから誰かを呼んでいるようです。おそらくリーディナという名の人を」

 カミルがそう言った。リーディナ。それはユキナの片割れのことか――

 答えを求めてユキナを見る。

 ユキナは答えなかった。ただ表情だけで、シグリィを促している。

 横を見れば、ジオは途方に暮れた顔で首を振っていた。

 膝をつき、シグリィは呼びかけた。

「ラナーニャ、私だ。分かるか?」

 力なく地面に落ちていた少女の手が、ぴくりと反応した。

「……シ、グ……リィ……?」

 生気のなかった瞳に、ぽつりと小さな光が灯る。

 曖昧だった焦点がシグリィを捉えた。シグリィはうなずいて、垂れ下がったラナーニャの手を左手で取った。

「そうだ。大丈夫か?」

 その手を軽く包むように握る。彼女の手は応えるように指を動かす。

 意識が戻ってよかった。シグリィのことが分かるのなら、また記憶の混乱を起こしたわけでもないようだ。

 ほっとしたのも束の間、岩山が外からの乱暴な力に揺さぶられ、ラナーニャの目覚めに安堵した体を無理やり緊張に落とし込んだ。

 シグリィは自分が張った結界の方を見やり、まだ破られていないことを確認した。

(時間の問題か――ここからどうする)

『ねえ君。シグって言うの?』

 彼を洞穴に戻した張本人が、ようやく口を開いた。ユキナという名のその人がシグリィに対してまともに口を利くのは、これが初めてだ。

「正しくはシグリィです。貴女は?」

『わたしはユキナだよ。わたしのことは知ってるんだよね? ふうん、シグ、リィ、かあ』

 ユキナは面白そうに彼をしげしげと見る。

『〝シグ〟。ひょっとしてシレジアの建国王の名前から取ったんじゃないのかな?』

「……まあその通りですが。今はそれどころじゃない」

 一度戦闘から離脱したことで、忘れていた脇腹と右手の痛みがじわじわと蘇り始めている。

 そもそも右手の止血をしていない。ラナーニャを抱いたままのカミルがいち早くそれに気づき、ジオに頼んで薬草や布の入った道具袋を持って来させた。

 そのジオの手から道具袋をさらったのは、ユキナだった。

『結構重要なことだよ? わたしは君が何者かを知りたい。シレジアの関係者なら大歓迎だ』

 相変わらずの唄うような口調でそう言いながら、手早く応急処置のための道具一式を取り出し――
 シグリィも目を見張るほどの手際のよさで、彼の右手に処置を施していく。

「――私のことより、貴女の方が問題でしょう、ユキナさん」

『そうだね。簡単に述べるなら、わたしはすでに死んだ人間で、今ここにいるわたしは朱雀の具現術のたまもの――言ってみれば幻だ。一応仮の意思があるけれど、その根本はわたし自身じゃない。術者のわたしの両親と、ちょうど接続の鍵になってくれたジオの』

 海の男を一瞥し、

『――彼らの中にある〝ユキナ〟という人間のイメージ。それが形になったんだね』

 急に名前を出され、ジオがうろたえた。

「お、俺もかよ?」

『そうだよ。ジオって死人が生き返るとか考えたことないよね? 生き返ったら嬉しいとか、生き返ったら怖いとか、想像したこともないんじゃない?』

「ねえよ。ありえねえよ。人間ってのは死んだら月の向こうに呑まれるもんで、〝迷い子〟以外の姿で戻ってくるなんざ――いや今のお前を否定するわけじゃねえがよ――」

『ううん、それでいいんだ。だからわたしはこんなにも形がはっきりした。感覚もあるし、物に触れる。おまけに生きていたときの記憶も持ってる。それらは全部、ジオがそういう風にわたしのことを思い描いたからだよ』

 これがチェッタ辺りだったら、とユキナはおかしそうに笑う。

『チェッタは昔「ユーレイが怖い」って夜にわめいていたことがあるし、逆にメリィだったら、女神のように神秘的な存在に想像してくれていただろうね。そんな姿になってみるのも一興だけど』

 シグリィの手当てを終え、すっくと立ち上がる。

『でも、今この状況では、やっぱりこの姿で生まれることができてよかったと思う。――ねえシグ』

 どうやら呼び方をそう決めたらしい、ユキナは膝をついたままだったシグリィを見下ろした。

 ずっと軽やかだった表情を、初めて真剣に引き締めて。

『頼みがあるんだ。君ならできるだろう――わたしの存在を、あの女の子を倒すための力に変えてほしい』 
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