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ある夜の秘め事

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「…………はぁ……んっ、あん」

「あっ」

「ああん、殿下ぁ」

「あ、ん」

 隣室から漏れ聴こえてくる甘い声に、わたしは焦った。

 えーーーー!!

 丸聞こえなんですけどっっっ。


『しばらくは、隣室に侍女たちの誰かが泊まってくれないか』


 皇太子殿下に、そう告げられ、今夜はわたしが離宮の泊まり当番で……。

 仕事も片付いたし、やることないし、昼間に殿下や翠妃様に教えてもらったこの国の話でも、まとめて日記かメモに残すかー、と、机に向かっていた時だった。

 今日は夜風が気持ちよく、だから窓を開けていたのが良くなかったか……。

 まさか、隣室の窓も開いていて?

 だとすると、こちらの音も丸聞こえになるのかしら?

「あん、あんっ……くふぅん」

 子犬の泣くような、押し殺したような妃の声。

 さっきから、翠妃様の声だけが聞こえて。

「やぁんっ、おっぱい……そんなふうに、しないでぇ……はぁん」

「あ」

「んっ」

「かわいいよ。ほら、ここ、こんなに固くなってきたよ」

 あ、これは殿下の声。

 な、何が固くなって来たんでしょ……。

 ちょっと、わたし、日記とか書いている場合じゃないですよ!!?

 だからといって、立ち上がってこの場を離れるわけにもいかず。

 物音を立ててしまったりすると、邪魔しちゃうことになるかしら?

 机の前で、ペンを構えたまま、フリーズするわたし。

「ん、やぁん……あっ、あっ……」

 切な気な声が、夜に響く。

 昨日見た、翠妃の裸体が脳裏に蘇る。
 
 幼く見えて、意外にも胸と腰はむっちりとした、肢体。

 あの時みたいに、また乳首を尖らせているのだろうか。
 

「ああ……っ、んんん、やぁん。
 指、そんなっ、ああ……」

「すごい、もう、ぬるぬるだよ……、こんなにして、かわいいね」

 翠妃の、湿った割れ目に指を這わせているのだろうか。
 それとも、這わせるだけではなく、中に、入れてたり……。

 わたしが、触られているわけではないのに、わたしの下腹部も、なんだか熱く、重く。

 あっ、これ、きっと、濡れてる。
 わたしも、濡ちゃう……。

「ん、はぁん、んん…、ゃぁん、ぁ、ぁん、そんなとこ、なめないでぇ……」

 股を開かれ、毛のない下腹部を顕にされ、舐められているのだろうか。

 自然と、わたしの手も、自分のそこに伸びてゆく。

 触りたい。

 スカートをまくり上げ、下着の上からそっと触れると、すでになかなかの湿り気を帯びていた。

 下着の上から、そっと自分の敏感な部分を撫でる。

 びりびりと、刺激が全身を貫いた。

『あっ……っ』

 漏れそうになる声を、すんでのところでこらえる。

 はぁ、はぁ、と、息が荒くなった。

 もっと、触りたいかも。

 下着の中に手を入れる。

 トロトロになったところに、すっと指が入った。
 指一本じゃ足りないよぉ。

 二本、入れて……、三本は…、あっ、無理、ちょっと怖い。

 はぁ…はぁ…。
 ああ、わたし、何してるんだろ。
 なんで、こんなとこで、こんな恥ずかしいことしてるんだろ。

「愛しいよ、碧。私はずっと君とこうする未来を観てきた」

 甘い声、甘い言葉。
 自分が言われているわけではないのに、脳みそが麻痺するような、不思議な感覚に襲われる。


『――ずっとこうする未来を観てきた』


 最近出会ったばかりだと聞いていたのに?
 ずっと、とは?

 ああ、そういうことだったのか。
 昨日の昼、皇太子が政務を放り出してでも、翠妃の元に行ったのは。

 昼間聞いた、話を思い出す。

 半分異国の血が入った、わたしにすら、あっさりと告げられたのは、驚くべきこの国の秘密だった。

 
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