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事後

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 ――翠の離宮にいるから、湯を使わせてやってくれないか。

 お仕えする皇太子からの命で、離宮に新たな妃を迎えたことを、わたしは知った。
 思えば数日前、離宮を整えておくように命じられた時には、すでに、皇太子の心はほぼ、決まっていたのかもしれない。
 気になっている娘がいるけれども、まだ言葉を交わしたこともないと言ってはいなかったか……。

 まだ明るい、こんな時間に、お風呂に入るということは、まあそういうことなんだろうな。

 ……展開が、早すぎないか?

 5人の妃と両手の指の数では足りないほどの側室を抱える父皇帝とは違って、正妻とおぼしき妃が一人いるだけで、あまり女好きという印象はなかったんだけど。そういえば、その正妻の元にも、あまり通っている気配はなかったし。わりと禁欲的な方なのかとも思っていたけれど。

 まあ、想いを遂げられたなら、よかったです。

 年配の侍女と二人で、離宮に向かう。そこは、歴代の皇太子の妃のために用意された宮だった。こういった離宮が、この宮殿にはいくつかあった。そのほとんどが使われていなかったけれど。

 離宮の一番奥の寝室に、その女性はいた。

 寝台の上に、敷布でとりあえず下半身だけを隠し、しどけなく座っていた。
 ぼんやりと窓の外を眺めながら、わたしたちが部屋に入ってきたのにも気づいていない様子だった。

 女性、というか、まだ少女と言っても良いのではないか。
 栗色のストレートの髪が、乱れたまま、華奢な肩にかかっていた。
 夕日を受けて髪と、白い肩が輝いていた――綺麗だった。
  
「失礼いたします」

 年配の侍女の発した声で、白く華奢な肩がびくっと揺れる。
 少女は、慌てて下半身を隠していた敷布を胸まで掻き上げ、振り向きざまに立ち上がろうとして、何かに気づいたように、自らの足の間のあたりを見、俯いた。

 あーーーー。
 いまは、ちょっと立ち上がりたくないですよね!
 お股が気になっちゃいますよね。

 もじもじしながら、こちらを見、

「お世話になります。
 瑠璃妃様にお使えしております、碧蘭と申します」

 思いの外、凛とした口調で、所属と名前を告げた。

 瑠璃妃――たしか、皇帝の第5皇妃で、一番若い、まだ20歳そこそこの妃ではなかったか。
 皇太子よりも若い妃で、わたしとも大して変わらない。

 でも、もうおそらくこの娘は、今後、瑠璃妃様の元へ戻り仕えることはないだろうな。

「翠妃様と、お呼びしますね」

 離宮の名前が妃の呼名になることは、この国の慣例だった。

 少しだけ驚いた表情をしたけれども、状況は理解できたようで、少女は、こくりと頷く。

 仕える側――正確にはこの娘は侍女ではなく、瑠璃妃の付き人見習いのような、妹分のような立場だとは聞いていたけれど――から、仕えられる立場へ。
 
 一夜(夜ではないけどね!)にして、立場が反転してしまいましたね。

「お湯のご用意ができておりますので、お連れしてもよろしいですか?」

 年配侍女の言に、小さく頷いて、意を決したように、少女は立ち上がろうとした。

「あの…」

 何か言いかけ、幼さの残る顔を赤くして俯く。

 ああ、歩きにくいのかな、と察して、膝まづいて手を差し伸べると、嬉しそうにわたしの手をとった。

「ありがとうございます」

 皇太子が、ここにいてくれたなら、お姫様抱っこでもして、お風呂に連れて行ってくれたのにねー。
 処女を失ったばかりの、愛しい人を置いて、出てゆかねばならなかった皇太子の気持ちを慮ると、少しだけいたたまれない気持ちになった。

 まだ本当なら政務中の時間帯だから、やることやったら、部屋を出ていってしまったんだろうな。しかし、逆に考えると、政務をほったらかしてでも、このお姫様とやりたかったのかな、千載一遇のチャンスだったのかなー。

 わたしたちに、後始末を指示していったのが、皇太子なりの精一杯だったのだろう。

 お股が気になるのか、敷布を押さえていた手がおろそかになり、胸がこぼれた。
 ナイスバディが多い皇帝の妃たちに比べれば(いや、生で見たことはないけどね!)控えめだけど、幼さの残る顔の割には、そこそこ存在感のあるお胸だった。

 ピンクの乳首があらわになっていた。

 事後、30分は経っていると思われるのに、いまだ乳首ははっきりと起立していた。

 ――いっぱい触られたり、吸われたりしたのかな。

 想像してしまう。
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