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暴走

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「…一体何なのだ。」

ピキピキとこめかみの血管が浮き出る。

しかし怒りの元凶であるその男は、ニコニコと俺に笑顔を向けているのだ。

「師匠、お疲れ様です。
ヴィクトリア様と師匠の話をしていたら盛り上がってしまいまして。」

お茶を用意し、お菓子を広げているその光景は、貴族でいうところのお茶会に近い。

「シャガートったら、ゼノの真似をして無愛想にしていたらしいわよ?
確かにゼノに専属騎士として初めて挨拶をした時も素っ気なかったものね。」

「そうなのです。私は師匠のようになりたいのですから真似できるすべてのものは師匠でありたいと思います。しかし、やはり師匠になりきることはできず…
推しを汚してしまう前にこうやって元に戻ることを決めました。」

「うんうん、その方がいいわ。
ゼノの素晴らしさは他の誰にも真似することのできないものだもの。」


「本当にその通りです。
戦場にいた時もキリッとした顔で、次々に敵を倒していく姿はもう…!」

きゃぁきゃぁ言いながら話し込む姿に俺は苦笑いを浮かべた。

「私もそんなゼノの顔が見てみたいわ。さぞ格好いいでしょうね。」

「もちろんです。ああ、師匠の素晴らしさをこうやって理解してもらえる日が来るなんて感無量です。」

「うふふっ。私もこうやって誰かに惚気られる日が来るなんて思わなかったわ。

でもゼノって意外と笑うし優しいのよね。」

「はい。私も実際にお会いしてそう思いました。ヴィクトリア様へ向ける笑顔なんて本当に柔らかく、とても驚きました。

しかも、俺の婚約者に気安く触るな…という台詞は1番キュンときましたね!」

惜しげもなく俺のことを話す2人に
俺がどんどん恥ずかしくなってくるのだ。

しかし、俺の話をしているとはいえ、男と2人でこんなにも楽し気に話されるのは些か腹が立つ。

俺にもあんなに笑いかけないというのに、ぽっと出のサブキャラに可愛い笑顔を振りまくな。と思うのだ。

「……着替えてきます。」

その光景を見たくなかった俺は、修練後のドロドロの軍服を脱ぎに部屋へと戻った。

シャワーを浴びながら考える。

リアは人懐っこく、そして好奇心旺盛だ。
シャガートを近くに置いておくと更に仲良くなってしまうのではないかと不安が襲う。

そしてシャガートがいるせいでなかなかイチャイチャできる時間が持てないのだ。

出来る限りシャガートには何かをやらせ、次に俺が剣技場へと行く時は必ずシャガートも連れて行こうと心に決めた。


別の軍服を着てまたリアの部屋へと向かう。

すると中から声が聞こえた。

「ヴィクトリア様⁈大丈夫ですか⁈」

何やらリアに何かがあったのだと思い、扉をノックすることなく部屋へと入った。

「リア⁈」

部屋に入ると顔を赤く染めたリアが床に座り込んでいる。

やばい。その一言だった。 

すぐさまリアに駆け寄り、シャガートに視線を移す。

「っ。シャガート。とりあえず自分の部屋に戻れ。そしてこの事は誰にも口外するな。いいか、分かったな___。」

言い終わると同時にリアにキスをされる。

そして俺は手遅れだったかと思った。

「リア、しっかりしろ。」

唇に吸い付くリアを離し、声をかける。
自分の胸元にいるリアは瞳が揺れており、トロンとしたオレンジ色の瞳は涙でさらに色っぽい。

「シャガート。部屋ではなく、シャノン卿の所に変更だ。シャノン卿に訳を聞くといい。俺より上手く説明してくれるだろう。いいな?」

早く出て行けと目で訴えれば、
シャガートは困惑しながらもそのまま扉から出て行った。

シャノン卿が生命の樹のことをシャガートに話すのか否かは彼に任せよう。それよりも今俺がすべきなのはリアを助けることだ。

足早に過ぎていく音を聞き、俺は安心し、リアに声をかけた。

「リア。」
生命の樹に乗っ取られるな。
そう思って口づけをする。

毎日スキンシップを取っていたのになぜ暴走したのか。それが分からない。

とにかく今はどうにか正気に戻してやらなければならないと思った。

唇を離し、リアを確認すると、瞳はもう真っ赤になっていた。

「っ!」

「……くっ…ゼノっ…。私よ。」
苦し気に声をかけてきたのはカミーリアだった。

「カミーリア。どうしたらいい⁈」

どうすればリアを助けられるのか、初めて暴走と対面した俺は分からなかった。



「服を…脱いで…?」
カミーリアは俺の第一ボタンに手をかけ、震える指でそれを外した。

俺は直ぐに言われた通りにボタンを外す。

するとカミーリアが俺の首に吸い付いた。

「っ!」
首に痛みが走り、俺は顔が歪んだ。

何度も何度も首元へキスをし、
そのままカミーリアは唇を滑らせた。

「っ…」
俺の肌を食うようにキスを落としていく。そしてやっとカミーリアは口を開いた。

「ごめんなさい。足らなくなってしまったみたいなの。」

少し気を取り戻したカミーリアは俺の肌を舌で舐めていく。

「くっ…。どうしたらリアの気を取り戻せるんだ⁈」

「…ヤらせてくれるのが手っ取り早いのだけれど…」

「は?っ。…それはダメだ。
他に方法はないのか⁈」

それだけはちゃんとリアとしたい。
それはきっとリアも分かってくれるだろう。

「そうよね。シャノンもそれは許してくれなかったわ。だから…



下着したも脱いで?」

リアではないと分かっているが、リアの顔でそんなことを言うなと思った。

ギュッと反応する胸を押さえて口を開く。

「それでリアは戻るのか?」

「ええ。仕方ないの。協力して。」
俺の手を取り、カミーリアは俺をベッドへと入らせた。
カミーリアは急いで厚めのドレスを脱ぎ、薄いドレスだけになった。

「っ。」
脱ぐ姿を初めて見た俺はなぜか見てはいけないような気がして顔を背けた。

「早く脱いで頂戴。」
そう言われれば俺はそれに従うしかない。布団の中でそれらを脱ぐと、カミーリアが布団に潜った。

「見なけりゃセーフって事にしてよね。」

そう言ったカミーリアは、リアの顔に反応した俺を舐め上げた。
「っ。」

感じたことのない快感に俺は少し息が漏れた。

「…嫌なら早く出しちゃいなさい。
シャノンなら3回分必要でしょうけど、ゼノあなたの愛情なら1回分で足りるはずよ。」

シャノン卿と行われていたのはこれだったのかと悔しくなる。カミーリアの意識だとしても、その体はリアのものだ。

「っ。シャノン卿ともこれを?」

「…ったく。集中させなさい。

シャノンがこれをさせてくれたのは1度もないわ。

頑なに拒否されて、シャノンの体をひたすら舐めて凌いでいたの。」

暴走を止めるには愛情がいる。
恋心を持たないシャノン卿はきっと俺よりも大変だったろう。

「っ。」

頭を上下に動かされれば、
俺は顔を顰めた。

徐々にテンポ良く進めていくと、俺の限界はすぐ近いものとなる。

「っ。リア…っ。」
戻れ。戻ってくれ。

名前を呼ぶとリアの手は俺のそれを包み、白濁したものを口で受け止めた。

「はぁっ…リア。」
俺は初めてのその感覚にこめかみを押さえてリアを見た。

口から少し溢れたそれを指ですくい、
リアの喉がゴクリと鳴った。

それを見た俺はゾクっと背中に刺激が走る。

「…やっぱり濃いわね。」
その一言で目の前にいるのはリアではないと認識した。

「カミーリア。リアは___っ」

「朝には目が覚めるわ。
あなたのだって体がわかっているのかしら?凄く疼くのよ。」

そう言って彼女はシャワー室に入り、汗ばんだ体を流して部屋へと戻ってきた。

既にリアの姿は何事もなかったかのように緩いドレスが着せられている。

「明日、起きたリアにはカミーリアわたしが着替えさせたと言っていいわ。きっとドレスが変わったことに驚くでしょうから、安心させてあげて頂戴。」

「…ああ、分かった。」

俺はベッドから出てまた服を着た。


「それより、やっぱりゼノの愛情って凄いのね。こうやってまだ私が意識を保っていられるのだもの。

シャノンとは会話をする時間も無かったわ。」



「…どうして暴走したんだ?」

「私にも分からないわ。
でも確かに足らなくなったの。
前までは足りていたのに…
しかも枯渇するくらいにまでになるなんて。
どこからか力が漏れているような…
そんな感覚なのよ。」

「そうか、今回はたまたまかも知れない。昨日あまりスキンシップを長く取れなかったからな。
次からは気を付けてみるよ。」

「ええ。そうね。」

とりあえず今回のことはシャノン卿に報告しておこうそう考えた。

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