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二章 とんでもないお仕事はじめました

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 そしてあっという間にこの日の守護霊代行の仕事が終わった。



 守護霊代行。
 神様みたいな力はないけれど、ちょっとだけ小さな危険を助けて、人の手助けをする。
 そんな仕事だった。

 
 担当の人間に、存在がバレてはいけない。
 もちろん話しかけることはルール違反。

 この日の反省点といえば……。
 若菜ちゃんに危険が迫ったときに、思わず声をあげてしまったこと。

 結果的に助けることはできたけれど。
 ルール違反をしてしまったことは、しっかり反省しないといけない。


 

「お疲れ様。いろいろあったけど。一応合格です!」

 そういって柊は両手で大きな丸をつくって、にこりと笑った。

「ご、合格?」
「一応、今日は試験も兼ねてましたー」

 えー! 知らなかった。
 あっけらかんというので、驚いてしまう。


「それでさ。上層部から調査結果がきてたよ」
「調査結果?」

 その言葉に、空気が凍るように緊張感が走った。
 だって、調査結果って、私のことだよね?

 早く聞きたいのに、聞くのが怖いような……。
 心臓がバクバクとうるさくなる。



「まずはおめでとう。ここから重要な話……!」

 私はごくりと息を飲んで続きを待った。


「未蘭は死んでないみたい。間違って死後の世界にきてしまったようだな」

 死んでない?
 ということは、また生きて現代に戻れるってこと?

 私はホッと肩を落とした。
 だけど、すぐに疑問が頭に浮かぶ。
 
 どうして死後の世界に迷い込んでしまったんだろう……。
 私がぐるぐると考えていると、柊は話を続けた。

「なんで死後の世界にきてしまったかというと……未蘭の身体は、どうやら仮死状態みたいだ」
「か、仮死状態⁉︎  それって……どういうこと?」

 
 なにがなんだか分からなかった。
 仮死状態?それって、どういうこと!?


「仮死状態は、正式にはまだ身体は生きている。だけど魂が彷徨って、三途の川を渡って死後の世界に迷い込んでしまったみたい」


 ゆっくりと説明してくれるんだけど。
 難しくて首を傾げた。
 そんな私を見て、柊は困ったような顔をして続ける。


「未蘭と出会った場所は、死後の世界と呼ばれているけど。厳密に言うと現世と死後の世界の境界線なんだ。未蘭も見たと思うけど、大きな扉の先が本当の死後の世界ってわけ」
「私の身体は仮死状態で、魂が足を踏み入れてしまったってこと?」
「かなり珍しいことだけど……」

 頭が混乱してきた。
 私の身体は生きてる。だけど、魂はここにあるってことは……。

 
「そ、それって、やっぱり……そのうち、死ぬってこと?」
「今は生きてるけど。魂がこっちに迷い込んでしまってる以上、死は近いっていうことではあるな」

 柊は言いにくそうに、肩を落とした。

 
「死」その言葉がズンと心に重くのようにのしかかる。
 死後の世界にいたときは、覚悟を決めたはずだったけど。

 生きているかもしれないという期待が生まれら、やっぱりまだ生きたいっていう気持ちが強くなった。
 その願いが打ち砕かれたようで、心がぽっきり折れそうだ。

 もう、怖くてたまらないよ。

 うつむく私の顔を柊は両手ではさんだ。そして上へと待ちあげる。
 ぱちっと綺麗な瞳と目があった。

 ふいに目があって、こんな状況なのにドキッと胸が高鳴る。


「まだ落ち込むには早いぞ」
「えっ、」

 両手を私の顔から話すと、にかっと笑った。

「続きがあってだな。未蘭が死亡予定者リストに載っていなかったこと。少女を助けて善意に溢れていること。その点が考慮されて……」
「う、うん」

 私は緊張で手が震えだす。
 ぎゅっと握りしめて前を向いた。
 
「そこに、守護霊代行の人出が足りていない状況が重なって……その結果、守護霊代行の仕事を遂行後、未蘭は現世に戻れるってさ」
「……も、もどれる? ほ、ほんとう?」

 胸がぶわりと熱くなった。

 私、死ななくていいってことは……。
 また、学校でみんなに会えるってことだよね。うれしい……!
 
「特例だってさ。よかったな」
 
 そういって、柊は手のひらを広げて、高くかかげた。
 私より慎重の高い柊の手のひらは届かなくて。

 ぴょんと跳ねて、ぱちんとハイタッチをした。


「ありがとう!」
「俺はなにもしてないよ」

 優しく笑ったあと、思い出したようにハッとする柊。
 
「あ、まだ続きがあった」
「つ、続き?」

 なんだか怖くておそるおそる聞き返す。



「守護霊代行の任務は三人。ちなみに今回の担当者は含まない。だってさ」
「えー! っていうことは、あと三回……」
「そう。明日からは一人で」
「ひ、ひとり?」
 
 急に不安になってきた。
 だって、今日は柊がそばにいてくれていたのに。

 いきなりひとりで守護霊代行の仕事をするだなんて。
 不安で仕方ないよ。


 「不安なのはわかるけど、今日の感じで大丈夫だから、自信持って!」


 両手でガッツポーズをつくってみせた柊を見たら、自然と顔がゆるんだ。
 その優しさに嬉しくなって、不安が広がっていた心が軽くなる。

 



「うん……頑張ってみる」



 不慮の事故により死後の世界に迷い込んでしまった私は、守護霊代行の仕事をすることになった。
 担当する人間はあと3人。

 無事任務を終えることができたら、元の身体に戻れるらしい。

 信じられないような話だけど、今現実に起きていること。
 この不思議な体験は、とんでもないラストを向けることになる……。
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