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二章 とんでもないお仕事はじめました
2-7
しおりを挟むそしてあっという間にこの日の守護霊代行の仕事が終わった。
守護霊代行。
神様みたいな力はないけれど、ちょっとだけ小さな危険を助けて、人の手助けをする。
そんな仕事だった。
担当の人間に、存在がバレてはいけない。
もちろん話しかけることはルール違反。
この日の反省点といえば……。
若菜ちゃんに危険が迫ったときに、思わず声をあげてしまったこと。
結果的に助けることはできたけれど。
ルール違反をしてしまったことは、しっかり反省しないといけない。
「お疲れ様。いろいろあったけど。一応合格です!」
そういって柊は両手で大きな丸をつくって、にこりと笑った。
「ご、合格?」
「一応、今日は試験も兼ねてましたー」
えー! 知らなかった。
あっけらかんというので、驚いてしまう。
「それでさ。上層部から調査結果がきてたよ」
「調査結果?」
その言葉に、空気が凍るように緊張感が走った。
だって、調査結果って、私のことだよね?
早く聞きたいのに、聞くのが怖いような……。
心臓がバクバクとうるさくなる。
「まずはおめでとう。ここから重要な話……!」
私はごくりと息を飲んで続きを待った。
「未蘭は死んでないみたい。間違って死後の世界にきてしまったようだな」
死んでない?
ということは、また生きて現代に戻れるってこと?
私はホッと肩を落とした。
だけど、すぐに疑問が頭に浮かぶ。
どうして死後の世界に迷い込んでしまったんだろう……。
私がぐるぐると考えていると、柊は話を続けた。
「なんで死後の世界にきてしまったかというと……未蘭の身体は、どうやら仮死状態みたいだ」
「か、仮死状態⁉︎ それって……どういうこと?」
なにがなんだか分からなかった。
仮死状態?それって、どういうこと!?
「仮死状態は、正式にはまだ身体は生きている。だけど魂が彷徨って、三途の川を渡って死後の世界に迷い込んでしまったみたい」
ゆっくりと説明してくれるんだけど。
難しくて首を傾げた。
そんな私を見て、柊は困ったような顔をして続ける。
「未蘭と出会った場所は、死後の世界と呼ばれているけど。厳密に言うと現世と死後の世界の境界線なんだ。未蘭も見たと思うけど、大きな扉の先が本当の死後の世界ってわけ」
「私の身体は仮死状態で、魂が足を踏み入れてしまったってこと?」
「かなり珍しいことだけど……」
頭が混乱してきた。
私の身体は生きてる。だけど、魂はここにあるってことは……。
「そ、それって、やっぱり……そのうち、死ぬってこと?」
「今は生きてるけど。魂がこっちに迷い込んでしまってる以上、死は近いっていうことではあるな」
柊は言いにくそうに、肩を落とした。
「死」その言葉がズンと心に重くのようにのしかかる。
死後の世界にいたときは、覚悟を決めたはずだったけど。
生きているかもしれないという期待が生まれら、やっぱりまだ生きたいっていう気持ちが強くなった。
その願いが打ち砕かれたようで、心がぽっきり折れそうだ。
もう、怖くてたまらないよ。
うつむく私の顔を柊は両手ではさんだ。そして上へと待ちあげる。
ぱちっと綺麗な瞳と目があった。
ふいに目があって、こんな状況なのにドキッと胸が高鳴る。
「まだ落ち込むには早いぞ」
「えっ、」
両手を私の顔から話すと、にかっと笑った。
「続きがあってだな。未蘭が死亡予定者リストに載っていなかったこと。少女を助けて善意に溢れていること。その点が考慮されて……」
「う、うん」
私は緊張で手が震えだす。
ぎゅっと握りしめて前を向いた。
「そこに、守護霊代行の人出が足りていない状況が重なって……その結果、守護霊代行の仕事を遂行後、未蘭は現世に戻れるってさ」
「……も、もどれる? ほ、ほんとう?」
胸がぶわりと熱くなった。
私、死ななくていいってことは……。
また、学校でみんなに会えるってことだよね。うれしい……!
「特例だってさ。よかったな」
そういって、柊は手のひらを広げて、高くかかげた。
私より慎重の高い柊の手のひらは届かなくて。
ぴょんと跳ねて、ぱちんとハイタッチをした。
「ありがとう!」
「俺はなにもしてないよ」
優しく笑ったあと、思い出したようにハッとする柊。
「あ、まだ続きがあった」
「つ、続き?」
なんだか怖くておそるおそる聞き返す。
「守護霊代行の任務は三人。ちなみに今回の担当者は含まない。だってさ」
「えー! っていうことは、あと三回……」
「そう。明日からは一人で」
「ひ、ひとり?」
急に不安になってきた。
だって、今日は柊がそばにいてくれていたのに。
いきなりひとりで守護霊代行の仕事をするだなんて。
不安で仕方ないよ。
「不安なのはわかるけど、今日の感じで大丈夫だから、自信持って!」
両手でガッツポーズをつくってみせた柊を見たら、自然と顔がゆるんだ。
その優しさに嬉しくなって、不安が広がっていた心が軽くなる。
「うん……頑張ってみる」
不慮の事故により死後の世界に迷い込んでしまった私は、守護霊代行の仕事をすることになった。
担当する人間はあと3人。
無事任務を終えることができたら、元の身体に戻れるらしい。
信じられないような話だけど、今現実に起きていること。
この不思議な体験は、とんでもないラストを向けることになる……。
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