32 / 93
32 路面店の出店計画(2)
しおりを挟む
(でも……それだと、私のレシピが勝手に使われてしまうかもしれないわ。情報の流出はよくないわよね)
その危険性を考えると、完全に売ってしまうのは考え物だ。
考えあぐねる私の頭に浮かんできたのは、前世の街でよく見かけていたコーヒーチェーン店やコンビニ。
あれは、たしか直営じゃなくてフランチャイズ形式だったのでは……?
フランチャイズなら、ノウハウを保持しながらメニューを提供することが可能なはず。
その対価として、加入費用はもちろんその後も継続的にロイヤリティーを受け取ることができ、マドレーヌや古参の従業員の負担も減る。
店舗の経営に口出しもできるので、一石二鳥じゃないだろうか?
実はテラスカフェの成功を知った近隣のレストランオーナーたちが、パニーニや菓子のレシピを欲しいと言っていたから、需要はあるはずだ。
今後、路面店を出したらそういう要望もさらに高まるに違いない。
「マドレーヌ、いいこと考えたわ!」
私がそう言うと、マドレーヌは首を傾げた。
「どんなことでしょう?」
「売らずに口出しだけできる方法。それには、あなたにまた手伝ってもらわないといけないことが多くなるわ」
彼女は両手を胸の辺りで組み、天を仰いだ。
「あぁ、神様……カタリナお嬢様がまたもや私をこき使おうとしていらっしゃいます! どうか、天のお恵みを与えてくださいますよう……」
「わかった、わかった! ギャラアップね。了解!」
「さっすがお嬢様! 神様よりもお嬢様でございます!」
まったく、守銭奴侍女は調子がいい。
この前、クズ男に私の五分間を売った恨みはまだあるが、いつもこき使いすぎているのもあるから、今のところはおあいこにしてあげよう。
――というわけで、二店舗経営するという激務を短期間に済ますべく、フランチャイズ方式を取り入れる。
路面店が軌道に乗った暁には、テラスカフェを運営を任せられるよう計画を変更することになった。
調理や接客、店舗のマネジメントなら前世のバイトで散々経験してきた。しかし、経営者がやる諸々のことは、実際のところふんわりとしかわからない。
たとえ私が、前世で経営について熟知していたとしても、ベルクロン王国の法律関係を学んでいないから、いきなり実務を単独でできるわけもない。
そんな時に頼りになるのは、リオネル様だ。アカデミーで学んだ知識と、ご自身で事業をされている経験との両方があるのだから。
というわけで、私はリオネル様にコンサルティングをお願いした。
天使のように優しい彼はご自分の事業も忙しいのに快諾してくれた。
『ちょうどよかった! うちの母も、カタリナお嬢様にご挨拶したいそうで……ぜひ、我が家で夕食を一緒にとりましょう』
ありがたくも、そう言ってもらえたのだ。
いつかはこういうこともあるかと思っていたけれど、こんなに早く親公認の彼女になるなんて驚きだ。
だって、相手は美形で優しくてお金持ちの青年……婚約破棄されて半年も経っていない私がこんな幸せになっていいのだろうか?
(……お母様に気に入ってもらえるといいんだけど)
多めに作ったフィナンシェを手土産に、リオネル様が住んでいるご自宅に向かった。
その危険性を考えると、完全に売ってしまうのは考え物だ。
考えあぐねる私の頭に浮かんできたのは、前世の街でよく見かけていたコーヒーチェーン店やコンビニ。
あれは、たしか直営じゃなくてフランチャイズ形式だったのでは……?
フランチャイズなら、ノウハウを保持しながらメニューを提供することが可能なはず。
その対価として、加入費用はもちろんその後も継続的にロイヤリティーを受け取ることができ、マドレーヌや古参の従業員の負担も減る。
店舗の経営に口出しもできるので、一石二鳥じゃないだろうか?
実はテラスカフェの成功を知った近隣のレストランオーナーたちが、パニーニや菓子のレシピを欲しいと言っていたから、需要はあるはずだ。
今後、路面店を出したらそういう要望もさらに高まるに違いない。
「マドレーヌ、いいこと考えたわ!」
私がそう言うと、マドレーヌは首を傾げた。
「どんなことでしょう?」
「売らずに口出しだけできる方法。それには、あなたにまた手伝ってもらわないといけないことが多くなるわ」
彼女は両手を胸の辺りで組み、天を仰いだ。
「あぁ、神様……カタリナお嬢様がまたもや私をこき使おうとしていらっしゃいます! どうか、天のお恵みを与えてくださいますよう……」
「わかった、わかった! ギャラアップね。了解!」
「さっすがお嬢様! 神様よりもお嬢様でございます!」
まったく、守銭奴侍女は調子がいい。
この前、クズ男に私の五分間を売った恨みはまだあるが、いつもこき使いすぎているのもあるから、今のところはおあいこにしてあげよう。
――というわけで、二店舗経営するという激務を短期間に済ますべく、フランチャイズ方式を取り入れる。
路面店が軌道に乗った暁には、テラスカフェを運営を任せられるよう計画を変更することになった。
調理や接客、店舗のマネジメントなら前世のバイトで散々経験してきた。しかし、経営者がやる諸々のことは、実際のところふんわりとしかわからない。
たとえ私が、前世で経営について熟知していたとしても、ベルクロン王国の法律関係を学んでいないから、いきなり実務を単独でできるわけもない。
そんな時に頼りになるのは、リオネル様だ。アカデミーで学んだ知識と、ご自身で事業をされている経験との両方があるのだから。
というわけで、私はリオネル様にコンサルティングをお願いした。
天使のように優しい彼はご自分の事業も忙しいのに快諾してくれた。
『ちょうどよかった! うちの母も、カタリナお嬢様にご挨拶したいそうで……ぜひ、我が家で夕食を一緒にとりましょう』
ありがたくも、そう言ってもらえたのだ。
いつかはこういうこともあるかと思っていたけれど、こんなに早く親公認の彼女になるなんて驚きだ。
だって、相手は美形で優しくてお金持ちの青年……婚約破棄されて半年も経っていない私がこんな幸せになっていいのだろうか?
(……お母様に気に入ってもらえるといいんだけど)
多めに作ったフィナンシェを手土産に、リオネル様が住んでいるご自宅に向かった。
35
お気に入りに追加
332
あなたにおすすめの小説
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」「はい?」悪役令嬢のイザベラは、婚約者のエドワード王子から婚約の破棄を言い渡されてしまった。男爵家令嬢のアリシアとの真実の愛に目覚めたという理由でだ。さらには義弟のフレッド、騎士見習いのカイン、氷魔法士のオスカーまでもがエドワード王子に同調し、イザベラを責める。そして正義感が暴走した彼らにより、イザベラは殺害されてしまった。「……はっ! ここは……」イザベラが次に目覚めたとき、彼女は七歳に若返っていた。そして、この世界が乙女ゲームだということに気づく。予知夢で見た十年後のバッドエンドを回避するため、七歳の彼女は動き出すのであった。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
異世界のんびり冒険日記
リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。
精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。
とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて…
================================
初投稿です!
最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。
皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m
感想もお待ちしております!
婚約解消したのに嫌な予感がします。……もう振り回されませんよね?
Mayoi
恋愛
結婚式の日も迫ってきているというのに、クライヴは自分探しのために旅に出るとコンスタンスに告げた。
婚約関係を解消し全てを白紙撤回し自分を見つめ直したいという。
コンスタンスは呆れ婚約解消に同意した。
これで関係は終わったはずなのに、コンスタンスは一抹の不安が残っていた。
王太子殿下が浮気をしているようです、それでしたらわたくしも好きにさせていただきますわね。
村上かおり
恋愛
アデリア・カーティス伯爵令嬢はペイジア王国の王太子殿下の婚約者である。しかしどうやら王太子殿下とは上手くはいっていなかった。それもそのはずアデリアは転生者で、まだ年若い王太子殿下に恋慕のれの字も覚えなかったのだ。これでは上手くいくものも上手くいかない。
しかし幼い頃から領地で色々とやらかしたアデリアの名は王都でも広く知れ渡っており、領を富ませたその実力を国王陛下に認められ、王太子殿下の婚約者に選ばれてしまったのだ。
そのうえ、属性もスキルも王太子殿下よりも上となれば、王太子殿下も面白くはない。ほぼ最初からアデリアは拒絶されていた。
そして月日は流れ、王太子殿下が浮気している現場にアデリアは行きあたってしまった。
基本、主人公はお気楽です。設定も甘いかも。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる