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3章 ルダマン帝国編

第168話 窃盗犯

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「どうして? なんでよー!」

 リーリアは自分のポケットや鞄などを漁っていた。

「どうしたんだ?」

「財布がないのよ!」

「財布?」

 リーリアは財布を腰に固く結んでいたようだ。

「財布はいいんだけど、その中にお守りが入っているの!」

「お守り?」

「おばあちゃんに作ってもらったお守りなのに……」

 リーリアが困っているとエアリスが口を開いた。

「あの時、ぶつかってきた子供が持って行ったんじゃない?」

「可能性は高いな」

 門の守衛と会った時はリーリアの腰にあった事を琉海は覚えている。

「探してみるか」

 琉海は宿を出て跳躍し、屋根の上に飛び乗った。

「どう? 見える?」

 エアリスも上がって来たようだ。

「見つからないな」

 琉海は精霊術で視力を強化して見渡してみたがぶつかった子供は見つからなかった。

 一瞬だったとはいえ、姿は見えていた。

 一度、見たから覚えているが、リーリアにぶつかった子供の姿は見当たらなかった。

「子供の足なら、そこまで遠くまではいけないと思うんだけどな」

「見てダメなら、これはどう?」

 エアリスには子供を見つける方法がなにかあるようだ。

「かなり大雑把だけど、目立つ動きや子供みたいにわかりやすい体形なら見つけられるかもしれないわ。ルイにもやり方を教えておきたかったしちょうどいいわ」

 そう言ってエアリスは目を瞑った。

「自然力を集中して視てて」

 琉海はエアリスに言われた通りに自然力を視る。

 この町にも自然力は滞留していた。

 エアリスは腕を横に振る。

 すると、自然力が波紋を描くように揺れ、周囲に広がった。

 波紋はさまざまなものにぶつかり波紋の波を返す。

 それを何度か繰り返した。

 自然力でソナーのようなことを行っているようだ。

「子供ぐらいの大きさが何人か歩ているけど、走っているのは3人ね」

「どこだ?」

「あそことあそこ」

 琉海は強化した視力でエアリスが教えてくれた一ヵ所目を確認した。

 そこには子供2人が追いかけっこしている姿が見えた。

「あっちじゃないな」

 となると――もう一ヵ所を見た。

 一人の子供が走っている姿が一瞬見えた。

「見つけた」

 発見した子供はリーリアとぶつかった子と同じ服装をしている。

 子供しか通れないような細い道を走っているからか、建物の物陰にすぐに消えてしまう。

 しかし、エアリスがソナー役をやってくれれば、目に頼る必要はない。

「追うぞ」

 エアリスと共に子供を追った。

「私も行くわ」

 リーリアも琉海たちの後を追った。

 子供は小道を駆使して逃げていく。

 子供が逃げていく先は荒廃している街並みだった。

 表側の建物は綺麗で清潔感のある建物になっていたが、ここはどの建物もボロボロで人通りも少なく、路上に座り込んでいる人間もいるぐらいだった。

 俗にいうスラム街だ。

 エアリスの先導でスラム街を通ると、一つの家に辿り着いた。
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