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3章 ルダマン帝国編

第161話 邪精霊

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「エアリス、その【邪精霊】ってなんなんだ?」

 さっきも説明途中にリーリアが来て話が止まっていた。

「【邪精霊】は人間の負の感情を元に生まれた精霊のことよ」

「負の感情? それならどこにでも【邪精霊】が生まれるんじゃないか?」

 人間は誰でも負の感情を持っている。

 それで生まれるなら、マルティアがそこまで驚くほどではないのではと思った。

「人間の負の感情で生まれると言っても人間が普段抱えている感情ぐらいじゃ生まれないわ。圧倒的な負の感情が集まらないと」

「圧倒的な負の感情ね……」

「一番可能性が高いのは、戦争よ。大国同士の戦争だと負の感情を持つ人間が桁違いに多くなるから、【邪精霊】が生まれやすいわ」

「なるほど、それぐらいの規模にならないと生まれないのか。それなら【邪精霊】は珍しいのかもしれないな……」

「珍しいですが、それよりも警戒すべきは特性です。精霊は自然力を生存の源にしていますが、【邪精霊】は生物の生命力を吸収すること生存しています。【邪精霊】が野放しになっていて滅んだ国もあるぐらいです」

(……国を滅ぼす?)

「そんな精霊がいるのか……」

「【邪精霊】はどれも狡猾な性格をしているから、捕まえるのも一苦労なのよ」

 透明のフードの男となると、捕まえることが難しいというのも説得力はあった。

「そんな【邪精霊】が仕掛けた異物よ。私も少し浄化させてみたけど、全く変化なかったわ」

 エアリスは「諦めるのね」と締めくくった。

「でも、なんで【邪精霊】は龍脈を潰したんだ?」

「さあ? 【邪精霊】の考えることなんてわからないわ」

「私も心当たりはありませんね」

 エアリスもマルティアも【邪精霊】の真意が何なのかわからなかった。

 状況を見るに【邪精霊】は、ルダマン帝国に協力しているのだろう。

 何か意図があってここの龍脈の泉を潰したのだろうけど……。

 思考すればするほど不穏な空気を感じる。

「考えても無駄よ。私たちは目的を達成することだけを考えればいいのよ」

 琉海が深慮しているとエアリスは考えても無駄だと言った。

「いや、目的は忘れてないけど、ルダマン帝国に【邪精霊】が協力しているなら、どこかでぶつかるかもしれないだろ」

「その時はその時よ。まずはアンリを助け出すことだけ考えるのよ」

「はあ、わかったよ」

(たしかに、情報が少なすぎて何が目的なのかなんてわかるわけがないか)

 琉海はエアリスの言葉に納得しこれ以上、【邪精霊】について考えるのをやめた。

 第一優先はアンリの奪還だ。

 その後、マルティアに琉海たちが捕まえたルダマン帝国兵たちが全滅していたことやエアリスが《創造》で作り出した短剣がその場にあったことを教えた。

 そして、今後についても話し合った。
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