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3章 ルダマン帝国編

第144話 帝天十傑

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 餌を目の前にぶら下げることで、ようやく作戦内容を聞く気になったダズマダたちに説明を終え、自室に戻ろうとしたザーガス。

「隊長ッ!」

 それを呼び止める声が後方から聞こえてきた。

 走ってやってきたのは、ザーガスの右腕とも言える副官のダルク。

 急いで来たのか、息を切らし、ザーガスの元に辿り着くと、膝に手を置き、息を整える。

「どうした?」

 ここまで慌てている副官も珍しいと思いつつ、ザーガスは冷静に聞く。

 呼吸が整ったダルクは顔を上げて言った。

「〝剣帝〟がやってきました!」

「なッ!?」

 ダルクの報告にザーガスも平静を装うことに失敗して、思わず声を出してしまった。

(なぜ、〝剣帝〟がここに……ッ!?)

 心の中で整理を試みるが動揺が大きくまともに思考を巡らせることができない。

「それで、〝剣帝〟はどこにいる?」

「はい。先ほど門を開き、砦内に入られたところかと」

「わかった。なら、私が行く」

 まずは〝剣帝〟に話を聞くべきだと判断し、ザーガスは足早に〝剣帝〟のいる場所へ向かった。
 
 〝剣帝〟。

 ルダマン帝国には、〝帝〟を冠する称号を持つ者たちがいる。

 それらをルダマン帝国では、〝帝天十傑〟と呼んでいた。

 皇帝に次ぐ権力を持ち、独立部隊として部隊の指揮をすることができる者たち。

 しかし、指揮できる人数は100人まで。

 それ以上の人数を指揮下に入れることは許されない。

 それでも、〝帝天十傑〟たちには十分だった。

〝帝天十傑〟の指揮下にいる者たちは少数精鋭の独立部隊となり、戦場では一騎当千の力を発揮する。

 そして、〝帝天十傑〟には、もう一つ特徴があった。

 〝帝〟を冠する称号の下に得意とする武器や技術が二つ名として付属すること。

 つまり、ザーガスが落とした砦にやってきた〝剣帝〟とは、帝国内最強の剣士ということだ。

 ザーガスは〝剣帝〟のいる門の前まで向かった。

 門に近づくにつれて人が多くなる。

 そして、門前にはひとだかりができていた。

「通せ!」

 ザーガスの声で人だかりが左右に割れる。

 人だかりの中心にいたのは、馬上に座す女性だった。

 腰まで長い銀髪と鋭い目をしている金眼。

 一目で数多の戦場を潜り抜けた者だとわかる覇気を放っていた。

 女性だからと馬鹿にする者がいれば、その者に訪れるのは死だろう。

 そんな覇気を持つ馬上の女がザーガスに視線を向けた。

(この女が〝剣帝〟……)

 帝天十傑と面識のある者は少ない。

 独立部隊のため、帝都にはほとんどいないからだ。

 噂では帝天十傑は破天荒な者ばかりという話も聞くぐらいだ。

 〝剣帝〟がどんな目的でここに来たのかわからないが、下手に刺激して作戦を台無しにされることだけはないようにしたい。
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