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3章 ルダマン帝国編

第137話 体の不具合

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 襲撃が予想される夜間になるまで、琉海たちはマルティアの家でお茶を飲みながらゆっくりしていた。

 リーリアは部屋の隅で本を読んでいる。

 本は古いものなのか、表紙はボロボロだった。

 その本に興味を持ったエアリスがとことことリーリアに近寄って覗き見る。

「へえ、それ精霊術の本なのね」

 見られていることに気づいたリーリアが胸に抱えて本の内容を見えないようにする。

「そんなに警戒しなくても、盗み取ったりしないわよ。それに、私たちにはその本はあまり意味ないしね」

 エアリスの言葉にリーリアは怪訝な顔をする。

「その本、属性を操る精霊術に関することが書かれているみたいね。でも、どうしてかわからないけど、私たちには使えないのよ」

「それは、本当ですか?」

 エアリスの話に反応したのは、リーリアではなくマルティアだった。

「ええ、私と契約した最初の時、ルイに試してもらったけれど、うまくいかなかったわ」

「それはどの属性でもですか?」

「ええ、そうよ」

 エアリスは話しに入ってきたマルティアにそう答える。

「それは、おかしいですね」

 マルティアは顎に指を添えて呟いた。

「おかしいとは……?」

 話しの内容が気になった琉海はマルティアに聞く。

「精霊にも得手不得手の属性はありますが、何かしらの属性を持っているはずなんです。それはエアリス様も例外ではないと思われます」

「ええ、その通りよ。私は一通りの属性を扱うことができるけど、得意なのを強いて言うなら、土と風の属性ね。でも、それすらもルイは使うことができなかったわ」

「そうですか。そうなると、属性を持つ精霊術を扱うことができない原因は、ルイ様にあると言うことでしょうかね」

 マルティアの視線が琉海へ向き、近づいてくる。

 そして、「失礼します」と言って琉海の額に手を添えた。

 マルティアの魔力が体の中を流れてくるように感じる。

「何をしようとしているんだ?」

「もう少しジッとしていてください」

 マルティアは目を瞑り集中しているようだ。

 十数秒の間、動かないでいるとマルティアの瞼が開く。

「そういうことですか」

 何かに気づいたんか、マルティアは頷く。

「何がわかったんだ?」

「ルイ様の体の特徴に問題があることがわかりました」

「問題?」

 エアリスもわからないようだ。

「はい。ルイ様の体は半分以上が精霊と同じ状態ですね」

「ええ、私が複製したものよ」

「それが原因です」

 まだマルティアの言いたいことがわからず、琉海とエアリスは首を傾げた。

「エアリス様が作られた体とルイ様自身の体がしっかり結合されていないみたいですね」

「動くけどな……」

 琉海は自分の体を動かす。

 エアリスが複製した体だが、思い通りに動かすことはできている。

 違和感のある箇所もない。

「肉体の部分は問題なく繋がっていますが、属性を司る神経は断裂状態のようです」

「属性を司る神経……?」

 琉海の怪訝そうな表情にマルティアは察したのか――

「では、説明しますね」

 と言って、肉体の説明をしてくれた。
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