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2章 スティルド王国編
第61話 会場入り、そして―
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大会の会場は、王宮の近くにある円形闘技場のコロシアム。
開会式はここでやるようだが、ここ以外にも小規模な円形闘技場が三つほどあるらしく。
注目の選手や身分の高い貴族の代表選手以外は小さい闘技場で予選を行うようだ。
本選は全試合この一番大きい円形闘技場でやるらしく、ほとんどの出場者は、ここで華々しく戦うことを目標にしているとのことだった。
馬車が停車し、琉海たちは降りた。
「まだ、始まる前なのにすごい歓声ですね」
静華が言うように入口からでも多くの人の声が聞こえてくる。
「おそらく、対戦の組み合わせが発表されたんでしょうね」
ティニアがそう言うと。
「私が取りに行ってきます」
メイリは入口へそそくさと歩いていった。
「では、案内は私がいたしましょう」
老齢の執事アルディが先導して、琉海たちを客席まで案内してくれた。
アルディが案内した場所はさすが公爵家と言える場所だった。
場所はコロシアムの一番上段に作られた個室。
室内は広く、綺麗な調度品が部屋を飾っている。
会場側は一面ガラス張りになっていて、会場を見下ろすことができる。
舞台となる中央もしっかりと見えるようになっていた。
「こ、こんなところで、観戦するんですか?」
静華が室内のきらびやかさに驚く。
「ええ、他にも王家の人や同じ公爵家の人たちは同じような場所で見ています」
ティニアはそう言ってガラス窓に視線を向けた。
ガラスの向こう側には、同じようなガラス張りの部屋が見えた。
なるほど、高い身分の人たちは皆ここと同じような場所で観戦しているようだ。
「紅茶をどうぞ」
アルディがいつの間にか、紅茶を用意してくれていた。
琉海や静華、ティニアにアンジュは、すでにソファに座ってカップに口を付けているエリザと同じようにソファに座った。
紅茶を飲んでほどなくすると、メイリが帰ってきた。
メイリは、丸く包まった一枚の紙を持っていた。
「お待たせしました」
メイリはそう言ってソファの前にあるテーブルの上に紙を広げた。
紙には、あみだくじのように線が引かれている。
トーナメント戦のようだ。
ブロックが12個。
上位12人が本選に出場できるということは、ブロックで優勝した人が本選に出場することになるのだろう。
「さてさて、私たちのルイ君はどこかな」
エリザが真っ先に探す。
ティニアやアンジュも端から順番に目を通していく。
そして――
「ありました」
ティニアが見つけたようだ。
琉海の名前の下には、括弧書きでスタント公爵と書かれている。
どこの貴族の代表なのかわかりやすいようになっているようだ。
「あら、これって――」
琉海のいるブロックに並ぶ名前たち。
そして、エリザの視線を辿ると、一つの名前が――
琉海には、その名前が誰のことを指しているのかわからない。
しかし、その名の下にある括弧書きには『ホルス騎士団』と書かれていた。
この騎士団の名前から連想できるのは、今日の朝にアンジュから聞いた話だった。
アンジュより強い騎士三人の内の一人が同じブロックにいるようだ。
決勝まで進めば、どこかで当たることになると思っていたが予選ブロックでいきなり当たるとは運が悪い。
「予選で当ててきたわね」
「代表をルイ様にしたことで、隙を狙っていたどこかの貴族が、裏工作したのでしょうか」
「それか王族の誰かが、私たちを疎ましく思っているのかもしれないわね」
エリザとティニアが神妙な顔つきで対戦表を眺めていた。
(ああ、そういうことか)
代役を立ててまで出場させた貴族は、本選に勝ち上がれなければ、謗りを受けることは免れないと言っていたのを琉海は思い出した。
つまり、スタント公爵家を貶めたいと思っている貴族がいて、裏から手引きをし、対戦表を弄らせたとティニアたちは考えているようだ。
「こうなると、ルイ様には勝って頂きたいと思うのですが……」
ティニアがこちらに視線を向けてくる。
「全力は尽くさせていただきます」
琉海はそう言うしかなかった。
相手がどれだけ強いのかわからない。
また、この世界で自分がどれだけ強いのかもわからないのだ。
勝てると確約することはできなかった。
こんな組み合わせになるとは、思っていなかったのか、ティニア、エリザ、アンジュの三人は他のブロックの組み合わせをじっと見つめて状況を確認していた。
そうこうしていると、会場の屋外席から大きなざわめきが聞こえてくる。
そして、司会の男の声が響いてきた。
『さあ、今年もやってきました。騎士武闘大会! 今年はどこの騎士が優勝するのか! 皆さんも気になるところでしょう。
では、さっそく、国王陛下に開会の言葉を賜りたいと思います!』
司会は魔道具の拡声器を持っているらしく、琉海たちのいる個室までしっかりと声が届いていた。
司会者が舞台から降り、一人の初老が舞台に上がる。
「諸君、この日を待ちわびていた者も多いだろう。儂もその一人だ。この大会で優勝した者たちは、皆伝説となっている。
今年も血沸き肉躍る戦いを見せてもらおう!
これより騎士武闘大会を開催する!」
国王の言葉に歓声が湧き起こった。
毎年見ている者たちは、この大会が伝説の始まりであり、その目撃者になれると知っているのだろう。
国王が舞台から降りても、歓声は止むことはなかった。
『では、開会式はこの辺で終わりとします。組み合わせ表はもう配られているので、参加者でまだ確認していない方たちは、目を通すようにお願いします。また、賭けにも参加できるのでどんどん参加してください。では、明日からの激闘を楽しみにしましょう』
司会者は言い終えると、舞台から降りていく。
屋外席にいた人たちが続々と動き出す。
「それじゃ、私たちは先に会場に行ってるから、後から来なさい」
エリザがそう言うと、アルディが扉を開け、エリザとアルディは部屋から退出した。
開会式はここでやるようだが、ここ以外にも小規模な円形闘技場が三つほどあるらしく。
注目の選手や身分の高い貴族の代表選手以外は小さい闘技場で予選を行うようだ。
本選は全試合この一番大きい円形闘技場でやるらしく、ほとんどの出場者は、ここで華々しく戦うことを目標にしているとのことだった。
馬車が停車し、琉海たちは降りた。
「まだ、始まる前なのにすごい歓声ですね」
静華が言うように入口からでも多くの人の声が聞こえてくる。
「おそらく、対戦の組み合わせが発表されたんでしょうね」
ティニアがそう言うと。
「私が取りに行ってきます」
メイリは入口へそそくさと歩いていった。
「では、案内は私がいたしましょう」
老齢の執事アルディが先導して、琉海たちを客席まで案内してくれた。
アルディが案内した場所はさすが公爵家と言える場所だった。
場所はコロシアムの一番上段に作られた個室。
室内は広く、綺麗な調度品が部屋を飾っている。
会場側は一面ガラス張りになっていて、会場を見下ろすことができる。
舞台となる中央もしっかりと見えるようになっていた。
「こ、こんなところで、観戦するんですか?」
静華が室内のきらびやかさに驚く。
「ええ、他にも王家の人や同じ公爵家の人たちは同じような場所で見ています」
ティニアはそう言ってガラス窓に視線を向けた。
ガラスの向こう側には、同じようなガラス張りの部屋が見えた。
なるほど、高い身分の人たちは皆ここと同じような場所で観戦しているようだ。
「紅茶をどうぞ」
アルディがいつの間にか、紅茶を用意してくれていた。
琉海や静華、ティニアにアンジュは、すでにソファに座ってカップに口を付けているエリザと同じようにソファに座った。
紅茶を飲んでほどなくすると、メイリが帰ってきた。
メイリは、丸く包まった一枚の紙を持っていた。
「お待たせしました」
メイリはそう言ってソファの前にあるテーブルの上に紙を広げた。
紙には、あみだくじのように線が引かれている。
トーナメント戦のようだ。
ブロックが12個。
上位12人が本選に出場できるということは、ブロックで優勝した人が本選に出場することになるのだろう。
「さてさて、私たちのルイ君はどこかな」
エリザが真っ先に探す。
ティニアやアンジュも端から順番に目を通していく。
そして――
「ありました」
ティニアが見つけたようだ。
琉海の名前の下には、括弧書きでスタント公爵と書かれている。
どこの貴族の代表なのかわかりやすいようになっているようだ。
「あら、これって――」
琉海のいるブロックに並ぶ名前たち。
そして、エリザの視線を辿ると、一つの名前が――
琉海には、その名前が誰のことを指しているのかわからない。
しかし、その名の下にある括弧書きには『ホルス騎士団』と書かれていた。
この騎士団の名前から連想できるのは、今日の朝にアンジュから聞いた話だった。
アンジュより強い騎士三人の内の一人が同じブロックにいるようだ。
決勝まで進めば、どこかで当たることになると思っていたが予選ブロックでいきなり当たるとは運が悪い。
「予選で当ててきたわね」
「代表をルイ様にしたことで、隙を狙っていたどこかの貴族が、裏工作したのでしょうか」
「それか王族の誰かが、私たちを疎ましく思っているのかもしれないわね」
エリザとティニアが神妙な顔つきで対戦表を眺めていた。
(ああ、そういうことか)
代役を立ててまで出場させた貴族は、本選に勝ち上がれなければ、謗りを受けることは免れないと言っていたのを琉海は思い出した。
つまり、スタント公爵家を貶めたいと思っている貴族がいて、裏から手引きをし、対戦表を弄らせたとティニアたちは考えているようだ。
「こうなると、ルイ様には勝って頂きたいと思うのですが……」
ティニアがこちらに視線を向けてくる。
「全力は尽くさせていただきます」
琉海はそう言うしかなかった。
相手がどれだけ強いのかわからない。
また、この世界で自分がどれだけ強いのかもわからないのだ。
勝てると確約することはできなかった。
こんな組み合わせになるとは、思っていなかったのか、ティニア、エリザ、アンジュの三人は他のブロックの組み合わせをじっと見つめて状況を確認していた。
そうこうしていると、会場の屋外席から大きなざわめきが聞こえてくる。
そして、司会の男の声が響いてきた。
『さあ、今年もやってきました。騎士武闘大会! 今年はどこの騎士が優勝するのか! 皆さんも気になるところでしょう。
では、さっそく、国王陛下に開会の言葉を賜りたいと思います!』
司会は魔道具の拡声器を持っているらしく、琉海たちのいる個室までしっかりと声が届いていた。
司会者が舞台から降り、一人の初老が舞台に上がる。
「諸君、この日を待ちわびていた者も多いだろう。儂もその一人だ。この大会で優勝した者たちは、皆伝説となっている。
今年も血沸き肉躍る戦いを見せてもらおう!
これより騎士武闘大会を開催する!」
国王の言葉に歓声が湧き起こった。
毎年見ている者たちは、この大会が伝説の始まりであり、その目撃者になれると知っているのだろう。
国王が舞台から降りても、歓声は止むことはなかった。
『では、開会式はこの辺で終わりとします。組み合わせ表はもう配られているので、参加者でまだ確認していない方たちは、目を通すようにお願いします。また、賭けにも参加できるのでどんどん参加してください。では、明日からの激闘を楽しみにしましょう』
司会者は言い終えると、舞台から降りていく。
屋外席にいた人たちが続々と動き出す。
「それじゃ、私たちは先に会場に行ってるから、後から来なさい」
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