修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮

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1章 異世界突入編

第48話 今後の方針

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 昼を過ぎた頃。

 静華とエアリスと琉海の三人は町外のとある場所を目指して歩いていた。

 それは、琉海と静華がこの世界で最初に出会った場所。

 琉海が元C級冒険者四人組と戦ったあの屋敷だ。

 なぜ、そんな場所に用があるかというと、静華の荷物がその近くに隠してあるらしい。

 そのため、荷物を回収しにきたのだが、あの場所にはまだ誰かが潜んでいるかもしれない。

 特に気になるのは、イーゲルが魔薬を飲むときに琉海へ魔法を放った奴だ。

 そんな不安要素があるため、琉海は護衛として同行することにした。

 雑談をしながら歩いてくと、目的の屋敷が見えてくる。

 と言っても、屋敷は跡形もなく、瓦礫の山と化しているのだが。

「こっちよ」

 静華は屋敷の場所から逸れて茂みの中に入っていく。

 そういえばと思い出し、昨日魔薬を飲んだ男を斬った場所に視線を向けたが、そこにあるはずの遺体はなかった。

 琉海がまさか生きているのかと思って辺りを見回していると、エアリスが近づいてきた。

「そんなに心配しなくて大丈夫よ。おそらく消えたんでしょ。魔物になっていたんだから、灰になって風で飛ばされたんだと思うわよ」

 エアリスが琉海の見ている方向から思考を予測してきた。

「あのさ、俺の心を読むのやめてくれないか?」

「だったら、もう少し表情を読まれないようにしないとね」

「そんなに顔に出てるかな……」

「ほら、シズカが待っているわよ」

 エアリスに促されて琉海は静華の元に向かった。

 静華のいた場所は何もない茂みだった。

「この下に隠したの」

 静華はそう言って手で掘り出そうとする。

「あ、ちょっと待ってください」

 琉海は《創造》の能力でスコップを作り出した。

「これ使ってください」

「服のときも思ったけど、その能力ほんと便利ね。ありがとう。使わせてもらうわ」

 静華はスコップを受け取り、地面に突き刺す。

 ちなみに、静華の服は、昼間に乾いたので、本物の服に着替えてもらっていた。

 四、五回、土を掘り返すと中から出て来るものがあった。

 静華はそれを引っ張り出す。

「バックですか?」

 静華の手にあるものは、肩掛けのバックだった。

 そこまで大きいものではない。

「ただのバックじゃないわ。これはマジックアイテムなのよ」

 静華は土を払って、中身を出す。

 バックの中から出てきたのは、包まった一枚の紙だった。

 大きさからして、絶対にバックからはみだしてしまうサイズなのだが。

 まるでマジックを見せられているかのようだ。

「なるほどね。そのバックはエルフが作ったものかしら」

 エアリスはマジックアイテムのバックに興味津々のようだ。

「そうよ。これはクリューカさんに渡されたものなの。このバックの口に入るサイズならほぼすべて収納ができるみたい。容量の上限はあるし、生き物を入れることができないとかの条件はあるけど」

「さすが、エルフね。マジックアイテムを作らせたら、右に出る者はいないわ」

 エアリスは感心して、まだそのバックを見ていた。

 琉海は内心でそうなんだと思いつつ、静華が手にしている紙の方に視線を向ける。

「それは?」

「これはここ一帯の地図よ。琉海くんは地図を持ってないの?」

 静華は地図を広げて見せてくれる。

「金がなくて……」

「高いもんね。この世界の地図は」

 静華は地図の一点を指差す。

「いま、私たちがいる場所はここよ」

 静華が指差したところには、町の名前が書かれていた。

 ダルクア。

 それが、あの町の名前のようだ。

「ここはスティルド王国の領地よ。この辺は国境近くの町になるわね。国境を越えれば、ルダマン帝国の領地に入るわ」

 地図を見て、琉海は自分が通ってきた道程を追うと、何も記されていない空白地帯があった。

「ここは……?」

「この世界の地図には、未開地であったり侵入できない場所があったりして、詳細に書かれていない部分も多いのよ」

 アンリたちの村があった場所も空白地帯になっていた。

 アンリやヤンばあの村は、さらに国境に近い場所だったようだ。

 そして、この地図から読み取れることは、アンリを連れ去った可能性があるのは、スティルド王国かルダマン帝国の二国であること。

 他の国の可能性もあるのだろうけど、この地図からは読み取れなかった。

 広範囲の地図は値段が高く、出回っているものも少ないらしい。

 静華の持っていた地図はスティルド王国を中心に書かれたもので、ルダマン帝国内はほとんど書かれていなかった。

「琉海くんの探している女の子を攫った人たちの特徴って装飾のある綺麗な鎧を着た金髪の男よね」

「はい。そうです」

「紋章とか鎧になかったかしら?」

「ありませんでしたね」

 琉海の瞬間記憶によって見たのだ。

 あの時の光景を鮮明に思い出すことができる。

 傷ひとつ無く、太陽の光を反射して輝いていた鎧。

 特に印は刻まれていなかった。

「鎧が綺麗なのは、貴族か名武将でしょうね。たぶん、どこにも紋を掲げていなかったのは、隠密作戦行動中だったのかもしれないわね。そうなると、どこの国の所属なのか……わからないわね」

 静華の言う通り、これは片っ端から探すしかないのかも。

「じゃあ、一番近いここしかないんじゃない?」

 エアリスが指差したのは、スティルド王国の王都。

「たしかに、ここから、近いかもしれないけど、間違ってたら……」

「そんなこと心配していても仕方がないでしょ。こっちが違ければ、帝国ってことになるんだから、簡単でしょ」

 琉海の不安を一蹴するエアリス。

「言うのは簡単かもしれないけど……」

「でも、エアリスの言う通りかもしれないわね。それしか方法はないし」

 静華もエアリスに賛成のようだ。

 この何日か情報をかき集めようとしたが、目撃情報はなかった。

 二人が琉海に視線を向ける。

 どうするかと言っているのだろう。

「わかった。まずは王都に乗り込もう」

 琉海は頷いて、これからの方針を決めた。

 今日の内に町で旅に必要なものを集め、明日には、王都に向かうことになった。
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