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第二章 与えられた自由
Seventeen. Kid
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陛下と歓談し、すっかり日が傾いてしまった。
なかなか、いい人で嬉しかった。
いい気持ちで執務室を出て、歩く。
…歩く。
迷子。
困ったな。取りあえず外を目指して歩こう。
特別方向音痴な訳ではないはずだが、建物が複雑すぎる。初めて来たから余計にわからない。
何とか外に出れた。いい機会だから寄り道をしながら帰ろう。
ふらふらっと散歩していると宿舎の横で少年が一生懸命服を洗っていた。…え?
多すぎる。いや、多すぎる。あれ一人で手洗いするの?嘘だぁ
気になって気になって暫く観察する。
文句も言わずゴシゴシゴシゴシゴシゴシ
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ
いや長すぎ。大丈夫か?
「そこの君。」
ゴシゴシが止まって振り返ってくれた。
「これ全部洗うの?」
「そうです。」
不審者をみるような目でじっとみられた。
「あとどれくらいある?」
「ここにあるもので全部です。」
「この、山みたいなものを一人で?」
「はい。」
「他に、洗ってくれる人は?」
「皆、疲れてるから。」
「君は、疲れていないのか?」
「見習いが飛んでしまって、僕しかいないんです。」
「なんと。」
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ
ゴシゴシ君が面白くて私もやってみたくなった。
「たらいは、何処に行けばもうひとつ貰えるだろうか。」
指を指して教えてくれる。
「あそこにかかってますよ。」
そうか。小屋に立て掛けてある大きなタライをひとつ掴んで、少年の元に戻る。
水を汲んで洗うのにローブが邪魔なのでそこら辺に放る。
水を一杯入れて、ゴシゴシする。
「君は、どういう風に洗うんだ?」
「え?」
「洗い方だよ。実は、久しぶりでね。教えてくれると嬉しい。」
「初めに泥を落として、完璧に綺麗にしなくていいんです。また水を変えるのは勿体ないから。ある程度落ちたら、次の服を擦ります。」
「成る程、その後水を替えてまた一つずつ洗うのだね?」
「そうです。」
「ありがとう。」
やってやるぜ!
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ
「ふふっ」
可笑しくて笑ってしまう。
「これを、毎日やっているのか。」
「討伐が無い日は、やりません。」
「君は、何処に所属しているのかね。」
「第四部隊所属です。」
「第四部隊。と、いうと?」
少年が訝しげに私を見る。
「前まで冒険者をやっていてね、最近こちらに来たばかりなんだ。特に王宮の周りなんて、数回しか訪れたこと無いんだ。」
ゴシゴシしながら答えてくれる。
「帝都を守る部隊が第五部隊まであります。第一部隊は王宮を、第二部隊、第三部隊は帝都内で起きる事件を、第四部隊、第五部隊は帝都周辺で魔物などを撃退します。」
「成る程。」
「魔術師は第三部隊まであって、結界をはったり、よくわからない研究をしています。」
「よくわからない研究。」
「この前召喚師が召喚したのを第二部隊が倒したり、」
「ははっ」
「新しい薬を持たせて結果を診たり、結界を張り替えたり、色々していると思います。」
「大変だね。君も、いつか国を守る兵士になるのかな?」
「今は見習いですが、将来なりたいです。」
「そうか。」
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシィ!
一旦水を替えて更に洗う。
「今度は、そんなに強く擦らなくて大丈夫です。」
「わかった。優しくだね。」
コシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシ
「君は、魔術を使う気はないかね?」
「魔術って、難しいんでしょう?」
「素質にもよるけど、慣れると簡単だよ。」
「教えてくれる人いないし」
「良かったら、一緒にやらないか。」
「おじさん、ローブ着てたけど、もしかして魔術師?」
「うん。最近魔術に頼ってばっかりで、久し振りに洗濯したよ。」
コシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシ
「僕でも覚えられる?」
コシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシ
「生き物には必ず魔力があるから、出来るよ。」
多分。
「…教えてくれるの?」
「いいとも。良かったら休みの日、一緒に勉強しないか?」
「本当に?」
「あぁ。」
「明日、休みなんだ。外出許可を取ったけど、特にすること無くて、何となく取ったんだ。」
「おじさんも丁度、明日開いている。」
「本当!じゃあ明日、教えてくれますか?」
「いいとも。明日だね。」
待ち合わせ場所を決めながら、洗濯物を干す。すっかり日が暮れてしまった。
「じゃあ、明日!絶対行くから!」
「うん、待ってるよ。」
駆け足で去っていく少年を見送り、ローブを掴む。おじさん、か。ふふ。
邸に戻ると、暗かった。まだ二人は掘っているようだ。二人とも、冒険の楽しさを知ってしまったな。
次は何処につれていこうか、想いを馳せながら風呂の支度をする。
なかなか、いい人で嬉しかった。
いい気持ちで執務室を出て、歩く。
…歩く。
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特別方向音痴な訳ではないはずだが、建物が複雑すぎる。初めて来たから余計にわからない。
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「これ全部洗うの?」
「そうです。」
不審者をみるような目でじっとみられた。
「あとどれくらいある?」
「ここにあるもので全部です。」
「この、山みたいなものを一人で?」
「はい。」
「他に、洗ってくれる人は?」
「皆、疲れてるから。」
「君は、疲れていないのか?」
「見習いが飛んでしまって、僕しかいないんです。」
「なんと。」
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ゴシゴシ君が面白くて私もやってみたくなった。
「たらいは、何処に行けばもうひとつ貰えるだろうか。」
指を指して教えてくれる。
「あそこにかかってますよ。」
そうか。小屋に立て掛けてある大きなタライをひとつ掴んで、少年の元に戻る。
水を汲んで洗うのにローブが邪魔なのでそこら辺に放る。
水を一杯入れて、ゴシゴシする。
「君は、どういう風に洗うんだ?」
「え?」
「洗い方だよ。実は、久しぶりでね。教えてくれると嬉しい。」
「初めに泥を落として、完璧に綺麗にしなくていいんです。また水を変えるのは勿体ないから。ある程度落ちたら、次の服を擦ります。」
「成る程、その後水を替えてまた一つずつ洗うのだね?」
「そうです。」
「ありがとう。」
やってやるぜ!
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「第四部隊所属です。」
「第四部隊。と、いうと?」
少年が訝しげに私を見る。
「前まで冒険者をやっていてね、最近こちらに来たばかりなんだ。特に王宮の周りなんて、数回しか訪れたこと無いんだ。」
ゴシゴシしながら答えてくれる。
「帝都を守る部隊が第五部隊まであります。第一部隊は王宮を、第二部隊、第三部隊は帝都内で起きる事件を、第四部隊、第五部隊は帝都周辺で魔物などを撃退します。」
「成る程。」
「魔術師は第三部隊まであって、結界をはったり、よくわからない研究をしています。」
「よくわからない研究。」
「この前召喚師が召喚したのを第二部隊が倒したり、」
「ははっ」
「新しい薬を持たせて結果を診たり、結界を張り替えたり、色々していると思います。」
「大変だね。君も、いつか国を守る兵士になるのかな?」
「今は見習いですが、将来なりたいです。」
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「君は、魔術を使う気はないかね?」
「魔術って、難しいんでしょう?」
「素質にもよるけど、慣れると簡単だよ。」
「教えてくれる人いないし」
「良かったら、一緒にやらないか。」
「おじさん、ローブ着てたけど、もしかして魔術師?」
「うん。最近魔術に頼ってばっかりで、久し振りに洗濯したよ。」
コシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシ
「僕でも覚えられる?」
コシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシ
「生き物には必ず魔力があるから、出来るよ。」
多分。
「…教えてくれるの?」
「いいとも。良かったら休みの日、一緒に勉強しないか?」
「本当に?」
「あぁ。」
「明日、休みなんだ。外出許可を取ったけど、特にすること無くて、何となく取ったんだ。」
「おじさんも丁度、明日開いている。」
「本当!じゃあ明日、教えてくれますか?」
「いいとも。明日だね。」
待ち合わせ場所を決めながら、洗濯物を干す。すっかり日が暮れてしまった。
「じゃあ、明日!絶対行くから!」
「うん、待ってるよ。」
駆け足で去っていく少年を見送り、ローブを掴む。おじさん、か。ふふ。
邸に戻ると、暗かった。まだ二人は掘っているようだ。二人とも、冒険の楽しさを知ってしまったな。
次は何処につれていこうか、想いを馳せながら風呂の支度をする。
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