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ハーマ

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温もり

淡い希望

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稀龍視点

シルバー「やっぱり軍人だっただけあって筋がいいな  ほら休憩する暇はないぞ稀龍  次は馬術だ」

稀龍「あんた鬼か………ゼェゼェ………」


ジーファからの電話から早1週間………稀龍はシルバーから鬼のような訓練と教育をされていた


シルバー「かなり優しくしてるぞ?」

稀龍「これでか………?」

既に5時間は経過しているはず………汗1つかいてねぇのかよ………本当に鬼だろ………


とかなんとか思いつつもちゃんと馬術をする稀龍(ワープした)


~それから10時間~

シルバー「さて………そろそろやめよう  お前の体が持たない  明日は休みで明後日な」

稀龍「あい………」


10時間後………もう夜明け前の時間になって漸く訓練等が終了


稀龍「ふー………」

シルバーがかなり手加減をしてくれてんのわかってんだけどな  何分メニューと量が多い………


風呂に入りながら稀龍はそんなことを思いつつ、風呂から上がって貰った銃の調整をする


稀龍「…………」

つかもう夜明け前か………シルバーは計算してメニュー組んでるんだな………今日を含めて明日も休めるのはありがたい………


銃の調節をしながらそんなことを思うが………稀龍はシルバーの目の変化に気がついていた


前よりも目の色が綺麗になりつつあった………まだ濁ってはいるけど少しずつ………変わっていってる


勿論本人にその自覚はない


稀龍「ふー」

もしかしたら記憶が少しずつ戻りつつあるのかもしれない………


目の濁りが消えるのは戦闘時と守護時のみだが………それでもシルバーの瞳は日常で少しずつ戻りつつあった


稀龍「腹減ったな………」


ふと訓練後に食事をしていないのを思い出し、タンクトップで食堂へと足を運ぶ


稀龍「…………」

なんだ?なんか不穏な感じがするが………


食堂に行くと普段と変わらぬ賑やかぶりだが………なにやら違う雰囲気を感じとった稀龍


稀龍「…………」


しかし腹は減っていたので、取り敢えずいつも頼むものを頼んで、警戒態勢をとりいつでも戦えるようにしておく


稀龍「!!!くっ………」


そして背後に異変を感じて咄嗟に左に避けた………しかし右腕をかなり深く切ってしまったらしく出血が酷い


魔族「へぇよくわかったな」

稀龍「っ………!てめぇそのナイフに何塗りやがった………!!」

魔族「流石元軍人  すぐにわかったか  命に別状はない  ただの痺れ薬だ」

痺れ薬………厄介なものを………!!


元軍人の元傭兵であっても薬に限っては抗体の有無は代わり、毒には強いが痺れ薬や麻酔は稀龍は弱く効きすぎる


稀龍「ぐっ………!!」

魔族「すごいな  それだけ痺れていても撃つ体制を取れるのか」

なんとかシルバーかジングレイが来てくれるように………!


いくら戦闘慣れしているとしても相手は魔族………人間である稀龍が叶うわけがないと分析し、相手の真横を撃つ


稀龍「っ………」


そして痺れ薬が完全に全身に周り、稀龍は膝から崩れるように座り、それを狙った魔族は稀龍の目を目掛けてナイフを振ったが………


「ザシュッ」

稀龍「えっ」

魔族「?!」

シルバー「…………」


稀龍に痛みは来ず代わりにシルバーの手をナイフが貫通した


シルバー「…………」

魔族「かはっ………」


そしてシルバーは無言の無表情のまま相手の鳩尾を殴り、相手は失神してそのままどこかへ


シルバー「ジングレイ」

ジングレイ「…………」


低く唸るような怒りの孕む声でシルバーはジングレイを呼び、ジングレイも無言で来て緊張の眼差しを向ける


シルバー「警備を通常よりも固めろと伝えたんだよな?」

ジングレイ「はい  この時期は何かしらが起きる為固めるよう指導しました」

シルバー「警備を怠った者を俺の前に突き出せ  警備をした全魔族を招集し誰が怠ったのかあぶりだせ  それが終わり次第2週間休め」


シルバーはそれだけ言うとジングレイも頷きワープし、シルバーは稀龍の手を掴んですぐに医務室へ飛ぶ


稀龍「…………」

シルバー「…………」


そして稀龍は無言のままシルバーの治療を受けていた


稀龍「…………」

シルバー「…………」

空気が重い………しかもシルバーの感情が読み取れない………


完全に無の状態のシルバーの内心の感情が、稀龍には汲み取ることが出来ずただ時が過ぎるのを待つ


シルバー「…………」

稀龍「シルバー?」


不意に治療が完了し包帯を巻き終えた腕を、シルバーは無表情のまま優しく撫でるように触ってきた


『また  失うのかと思った』

稀龍「シルバー」

『もう  失うのはごめんだ』


シルバーの手から感じた本音………失うことへの恐怖が今のシルバーを支配している


シルバー「…………」


シルバーは泣いていた………何も言わずただ泣いていた


稀龍「………思い出したのか?」

シルバー「少しだけな」


稀龍はシルバーが落ち着くのを待ち落ち着いた頃にそう聞いた


シルバー「まだ断片的だし確かじゃない」

稀龍「…………」

シルバー「?!」


稀龍はシルバーを優しく抱きしめた………あれだけ強く弱音も吐かないであろうシルバーの………弱々しい本音………失うことへの恐怖は誰しもあること………しかしシルバーはその想いが人一倍強いのだ


稀龍「たまにはさ………甘えたら?」

シルバー「…………(ほんとに稀龍には………)」


「敵わない」とシルバーは思った


シルバー「…………少しだけならな………」


稀龍やジングレイから感じる安心感で、シルバーは少しずつ心を開きつつあった………元々開いているように見せて開いていないその心は………強い火の力を持つのに反して酷く凍てつき凍っていた………誰も理解してくれない力と持てあました実力………プライドなんてものは気にするほどなく………ただ休める場所も時間もなかった………侵入者である自分を受け入れてくれる者は少なく………ずっと1人で先々代に世話になっていた………そんな中で最初にシルバーに声をかけたのはジングレイ………先代の息子だが扱いは酷くいつも1人でいたのだ………自然と2人は仲良くなりシルバーの持つ、ありとあらゆる戦術をジングレイに教えた………それをジングレイは魔族に提案したことで、シルバーはたちまち戦術者として打ち解けていった………だがそこまで行くのに20年も要しその間何度も殺されかけた


稀龍「シルバー  手  治療しよう」

シルバー「ああ」


そろそろ血の臭いが濃くなり始め稀龍がそう提案する


稀龍「血は固まってるけど………」

シルバー「恐らく固まった血の内部から多量に出血してる  手が変色してるからそうだろう」


シルバーの手は元の色を無くし赤黒くなっており、血の固まった内部からの出血によるものらしい


シルバー「内部の血を抜くから少し離れろ」


シルバーに言われ稀龍は少し離れシルバーは内部の血を抜く


(;´∀`)…うわぁ…


内部の血がかなり多かったらしくその場が血生臭くなったが、シルバーはそれに慣れているのか血を抜いてくすぐに止血し、治療を施して包帯を巻く


稀龍「慣れてるな」

シルバー「そりゃな………この世界に来た時に逆転したらしい………元々すぐに血が固まらなくて、よく多量出血してたんだが………この世界に来たら逆に固まるのが早すぎるんだよ」

大半は思い出したんだな………でも肝心な記憶は思い出せていない………


最も重要とされる記憶が戻ってきていないシルバー


シルバー「大半の記憶は思い出したんだ  だが肝心な記憶はない」

稀龍「それもそれで大変だな………」

シルバー「まぁな  そろそろ部屋に戻ろう」


シルバーがそう言い出したので稀龍も頷き部屋に戻る


~暫くして~

稀龍「…………」

少し外に出ようかな………


部屋についてから稀龍は外に出たくなり部屋を出る………何となくシルバーに声をかけようと部屋の前まで来たが………


稀龍「シルバー」

部屋「…………」

稀龍「?居ないのか?」

滅茶苦茶静かだな………居ないみたいだけど………

シルバー「………いや外出中なら鍵閉めとけよ………」

鍵空いてるとか不謹慎だな


シルバーの部屋には施錠がされておらず、いないと判断した稀龍が外から鍵をかけ外へ行く


シルバー「(危なかったな  この状態で入られるのはまずい)」


実は部屋の中にシルバーはいたのだが………部屋は血濡れになっており所々に千切れた肉が転がっていて、処罰をした魔族の残骸があるためわざと静かにしたのだ


シルバー「(まぁ寝たフリをすればいいだけの話だが………)」


一応臭いも見た目も変えられる能力があるので、万が一見られた時はその方法を取ればいい


シルバー「(多分ドン引きするからな)」


まだ稀龍は未知数であるが今の状況が確実に引くのはわかった




稀龍「…………」

前に来た時もそうだけどなんでここベンチ置いてあるんだ?


取り敢えず場内の外に出た稀龍は設置されている、黒いベンチに腰かけて風を感じる


ジングレイ「稀龍」

稀龍「グレイ」

ジングレイ「隣いい?」

稀龍「いいよ」


ふと私服のジングレイに声をかけられジングレイが隣に座る


ジングレイ「稀龍」

稀龍「ん?」

ジングレイ「俺  先代の王の息子なんだ  でも父さんは俺を見てはくれなかった………強さだけを求めてた  俺は強さよりも守りの方が強かったからさ………見放されてた」

稀龍「…………」

前王の息子………

ジングレイ「それでかなりやさぐれててさ………元々扱いが酷かったのもあって………孤立してた  そんな時に先々代の王がシルバー様を連れてきた………酷い負傷で回復できる魔族数人がかりで漸く回復した………目が覚めたら今度は記憶がなくて………すごい混乱してた………その後先々代の王に世話になりながらこの城で過ごしてて………「侵入者」と見なされてて孤立してたんだ………有り余る能力と戦術………持て余した実力を誰も理解しなかった………俺がシルバー様と出会ったのはここでさ………1人でここに座って遠い目で外を眺めてた………泣きそうな顔で座ってたんだ………それで声をかけた………そこから少しずつ打ち解けてきたんだけど………ある日事件が起きたんだ  シルバー様が突然叫び出してその場が炎に包まれた………泣き叫びながらどんどん炎が広がっていって………丁度来ていた黒魔族のアールシキール様の奥様  クロリア様が水の力を使って鎮火してくれたけど………シルバー様は尚も泣き続けていた………よく見たら足元に壊れた武器があって………シルバー様が頭を抱えながら泣いていた理由がわかった………壊れていた武器はシルバー様が毎日手入れをしてたもので………常に肌身離さず持っていた小太刀だった………修復が出来ないくらいバラバラで………鎮火されても泣き続けていた………水が乾けばさらに強い炎がその場に燃え広がり、クロリア様も繰り返し上がる炎に疲弊し始めた頃………先々代の王が騒ぎを聞き付けて出先から戻り、泣いているシルバー様を後ろから抱きしめた………そうしたら炎が少しずつ消え始めて………シルバー様も落ち着き出した………炎が消えたことで、3人の魔族が丸焦げになってるのが発見されて………シルバー様を2人で押さえ込んで小太刀を奪い、シルバー様の目の前で破壊したのだとその場が理解した………シルバー様は「大事なものだったんだ」と………また泣きながら先々代の王に訴えていた………「死んだ双子の兄の形見だった」と………そう言って泣いていた………失われた記憶が戻った代償に………シルバー様は大切なものを壊された………その時からシルバー様は少しずつ人が変わっていった………食堂にはほとんど来なくなったし………1人で訓練して力をつけるようになった………唯一俺と先々代の王だけは私室に入れてもらえてさ………その時に背中を見た  背中は虐待の跡を色濃く残していて………両手には酷い火傷の跡が残ってた………だから常に黒い手袋をしてた  背中の傷跡は消そうと思えば消せる傷だけど………手だけはもう治りようがないからと………治療を拒否されてさ………シルバー様の炎の事件から数ヶ月たった頃………またここに1人でシルバー様がいた  それで後ろが少し空いてたから背中合わせに座って、出てい盾を優しく触ったらさ………シルバー様泣いたんだよ………「寂しい」って………「帰りたい」って………」


ジングレイが知るシルバーの過去………この世界に来た当初はとても情緒が不安定だったこと……シルバーとジングレイがいかに長く一緒にいるのかを………


稀龍「………泣くのか  あの人」

ジングレイ「人前では泣かないよ  その日を境に泣かなくなった」

稀龍「…………」

ジングレイ「稀龍  シルバー様には温もりが必要なんだ  「人」の温もり………魔族である俺らでは手があつすぎる………君ならきっとシルバー様の心の氷も溶かせるから」


ジングレイはそう言って立ち上がり去っていった………













稀龍に1つの淡い希望を託しながら………
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