若き頭領

ハーマ

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救済

乗り越えなければならない試練 也真登編

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也真登視点

ガルガード「………火牙刀」

火牙刀「夢を見たとかなんとかで深夜に忍び込んできてこの状態です」

火牙刀が自分の過去と向き合い2度目の喪失を味わった数日後  与えた部屋に也真登がおらず取り敢えずで来た火牙刀の部屋に也真登は居て……嫌な夢を見たのかなにかで火牙刀のベッド中で火牙刀の腰をホールドして今尚夢の中

ガルガード「やっぱり家族がいる方が落ち着くんだな」

火牙刀「也真登はまだ子供です………なのに過去に起きたトラウマや経験した事が余りにも子供離れしすぎている」

ガルガード「…………」

火牙刀「半狂乱にならないだけマシです  俺の所に来た時は既に半狂乱になりかけていた」

火牙刀は今尚眠っている也真登の頭を撫でつつ少し動く

ガルガード「俺からしたら………火牙刀も悲しみを背負っているけどな」

火牙刀「俺はジーガン達に救われましたから……今度は也真登の番になるでしょう」

也真登「ん……?」

火牙刀がそこまで言った頃に漸く也真登の目が覚めガルガードの所へ

ガルガード「大丈夫か?」

也真登「大丈夫です」

ガルガード「昨日言ったが今日は俺も外に出るから也真登も参加してくれ」

也真登「覚えています」

也真登  記憶力の低下も治ったし首の装置も外れた……なのに心は満たされず枯れていて……

ジルウェーゼ「也真登さん  大丈夫ですか?」

也真登「え?」

ジルウェーゼ「無意識に武器を解体していたので大丈夫かなって……」

ガルガードが部隊の編成などを話している中也真登は無意識に武器を解体していた

也真登「大丈夫」

ガルガード「也真登は俺と一緒に来てくれ」

部隊の編成などを終えガルガードが也真登にそう言うので也真登はそれに頷きガルガードの後ろを歩く

ガルガード「ジーファ  レオンは今戦闘に行っているから俺が帰るまでアルタイルはお前が護れ」

ジーファ「御武運を」

自分の息子であるジーファに組織を任せてガルガード達も戦場へ

也真登「薬品の臭い……」

戦場となる場所に着くと同時に也真登がそう言う

ガルガード「確かに……ここからでもかなり強い薬品の臭いがするな」

也真登「多分ガルガードさん達がよく知る薬品です  この独特な強い臭いを忘れるわけが無い」

ガルガード「…………」

ガルガードは自分が完全に也真登の地雷を踏んだ事を知り口を閉ざす

也真登「絶対に忘れない  この臭いだけは」

ガルガード「…………」

握った刀から微かに血を滲ませる程也真登は漂っている薬品に恨みが強い

ガルガード「也真登  俺の後に続け………それ以外は予定通りに」

ジルウェーゼ「はっ!!」

ガルガードの声で敵が気がついたのか激しい戦闘になったが……也真登はその中でたった1人を見据えている……明らか安全地に立ち自分達を見下ろすその人を……

也真登「……2年ぶりですか  深紅さん」

そう……也真登達を見下ろしていたのは2年前に死んだ筈の深紅

深紅「……大きくなったな  也真登」

彼はそう言いながらゆっくりと歩き出し也真登やガルガードに見える位置に立つ

也真登「貴方が死ぬ所を俺は見たはずです」

深紅「確かに俺は1度死んだ」

也真登「だけど生きている」

深紅「唯の生きる屍だよ」

短い言葉の最中に見せる也真登の悲しげな顔……目の前にたっている深紅……本当は敵対などしたくはない唯一の相手

深紅「剣を持て也真登」

也真登「避けられぬ運命ですか……」

深紅「薬の毒に犯され屍となった俺を救ってみせろ  也真登」

也真登「貴方がそう望むのであれば」

深紅  優しさは変わらないんだな……也真登

深紅は也真登に嘘をついた訳では無いが本当の事を言っている訳では無い……「救う」と言う意味では同じなのだから……

ガルガード「総員也真登のサポートを!!!!」

也真登  流石はアルタイル最強部隊……敵の殲滅が早い

最強部隊ならではの強さで残る敵は深紅だけだが……也真登は邪魔をさせない様に動いているのでガルガード達はサポートに回る

深紅「也真登  逃げてばかりでは救えないぞ」

也真登「「戦うのならば状況の把握が最優先」と言っていたのは貴方ですよ」

深紅「それもそうだったな」

一方的に深紅の攻撃を受けつつも也真登はその場所の地形を理解しつつ攻撃をガード

也真登「っ!!!!」

深紅「敵に背中を向けてどうする」

状況の把握を最優先していた也真登は深紅に背中を向けてしまい昔の古傷が攻撃によって開き、深紅が感じている気持ちや過去の記憶を知ってしまう

也真登「…………」

也真登  深紅さんは俺の事を……「好き」………?

深紅「攻撃するべきではなかったな」

也真登「(本当は敵対などしたくはない……傷つけたくもない………あの傷跡を開かせたくもなかった………)」

傷を負う事に知ってしまう深紅の本音……全てを知ってしまった也真登は腹を括り持っていた刀をガルガードの方に投げ「預かって下さい」と言う

ガルガード「お前刀これ1本しかないんじゃ……」

也真登「もう1本………有るんですよ」

そう言って也真登は持っていたナイフで長くなった髪をバッサリと切り前髪を上げて左の耳上も上げる……するとそこには内に隠されていた銀髪が鮮やかに現れ也真登が本気になったのだと全員が察知

也真登「この刀を………貴方を「救済」する為に使います」

也真登が取り出したのは深紅が己の死に際に也真登へ渡した刀……「紅蘭(こうらん)」

深紅「俺がお前に渡した刀か」

也真登「貴方を救う為にはこの刀の意思が必要になるのはご存知かと………しかし俺はまだ彼に「主」とは認められていない」

深紅「俺でさえ扱いに困る位には厳しいからな」

也真登「けれどだからこそ俺は彼と共に歩まなければならない道がある」

まるで何かを念じているかのような声だが……その瞳も顔も本気そのもの

深紅「……さぁ……最初で最後の救済活動と行こうか  お前が負ければ俺はお前を殺し、お前が勝てば俺は救済される」

也真登「勝つか負けるか2つに1つ」

そう言って2人の激しい攻防戦が始まった……傷つき高め合い優しさを共有しながら……

也真登  ……きっと俺は……深紅さんを救うのではなく深紅さんに「救われる」…………

紅蘭『やっと深紅の心を理解したな  也真登』

不意に也真登が深紅を理解した時……也真登の持つ紅蘭が淡く光りそう言う

紅蘭『私は紅蘭………深紅がお前の為に作り上げた最初で最後の1品』

也真登  初めまして紅蘭……俺の大切な刀……

紅蘭『この私の声が届けば私の主はお前だ……也真登』

也真登  認めてくれたのか?

紅蘭『私は待っていたのだ……この時を……也真登が深紅をも越え仲間の為に戦うその日を……』

也真登  俺は一生深紅さんを越えられないよ  唯苦しみから解放させることしか出来ない

紅蘭『それでいい……深紅はそれを望み今お前と戦っている』

也真登  強さは勝っても優しさや人を思う気持ちは明らか深紅さんが上を行く……深紅さんに渡されたこの想いは永遠に俺と共にある

紅蘭『深紅はお前が自分よりも強くなった事を心から喜んでいる……昔は護られる側だったのに今では護る側になったからな』

也真登  いつの日か本当に深紅さんを越えられる日が来るんだろうか……

紅蘭『きっと来る……深紅を越えるその日が』

也真登「深紅さん  俺はまだ貴方を完全には越えることは出来ない……けれどいつの日か貴方を越えてみせる……その時は祝福してくれますか」

深紅「勿論だ」

也真登「その言葉を聞けてよかった……」

深紅も傷つき也真登も傷ついて色々な所から血が流れている2人……也真登は覚悟を決めたのか一旦深紅から遠のいたが……

也真登「蹴りをつけましょう  深紅さん」

深紅「ああ」

2人は構えを取る……次に刃が交わり大量の出血をした方が死ぬ

也真登「深紅さん  貴方を救う」

深紅「俺を超えてみせろ  也真登」

そう言いながら2人は同時に走り出し……

「キィン……」

一瞬だけ刃が交わる……

也真登「勝負………ありましたね」

そう言う也真登は銅と腕、頬から出血

深紅「お前の勝ちだ  也真登」

そして深紅は……背中から大量の出血をし勝敗は也真登に上がった

深紅「也真登  俺にとってお前は大切なな人だった」

ふと深紅が背を向け刀の血を振り落として鞘にしまった時……深紅がそう言う

深紅「……也真登  お前は俺の誰よりも大切で大事な人だ」

也真登「深紅さん  貴方は救われましたか」

深紅「救われたよ  十分すぎる程に」

也真登「……安らかにお眠り下さい深紅さん………俺にとっても貴方は俺の大切な人だった」

その言葉に深紅は満足したのか口角を上げながら「スゥー」と消えていった……

也真登「貴方なりの最後の告白……確かに受け取りました」

也真登は決してその場で涙は見せない……

也真登「そして俺は貴方に救われた」

そう言って也真登はガルガードの所に戻り傷を癒して貰ってから組織の城の自分に与えられた部屋に戻った

也真登「………っ………」

也真登は1人しかいないその部屋で口を抑えながら涙を流した……誰もいないからこそ也真登は嗚咽を漏らす……救済して救済をされた也真登……誰よりも深紅との記憶を刻んだ幼い少年……




人前では泣かないと言う也真登なりの礼儀……その美しい瞳から流れる涙は深紅に救われ深紅を救った也真登なりの……覚悟の証なのだ……
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