制裁

ハーマ

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友として

真の願い

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夜月(ないと)視点

夜月「…………」

蓮『会えることなら会いたいが………昔に比べて人相が変わったからな』

最初見たときは確かに分からなかった………でも首のあの傷は確かにあの日………兄貴が負った致命傷の跡………生きていると信じて今の今まで生きてきた………でもまさかこんな形で再会するなんて思ってなかった………


蓮の首に残る致命傷である刀傷は数十年前  蓮が夜月を守るためにおった傷であり………その時の夥(おびただ)しい出血から死んだと断定されていたのだ


夜月「…………」

兄貴は気がついているのだろうか………俺が弟であることを………写真たてを伏せたことを………


真に部屋に案内された際  夜月はベッドサイドテーブルにある写真を見ていた………首の傷跡と写真を見て蓮が兄だと分かったのだが………決定打としては写真と傷跡ではまだ弱くもっと強い証拠が必要になる


夜月「…………」

息子とは「泣き別れた」と言っていた………もしかしたら戦争で離れなければならない状況に陥ったのかもしれない………そうなれば息子を見つけた方が兄だと断定するのも早い気が………


などと1人悶々と考えているのだが………そんなこととはつゆ知らずの蓮は静かに食事をしている(夜月は食事済み)


蓮「ゲホッ………ゲホゲホ……………はぁ………」

そう言えば兄貴は生き別れる前に戦闘で肺にかなりのダメージを受けた………それによって時々強い痛みと咳が出ると言っていた………


蓮の持つ後遺症を知っている夜月にとって今の咳がどれだけの痛みがあるのかを知っていて、少しずつ蓮が生き別れた兄だとわかる


夜月「…………」

ただ兄貴を「仲間」として見るのには無理がありすぎる………「兄弟」なら今すぐにでも心を開けるが………


いくらなんでも「兄弟」としてでは無く「仲間」として見るにはあまりにも無理がありすぎるのだ


夜月「…………」

考えるのやめてもう寝よう………


蓮が寝る準備をし始めたので夜月も考えるのをやめて本当に寝る


~朝~

夜月「…………」

蓮「zzz………」


朝  タンクトップとスウェット姿の蓮に腕枕をされて抱きしめられている状態で目が覚め、一瞬目の前の出来事が理解出来ず叫びそうになったが何とか堪えた


夜月「…………」

そう言えば家にいた頃はよくこうして寝てたっけ………兄貴は元々体格が良い上に暖かいから


懐かしい記憶を思い出しながら夜月は蓮が起きないようにベッドから出る


「コンコン」

夜月「…………」

「ガチャ」

真「うわっ」

夜月「…………」

真「おはよう」

夜月「………おはようございます」


ふとノックオンが聞こえて覗き穴を見た夜月が無言でドアを開けたので、突然のことに驚いた真が間を置いて挨拶をしそれを夜月も返す


真「将官寝てる感じ?」

夜月「………寝てる」

真「そっか  なら出直すよ」

蓮「………ん?今何時………………やべ遅刻した!!」


真は蓮に用があった様だが寝てるということで出直そうとした矢先に蓮が飛び起き、真が廊下から「療養命令出てるでしょ」という言葉に蓮も落ち着いた


蓮「夜月  真なら入れて大丈夫だ  総裁と真以外は入れないようにしてくれればいい」

夜月「………分かった」

真さんと総裁以外は部屋に入れないんだな………それだけ警戒してるんだろうけど


蓮は昔から決まった人しか部屋に入れないので総裁が誰なのかは夜月は知らないが、完全に気を許しプライベートでも関わりがあると理解した


真「珍しいな  この時間に寝てるの」

蓮「予想外に疲れていたらしい  後夜月の抱き心地良くてな」

夜月「………俺を抱き枕にするな」

蓮「悪かったよ  ただ震えてたから少し温めようと思ったら案外抱き心地良くて落ちた」

つまり最初は本当に温めようとしてそのまま寝落ちしたのか………確かに暖かかったけど………


蓮「と言うか真  お前あの後どうした?」

真「あっそうそう  俺今日付けでα隊の隊長に就任した  前隊長が俺を推薦して功績が基準を上回ってそれの引き継ぎ」

あれ………顔が曇った………

蓮「つまり今まで以上に会いにくくなるしこの関係も難しくなるのか」

真「そうなる  ………俺断ったんだけど尉官に強引に隊長に就任させられてさ………」

蓮「あの馬鹿いつか刺されるぞ」


そんなことを言う蓮だが顔は悲しそうで寂しそう


蓮「パートナーなのに2人きりになるかプライベートでしかタメ口で話せねぇのに………更にかよ………意味ねぇだろパートナーの」

真「そればっかりは俺にもどうすることも出来ないよ………」

蓮「はぁ………」

兄貴と真さんパートナー歴長いんだな………ただ軍位が兄貴のが高いからタメ口で話すのも注意がいる………


真「あと征也さんから夜月君に郡内の案内を頼まれたんだ」

蓮「なら軽食作るから待ってくれ」

あっ俺が他人を警戒して食事しないのを懸念してる………


蓮と真のパートナー歴が長いことを知りつつ蓮が軽食を作るのを後ろから見る夜月


夜月「…………」

やっぱり利き手は左………料理中の癖も同じ………


兄の癖を熟知しているからこそ1mmも見落とさない夜月


蓮「真  持って行ってくれ  お前の分も作っておいた  水筒の中にスープも入ってる」

真「いつ見ても手際がいいな  総裁から怪我治るまで部屋を出るなって達しだ  夜月君行くよ」


真は蓮にそう言って夜月と一緒に軍内を回る


~そして最後に食堂へ~

真「適当に座って  今スープ温める」

夜月「(頷く)」


そして最後に食堂へ来た真と夜月は適当に空いていた席に座り蓮特製の軽食を食べる


真「所でいつ言うの?」

夜月「ぇ」

真「蓮将官の弟でしょ?」

夜月「?!」

なんでそれを知って………

真「将官を見る目が違う  君の向ける目線は完全に「兄」を見る目だ  後聞いている話の特徴が合致している」

夜月「つまり………最初からわかっていたんですか………」

真「伊達に将官のパートナーやってないからね  経歴が異常なんだよ蓮将官  俺も人のことは言えないけど僅かな動きであろうと人の嘘は見破れる  俺の目は他の奴らよりも特殊で見破りやすいんだよ」

つまり俺が部屋に案内された時にはもう気がついていて兄貴に気を使って言わなかったんだ……


真は人よりも嘘や表情の変化に鋭く気がつくため、最初から夜月が蓮の話で出てきた弟だと気がついていたのだ


真「俺は将官にこのことを言う気は無い  君から言った方が納得するだろうし………………俺はもう長くない」

夜月「え?」

真「元々能力者じゃなかったんだ  だが拷問による拷問で能力を得た  それの効果で今まで生きてきたが………もう潮時なんだ  長くて20年………短くて8年が限度だ  だから隊長就任を断り続けてきた………この話蓮将官に言うなよ?」

夜月「…………」


真は拷問による拷問で能力を得た為に他の能力者よりも短命であり、既にタイムリミットは動き出していた


真「夜月君  君なら蓮将官の「孤独」も癒せる  だから生きてくれ  そしていつの日か天に召された時に俺に教えて欲しい  どう生きてきたのかを」






夜月にはその言葉が余りにも残酷で美しい仲間への愛だと思った………
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