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ピンチはチャンス? でもやっぱりピンチでしょっ!②
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さてさて到着の、最終試験場。
塔の中を上ってきたはずなのに、洞窟の中の大空間っていう風情。
すり鉢状に真ん中を見下ろす型。
そこに響くクラムド=グリシャの声。
『尻の殻もとれぬひよっこどものわりには、よくここまで来たの』
どこからかこちらを見ているのはわかるけど、不可視化を使っているのか、それとも魔法道具を使っているのか、塔全体がクラムド=グリシャの魔法を帯びていて、見当がつかない。
ここに来るまでに疲労困憊で土埃まみれになっている主人公たち(特にナジャ君)は、ハイテンションからローテンションまで口々にクラムド=グリシャに対して文句をいっている。
さすがに大人組は口にはしていない。イスリオをはじめ騎士さんたちは汚れるのもいとわず体力勝負のところでは頑張ってくれた。
でも、『試練』とはいってくるけど、どれもビミョーにくだらない。
クラムド=グリシャが楽しんでるだけ、って感じがあからさまなものだから、いつもよりよれっと汚れているサルファス王子なんて、顔は笑顔をキープしてるけど、絶対ムッとしてる。
やることさえやらせたら、あとはどう詰めてやろうか、ってやり方を百八通りくらい考えてそう。
さすがの腹黒王子サマ。
私としては、モブくサポートに徹します。
と、気づいたら、持ってきてたお水がきれちゃってる。
元気よくクラムド=グリシャに文句叫んでるナジャ君の横で、テンションフラットのまま悪態ついてるアクシオ君にこっそり近寄って声をかけた。
「ねぇ、少し『水』をつくってくれないかな?」
頼みごとをする立場として、微笑んでみせますが、
「……なんで」
あまり効果はないようで。
オネーサンが頼んでいるのにっ、ってメインキャラならごねられるんだろうけど、モブは丁寧にお願いたします。
「飲み水がきれてしまったのと」
「あのバカどものせいで」
叫び続けているナジャ君と同じテンションのメインキャラたち。
うん。確かにそれもある。
でも、群衆でならともかく、モブ単品ではメインキャラへの非難は控えさえていただいております。
「ポーションばかりに頼るのは、自然治癒力を落とすことになるから、動けなくなるようなケガ以外は、今は控えておきたいの。
でも、小さな傷だとしても、患部はきれいにしておきたいし。
足首や手首を痛めて腫れてしまっている人には、せめて水で冷やしてあげたいの」
捻挫はやった直後で腫れてるときは冷やす、腫れが引いたら温めて血液を循環させるのが、早く治すコツだそうで。
「………なんで」
いや、理由、これしかないんだけど。
「あぁ、今の『なんで』は『なんであなたが飲み水の管理とか、怪我の対応とかしてくれてるんですか?』の『なんで』っすよ」
近くにいたナジャ君が通訳してくれた。ありがとう、ナジャ君。
にしても、省略がすぎるでしょう、アクシオ君。
「そうだね。
誰かがやらなきゃいけないことで、私ができることならやろうかな、ってくらいだよ。
私には自分で発現できる魔法もないし、騎士様方みたいな動きも技術もないしね。
それでもここにいるのなら」
じゃないと、『あ、忘れてた』なんていわれてギャグパートとして置いて行かれたりするかもしれないしっ。
適度に存在意義を出しつつ、メインの動きには関わらない。
これがも正しいモブの姿でしょ。
とっても当たり障りのない、モブ的回答をしたのに、ラクロア君はなぜか私をじーっと見下ろし続ける。
この子も背が高いんだよね。
イスリオほどじゃないけど、サルファス王子よりちょっと低いくらい?
まだまだ成長期だから、これからもっと伸びるかもねぇ。
『そこ。なにをこそこそ話しておるのじゃ』
サルファス王子が魔王を倒すために協力してほしいとクラムド=グリシャを説得してるっていうのに、当の本人はぽしょぽしょ話していたこっちが気になるみたい。
メインキャラの面目つぶすの、やめてもらえはせん?
やめないとしたら、私がまったく関わっていないところ限定にしてくださいませ。
とにかく最終試練として出されたお題は、『クラムド=グリシャ当て』。
くっだらないと思うと思うんだけど、本当にそうなんだもの。
広間いっぱいに現れた人々。
老若男女、大中小。性別も衣装も様々。
他にも、この世界にはいない獣人っぽい人や、尾びれで立って(?)いる、等身大の魚類とか。
とにかくめちゃめちゃな生き物たちが、突如として所狭しと大空間に現れた。
これもクラムド=グリシャの魔法の一端なのね。
『ほれ、ワシを当ててみるがよい。
ただし機会は一度きりじゃ』
もう、完全に遊んでるでしょう、これ。
オチと答えを知っている身としては、ただただ脱力。
それより、早くお水作ってほしいな、アクシオ君。
塔の中を上ってきたはずなのに、洞窟の中の大空間っていう風情。
すり鉢状に真ん中を見下ろす型。
そこに響くクラムド=グリシャの声。
『尻の殻もとれぬひよっこどものわりには、よくここまで来たの』
どこからかこちらを見ているのはわかるけど、不可視化を使っているのか、それとも魔法道具を使っているのか、塔全体がクラムド=グリシャの魔法を帯びていて、見当がつかない。
ここに来るまでに疲労困憊で土埃まみれになっている主人公たち(特にナジャ君)は、ハイテンションからローテンションまで口々にクラムド=グリシャに対して文句をいっている。
さすがに大人組は口にはしていない。イスリオをはじめ騎士さんたちは汚れるのもいとわず体力勝負のところでは頑張ってくれた。
でも、『試練』とはいってくるけど、どれもビミョーにくだらない。
クラムド=グリシャが楽しんでるだけ、って感じがあからさまなものだから、いつもよりよれっと汚れているサルファス王子なんて、顔は笑顔をキープしてるけど、絶対ムッとしてる。
やることさえやらせたら、あとはどう詰めてやろうか、ってやり方を百八通りくらい考えてそう。
さすがの腹黒王子サマ。
私としては、モブくサポートに徹します。
と、気づいたら、持ってきてたお水がきれちゃってる。
元気よくクラムド=グリシャに文句叫んでるナジャ君の横で、テンションフラットのまま悪態ついてるアクシオ君にこっそり近寄って声をかけた。
「ねぇ、少し『水』をつくってくれないかな?」
頼みごとをする立場として、微笑んでみせますが、
「……なんで」
あまり効果はないようで。
オネーサンが頼んでいるのにっ、ってメインキャラならごねられるんだろうけど、モブは丁寧にお願いたします。
「飲み水がきれてしまったのと」
「あのバカどものせいで」
叫び続けているナジャ君と同じテンションのメインキャラたち。
うん。確かにそれもある。
でも、群衆でならともかく、モブ単品ではメインキャラへの非難は控えさえていただいております。
「ポーションばかりに頼るのは、自然治癒力を落とすことになるから、動けなくなるようなケガ以外は、今は控えておきたいの。
でも、小さな傷だとしても、患部はきれいにしておきたいし。
足首や手首を痛めて腫れてしまっている人には、せめて水で冷やしてあげたいの」
捻挫はやった直後で腫れてるときは冷やす、腫れが引いたら温めて血液を循環させるのが、早く治すコツだそうで。
「………なんで」
いや、理由、これしかないんだけど。
「あぁ、今の『なんで』は『なんであなたが飲み水の管理とか、怪我の対応とかしてくれてるんですか?』の『なんで』っすよ」
近くにいたナジャ君が通訳してくれた。ありがとう、ナジャ君。
にしても、省略がすぎるでしょう、アクシオ君。
「そうだね。
誰かがやらなきゃいけないことで、私ができることならやろうかな、ってくらいだよ。
私には自分で発現できる魔法もないし、騎士様方みたいな動きも技術もないしね。
それでもここにいるのなら」
じゃないと、『あ、忘れてた』なんていわれてギャグパートとして置いて行かれたりするかもしれないしっ。
適度に存在意義を出しつつ、メインの動きには関わらない。
これがも正しいモブの姿でしょ。
とっても当たり障りのない、モブ的回答をしたのに、ラクロア君はなぜか私をじーっと見下ろし続ける。
この子も背が高いんだよね。
イスリオほどじゃないけど、サルファス王子よりちょっと低いくらい?
まだまだ成長期だから、これからもっと伸びるかもねぇ。
『そこ。なにをこそこそ話しておるのじゃ』
サルファス王子が魔王を倒すために協力してほしいとクラムド=グリシャを説得してるっていうのに、当の本人はぽしょぽしょ話していたこっちが気になるみたい。
メインキャラの面目つぶすの、やめてもらえはせん?
やめないとしたら、私がまったく関わっていないところ限定にしてくださいませ。
とにかく最終試練として出されたお題は、『クラムド=グリシャ当て』。
くっだらないと思うと思うんだけど、本当にそうなんだもの。
広間いっぱいに現れた人々。
老若男女、大中小。性別も衣装も様々。
他にも、この世界にはいない獣人っぽい人や、尾びれで立って(?)いる、等身大の魚類とか。
とにかくめちゃめちゃな生き物たちが、突如として所狭しと大空間に現れた。
これもクラムド=グリシャの魔法の一端なのね。
『ほれ、ワシを当ててみるがよい。
ただし機会は一度きりじゃ』
もう、完全に遊んでるでしょう、これ。
オチと答えを知っている身としては、ただただ脱力。
それより、早くお水作ってほしいな、アクシオ君。
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