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新しい婚約者とルルと一緒に幸せな生活
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(この声……)
顔を少し後ろに向ければ、そこには想像していたとおりルークス様の姿が。
険しい顔をしながら、目を細めてワンダー様を睨んでいる。
「どうしてルークス様が?」
「今日、アンジュールの卒業パーティーだと聞いていたから」
殿下はそう言うと右側の方を見たんだけど、そこには従者がいた。
彼の手には大きな花束が。
もしかしたら、卒業のお祝いに来てくれたのかもしれない。
「せっかくの卒業という記念すべき日に、まさかこんな事になっているとは思ってもいなかった」
ルークス様があきれ顔でワンダー様を見れば、彼は身を縮こませた。
さっきまでのあの強気なワンダー様はどこに消えてしまったのだろうか。
今ではすっかり借りてきた猫状態だ。
「ワンダー。お前とアンジュールが結婚することは今後ない。アンジュールとお前の婚約はノイ侯爵によって破棄されている」
「父上、どういうことですか!?」
「アンジュール嬢への仕打ちを私が知り、そのまま婚約させると思っているのか? どれだけおめでたいんだ。お前が次期侯爵としての自覚不足のせいで、うちが被害を受けたんだぞ」
「どうしてうちが?」
「政略結婚だったことを忘れたのか。侯爵家も伯爵家もそれぞれメリットがある結婚だったのに、お前のせいでぶち壊しになったんだ」
「そんな……」
ワンダー様はその場に崩れ落ちしてしまった。
(少しかわいそうな気がするが、自業自得なのよね……)
「アンジュール様はそれでよろしいんですの!?」
「えっ?」
これで終焉を迎えるかと思ったけど、突然シルビアがそう私に叫んだ。
そのため、私は目を大きく見開いてしまう。
よろしいんですか? と問われても、よろしいです以外の答えが出てこない。
むしろ、ワンダー様と私が婚約破棄した方がシルビアにとっては良い事ではないだろうか?
「シルビア、どういうことですか……?」
「アンジュール様。ワンダー様との婚約破棄を受け入れてしまってよろしいんですの? 侯爵家への嫁入りなんですよ? 私、二番目でも大丈夫ですわ。アンジュール様からお願いすれば、ワンダー様との婚約が復活するかもしれません」
「そ、そうだな! シルビアは頭がいい。アンジュール。お前から父上に言うんだ。お前だって、侯爵家への嫁入りは箔がつくだろう」
どうやらワンダー様もシルビアも私に頭を下げさせたいらしい。
自分達のために……
きっと私がワンダー様達のことを受け入れれば、侯爵家に戻れると思っているのだろう。
なぜ私が頭を下げると思っているのだろうか。
私が拒絶のために口を開こうとした時だった。
先にルークス様が言葉を発したのは。
「さっきも言ったが無理だ。アンジュールとワンダーの婚約は破棄されている。それに、アンジュールには新たな婚約者がいる」
「えっ? 本当ですか?」
寝耳に水。自分のことなのに、全然知らなかった。
「俺は聞いていません! 一体誰ですか? まぁ、でもうちよりも上の爵位の人間ではないでしょう。ほら、アンジュール。俺と婚約をした方がいい」
「兄上ってほんとうに愚かですね。どうして殿下がここにいるのかわからないんですか? 殿下がなぜアンジュール様の卒業パーティーに駆けつけたのかわかりませんか? 執務で忙しいのにわざわざ殿下が時間を作って来たんですよ?」
「まさか!」
驚いたのはワンダー様だけじゃない。私もだ。
「もしかして、私の新しい婚約者はルークス様なんですか!?」
そう尋ねれば、ルークス様がやわらかく微笑む。
「あぁ、そうだ。自分の口から伝えたいから皆には口止めをお願いしていたんだよ。まさか、こうなるとは想像もしていなかったが……」
「ありえない! アンジュールがまさか王族となんて! 俺にすら王族との縁談がないのに。二人に接点ないんじゃないか」
「あるぞ。ルルだ」
「ルル……?」
「植物園でアンジュールが助けた猫だ。お前がアンジュールを置いて先に帰った後、俺が彼女とルルと出会ったんだよ」
ワンダー様は極限まで目を大きく見開くと、顔を歪ませ歯ぎしりしながら床を拳で叩いた。
私に王族から縁談があったこと。
あの時の猫が私と殿下の縁を取り持ったこと。
きっと色々な感情が溢れているのかもしれない。
「アンジュール」
「は、はい」
ルークス様が真剣な眼差しで私を見つめたので、私は姿勢を正す。
すると、ルークス様が跪き、私の手を取った。
強いルークス様の眼差しに、時が止まったかのように身動き出来ない。
どきどきと鼓動が高まり、殿下に触れられている手が熱い。
「……アンジュール、愛している。俺と結婚して下さい」
「わ、私でいいんですか?」
「アンジュールじゃないとだめだ。ルルも一緒に幸せにする」
「はい、よろしくお願いします」
そう返事をすればルークス様に抱きしめられる。
私も手を伸ばしてルークス様のことを抱きしめれば、抱きしめてくれる彼の手に力が込められた気がした。
卒業パーティーから1年後。
私はルークス様と結婚し、ルルと共に居住地を王宮に移し毎日幸せに暮らしている。
顔を少し後ろに向ければ、そこには想像していたとおりルークス様の姿が。
険しい顔をしながら、目を細めてワンダー様を睨んでいる。
「どうしてルークス様が?」
「今日、アンジュールの卒業パーティーだと聞いていたから」
殿下はそう言うと右側の方を見たんだけど、そこには従者がいた。
彼の手には大きな花束が。
もしかしたら、卒業のお祝いに来てくれたのかもしれない。
「せっかくの卒業という記念すべき日に、まさかこんな事になっているとは思ってもいなかった」
ルークス様があきれ顔でワンダー様を見れば、彼は身を縮こませた。
さっきまでのあの強気なワンダー様はどこに消えてしまったのだろうか。
今ではすっかり借りてきた猫状態だ。
「ワンダー。お前とアンジュールが結婚することは今後ない。アンジュールとお前の婚約はノイ侯爵によって破棄されている」
「父上、どういうことですか!?」
「アンジュール嬢への仕打ちを私が知り、そのまま婚約させると思っているのか? どれだけおめでたいんだ。お前が次期侯爵としての自覚不足のせいで、うちが被害を受けたんだぞ」
「どうしてうちが?」
「政略結婚だったことを忘れたのか。侯爵家も伯爵家もそれぞれメリットがある結婚だったのに、お前のせいでぶち壊しになったんだ」
「そんな……」
ワンダー様はその場に崩れ落ちしてしまった。
(少しかわいそうな気がするが、自業自得なのよね……)
「アンジュール様はそれでよろしいんですの!?」
「えっ?」
これで終焉を迎えるかと思ったけど、突然シルビアがそう私に叫んだ。
そのため、私は目を大きく見開いてしまう。
よろしいんですか? と問われても、よろしいです以外の答えが出てこない。
むしろ、ワンダー様と私が婚約破棄した方がシルビアにとっては良い事ではないだろうか?
「シルビア、どういうことですか……?」
「アンジュール様。ワンダー様との婚約破棄を受け入れてしまってよろしいんですの? 侯爵家への嫁入りなんですよ? 私、二番目でも大丈夫ですわ。アンジュール様からお願いすれば、ワンダー様との婚約が復活するかもしれません」
「そ、そうだな! シルビアは頭がいい。アンジュール。お前から父上に言うんだ。お前だって、侯爵家への嫁入りは箔がつくだろう」
どうやらワンダー様もシルビアも私に頭を下げさせたいらしい。
自分達のために……
きっと私がワンダー様達のことを受け入れれば、侯爵家に戻れると思っているのだろう。
なぜ私が頭を下げると思っているのだろうか。
私が拒絶のために口を開こうとした時だった。
先にルークス様が言葉を発したのは。
「さっきも言ったが無理だ。アンジュールとワンダーの婚約は破棄されている。それに、アンジュールには新たな婚約者がいる」
「えっ? 本当ですか?」
寝耳に水。自分のことなのに、全然知らなかった。
「俺は聞いていません! 一体誰ですか? まぁ、でもうちよりも上の爵位の人間ではないでしょう。ほら、アンジュール。俺と婚約をした方がいい」
「兄上ってほんとうに愚かですね。どうして殿下がここにいるのかわからないんですか? 殿下がなぜアンジュール様の卒業パーティーに駆けつけたのかわかりませんか? 執務で忙しいのにわざわざ殿下が時間を作って来たんですよ?」
「まさか!」
驚いたのはワンダー様だけじゃない。私もだ。
「もしかして、私の新しい婚約者はルークス様なんですか!?」
そう尋ねれば、ルークス様がやわらかく微笑む。
「あぁ、そうだ。自分の口から伝えたいから皆には口止めをお願いしていたんだよ。まさか、こうなるとは想像もしていなかったが……」
「ありえない! アンジュールがまさか王族となんて! 俺にすら王族との縁談がないのに。二人に接点ないんじゃないか」
「あるぞ。ルルだ」
「ルル……?」
「植物園でアンジュールが助けた猫だ。お前がアンジュールを置いて先に帰った後、俺が彼女とルルと出会ったんだよ」
ワンダー様は極限まで目を大きく見開くと、顔を歪ませ歯ぎしりしながら床を拳で叩いた。
私に王族から縁談があったこと。
あの時の猫が私と殿下の縁を取り持ったこと。
きっと色々な感情が溢れているのかもしれない。
「アンジュール」
「は、はい」
ルークス様が真剣な眼差しで私を見つめたので、私は姿勢を正す。
すると、ルークス様が跪き、私の手を取った。
強いルークス様の眼差しに、時が止まったかのように身動き出来ない。
どきどきと鼓動が高まり、殿下に触れられている手が熱い。
「……アンジュール、愛している。俺と結婚して下さい」
「わ、私でいいんですか?」
「アンジュールじゃないとだめだ。ルルも一緒に幸せにする」
「はい、よろしくお願いします」
そう返事をすればルークス様に抱きしめられる。
私も手を伸ばしてルークス様のことを抱きしめれば、抱きしめてくれる彼の手に力が込められた気がした。
卒業パーティーから1年後。
私はルークス様と結婚し、ルルと共に居住地を王宮に移し毎日幸せに暮らしている。
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