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番外編(書籍&webどっちも大丈夫版)
ライを驚かせよう!
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急遽入った商会の商談がファルマ近隣諸国で行われたので、私は仕事が終わるとライの元へ訪れるためにファルマ城へとやって来た。
大抵、ライのところに来る時は事前に連絡を入れている。
国王であるライは多忙。なので、城を不在にして他国への訪問など遠出している時もあるからだ。
いつもは連絡するけど、今回は急な商会の仕事だったのでライに連絡はしていない。
彼が居るか居ないかが不明だったけど、門を守護していた顔馴染みの騎士達に尋ねれば居るという返事が。
それを聞き、私は安堵すると同時にライと会えるって嬉しくなる。
彼に内緒で来たからライをびっくりさせたいなぁと思いながら廊下を歩いていると、いつも私が城に滞在するときにお世話をしてくれるメイドや侍女と遭遇。
彼女達にライを驚かせたいことを告げれば、協力してくれることになった。
皆でどうやって驚かせる? と考えた結果、変装してライをびっくりさせようという事になり、さっそく実行!
開いている部屋で支度を済ませた私は、目の前にある姿見を見詰めている。
そこには、メイド服を纏った少女の姿があった。
緑色の髪を二つに結っている。
私が右を向くのと同時に鏡の中の人も同様の仕草をする。
「私だってわからないですね。これなら、ライにバレないです」
私が言えば、周りに居た侍女達が大きく頷いた。
「えぇ。いくら陛下とはいえ、まさかティア様がメイドに変装しているなんて思いつきませんもの」
「今日はティア様の訪問予定はありませんし」
にこやかにメイド達が答えたので、私はライを驚かせられるっ! と確信。
「でも、ライとどうやって会うかですよね……廊下で待ち伏せをするとかですか?」
「ご心配には及びませんわ。ちょうど陛下にお茶をお持ちする時間なんですよ」
「良いタイミングですね!」
「お茶の準備は私達がいたしますので、ティア様は陛下の元へ」
「はい」
ライ、びっくりするかなぁ? と、ワクワクし始める。
ライはファルマという大国を統治しているためか、大きなリアクションをする時があまりない。そのため、ちょっと楽しみなのだ。
+
+
+
私はメイド達に準備をして貰った茶器セットが乗っているワゴンを押してライの執務室の前へ。
バ、バレないよね……? と、心臓がいつもよりも高鳴っている。
ノックをすれば、やや間があき返事が扉越しに届いてきた。
久しぶりに聞くライの声に、胸がじんわりとしていく。
ファルマとエタセルは距離があるし、ライも私も仕事があるため、頻繁には会えないから。
ライと会うのは二ヶ月ぶりだろうか。
私が扉を開けながら低めの声で「お茶をお持ちいたしました」と言いえば、正面奥にある執務机が目に飛び込んでくる。
ライがいた。
つい反射的に声をかけてしまいそうになるのをぐっと堪える。
彼は書類から目を離さず「テーブルの上に置いてくれ」という返事をした。
――よし! バレていない!
私はびっくりするだろうなぁと思いつつ、お茶をテーブルへと置きライの元へと進もうと思ったが、途中で足を止めてしまう。
それは、あまりにも彼が真剣な瞳で山積みになっている書類を片付けていたから。
ファルマという大きな国を背負っているので、色々と強い重圧もあるだろう。
私やメディと一緒に居る時は、そんな大変さを見せないけど……
じっとライのことを見すぎていたせいか、彼が顔を上げてしまったせいで、私とばっちりと視線が交わる。
「あっ、ごめん。集中できないよね」
つい地声で言葉を紡げば、ライがすごい勢いでガタッと椅子を鳴らしながら立ち上がる。
彼は何度も瞬きをすると、「えっ」という声を漏らす。
「ティア……っ!?」
今までで聞いた彼の声で、一番大きな声だった。
ライはまるで幽霊でも見たかのような表情をしたまま、ゆっくりと私の元までやって来る。
「仕事で近くまで来たから、ファルマに立ち寄ったの。ライを驚かせよ……――」
私の言葉はそれ以上続く事は無かった。
それは、ライに強く抱きしめられてしまったせいで。
「ティアに会いたかった」
まるで離さないとでも言わんばかりにぎゅっと抱きしめ、彼は私の首元に顔を埋める。
私も会いたかったように、彼も会いたかったんだって伝わってきた。
「ただいま、ライ」
幸せを噛みしめるように言いながら彼の背に手を回せば、「おかえり、ティア」というライの声が耳朶に届く。
私とライはまだ一緒に住んではいないけど、「おかえり」や「ただいま」って言葉を使用している。
最初はどちらから言い出したのかを忘れてしまったけれども、今ではそう言葉をかけるのが普通になっていた。
「びっくりした?」
「した。すっごくした。心臓早鐘」
ライが喉で笑いながら言う。
ライに抱きしめられているため、彼と私はぴったりと密接しているのでライの鼓動が伝わって来ているが確かに早い。
「本当だね」
とクスクスと笑っていると、ライの体が離れた。
かと思えば、突然こめかみに口づけを落とされたので「ラ、ライっ!?」という声が私の口から零れる。
「笑った罰」
ライが笑うと、今度は唇にキスをした。
大抵、ライのところに来る時は事前に連絡を入れている。
国王であるライは多忙。なので、城を不在にして他国への訪問など遠出している時もあるからだ。
いつもは連絡するけど、今回は急な商会の仕事だったのでライに連絡はしていない。
彼が居るか居ないかが不明だったけど、門を守護していた顔馴染みの騎士達に尋ねれば居るという返事が。
それを聞き、私は安堵すると同時にライと会えるって嬉しくなる。
彼に内緒で来たからライをびっくりさせたいなぁと思いながら廊下を歩いていると、いつも私が城に滞在するときにお世話をしてくれるメイドや侍女と遭遇。
彼女達にライを驚かせたいことを告げれば、協力してくれることになった。
皆でどうやって驚かせる? と考えた結果、変装してライをびっくりさせようという事になり、さっそく実行!
開いている部屋で支度を済ませた私は、目の前にある姿見を見詰めている。
そこには、メイド服を纏った少女の姿があった。
緑色の髪を二つに結っている。
私が右を向くのと同時に鏡の中の人も同様の仕草をする。
「私だってわからないですね。これなら、ライにバレないです」
私が言えば、周りに居た侍女達が大きく頷いた。
「えぇ。いくら陛下とはいえ、まさかティア様がメイドに変装しているなんて思いつきませんもの」
「今日はティア様の訪問予定はありませんし」
にこやかにメイド達が答えたので、私はライを驚かせられるっ! と確信。
「でも、ライとどうやって会うかですよね……廊下で待ち伏せをするとかですか?」
「ご心配には及びませんわ。ちょうど陛下にお茶をお持ちする時間なんですよ」
「良いタイミングですね!」
「お茶の準備は私達がいたしますので、ティア様は陛下の元へ」
「はい」
ライ、びっくりするかなぁ? と、ワクワクし始める。
ライはファルマという大国を統治しているためか、大きなリアクションをする時があまりない。そのため、ちょっと楽しみなのだ。
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私はメイド達に準備をして貰った茶器セットが乗っているワゴンを押してライの執務室の前へ。
バ、バレないよね……? と、心臓がいつもよりも高鳴っている。
ノックをすれば、やや間があき返事が扉越しに届いてきた。
久しぶりに聞くライの声に、胸がじんわりとしていく。
ファルマとエタセルは距離があるし、ライも私も仕事があるため、頻繁には会えないから。
ライと会うのは二ヶ月ぶりだろうか。
私が扉を開けながら低めの声で「お茶をお持ちいたしました」と言いえば、正面奥にある執務机が目に飛び込んでくる。
ライがいた。
つい反射的に声をかけてしまいそうになるのをぐっと堪える。
彼は書類から目を離さず「テーブルの上に置いてくれ」という返事をした。
――よし! バレていない!
私はびっくりするだろうなぁと思いつつ、お茶をテーブルへと置きライの元へと進もうと思ったが、途中で足を止めてしまう。
それは、あまりにも彼が真剣な瞳で山積みになっている書類を片付けていたから。
ファルマという大きな国を背負っているので、色々と強い重圧もあるだろう。
私やメディと一緒に居る時は、そんな大変さを見せないけど……
じっとライのことを見すぎていたせいか、彼が顔を上げてしまったせいで、私とばっちりと視線が交わる。
「あっ、ごめん。集中できないよね」
つい地声で言葉を紡げば、ライがすごい勢いでガタッと椅子を鳴らしながら立ち上がる。
彼は何度も瞬きをすると、「えっ」という声を漏らす。
「ティア……っ!?」
今までで聞いた彼の声で、一番大きな声だった。
ライはまるで幽霊でも見たかのような表情をしたまま、ゆっくりと私の元までやって来る。
「仕事で近くまで来たから、ファルマに立ち寄ったの。ライを驚かせよ……――」
私の言葉はそれ以上続く事は無かった。
それは、ライに強く抱きしめられてしまったせいで。
「ティアに会いたかった」
まるで離さないとでも言わんばかりにぎゅっと抱きしめ、彼は私の首元に顔を埋める。
私も会いたかったように、彼も会いたかったんだって伝わってきた。
「ただいま、ライ」
幸せを噛みしめるように言いながら彼の背に手を回せば、「おかえり、ティア」というライの声が耳朶に届く。
私とライはまだ一緒に住んではいないけど、「おかえり」や「ただいま」って言葉を使用している。
最初はどちらから言い出したのかを忘れてしまったけれども、今ではそう言葉をかけるのが普通になっていた。
「びっくりした?」
「した。すっごくした。心臓早鐘」
ライが喉で笑いながら言う。
ライに抱きしめられているため、彼と私はぴったりと密接しているのでライの鼓動が伝わって来ているが確かに早い。
「本当だね」
とクスクスと笑っていると、ライの体が離れた。
かと思えば、突然こめかみに口づけを落とされたので「ラ、ライっ!?」という声が私の口から零れる。
「笑った罰」
ライが笑うと、今度は唇にキスをした。
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