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連載
宝石姫と謳われたルルディナのなれのはて2
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ルルディナ様達が捕まってから三ヶ月が経過したけれども、彼女達はまだ地下牢にいる。
二人の逮捕はリムス王国の中枢に激震を走らせた。
結婚式の件で国が被害を被っているため、リムスはルルディナ様達を切り捨てた。もう降嫁して臣下に下ったため関係がないので処遇はエタセルに任せるという返事が。
勿論、リムスが無関係というわけにはいかない。そこはお兄様達が政治的な駆け引きを現在もなおおこなっている。
「ねぇ、お兄様。ルルディナ様達はこのままずっと地下牢に?」
私は城の渡り廊下を歩きながら隣を歩いているお兄様へと尋ねれば、お兄様は複雑そうな表情を浮かべだす。
商会の仕事でレイの元へ訪れた帰り、ちょうど城の渡り廊下でお兄様とばったり遭遇。
お兄様がウェスター様達に会うため地下牢に行くというので、私も一緒に行くことになったのだ。
「その件なんだけどさ、この間トライゾ侯爵様が来たんだ」
「ウェスター様のお父様が?」
懐かしい名前を聞き、私はつい足を止めてしまう。
ウェスター様と結婚していれば、義理の父になっていた人だ。
お父様と同じく中立派だったけれども、ルルディナ様とウェスター様との縁談という餌をぶら下げられ裏切った人でもある。
「侯爵が責任は自分にあるから二人を引き取りたいって。世間に出ても恥ずかしくないように教育をし直したいと」
「お二人を引き取りたいとおっしゃっているのですか?」
「うん、二人。もし引き取ることが可能だったら、他国の信頼できる知人へ預けるそうだ。ただし、二人別々にね。あの二人、一緒にいると周りが見えなくなるからさ」
「……そうですか」
「侯爵様、申し訳ないって泣いていたよ。自分の父親くらいの人に泣かれるのは辛いね」
お兄様は眉を下げると、ゆっくり息を吐き出す。
「ウェスターもルルディナ王女殿下も『あの様子』だから悪さは出来ないだろう。更生してくれるといいんだけどね」
お兄様がそう言い終わると、私達はちょうど目的地へと到着。
私達の前には長方形の格子があり、その前には二人の女性騎士が守護している。
二人は私達に一礼をすると、腰から下げていた鍵で格子を開けてくれた。
格子の先は地下へと通じる煉瓦造りの階段。壁には燭台が等間隔に設置され、足元を照らしてくれている。
「ティアナ様、リスト様。お気をつけて」
「ありがとう」
私達はお礼を言って階段を降りれば、個室の牢屋が連なっていた。
ここはエタセルの女性専用の地下牢。私達がここへやって来たのは、一番奥の部屋にいる人に会うためだ。
格子の奥にはふかふかの毛先の長い絨毯の上に座っている少女がいた。虚ろな瞳で空を見詰めている。
彼女の絹のような艶を持っていたピンクブロンドの髪はすっかり色落ち、赤ちゃんを思い出す柔肌はかさつき、少しふっくらとした頬が今はこけている。
毎日流行のドレスを纏っていたけれども、今は灰色のワンピース姿だ。
きっと彼女を知る人が見たら、誰かわからないだろう。
それくらいに彼女は変貌を遂げていた。
「ルルディナ様」
私は牢にいる彼女の名を呼ぶ。だが、全く反応がない。
ルルディナ様はリムスの宝石姫と謳われていた美しさを失ってしまった。
愛しい王子様と離ればなれになってしまったせいかもしれない。
別牢にいるウェスター様も同様な状態で、以前の精悍さは薄れてしまっている。
「もう少しすれば外に出られます。トライゾ侯爵様――ウェスター様のお父様からお二人の身柄を引き取りたいと申し出があったそうですよ」
「ウ……ェスタ……さ…ま……」
今まで反応が全く無かったのに、彼の名を聞きルルディナ様の瞳から涙が伝う。
――会いたいのね、ウェスター様に。
私だってライと離ればなれになってしまったら胸が苦しい。
ルルディナ様もウェスター様も引き裂かれて可哀想だとは思うが、ここで許したら彼らはこのままだ。
それに、私はグローリィさんが居なかったら死んでいたかもしれなかったし。
「これから先、トライゾ侯爵様が迎えに来て下さったら新しい生活が始まると思います。そこで自分の罪を自覚して反省して下さい。そうすれば、私は貴方達を許します」
「……ティア、いいのかい?」
「えぇ、彼らが心から反省すればという条件付きですが」
「そうか」
お兄様微笑を浮かべると、私の頭を撫でてくれた。
二人の逮捕はリムス王国の中枢に激震を走らせた。
結婚式の件で国が被害を被っているため、リムスはルルディナ様達を切り捨てた。もう降嫁して臣下に下ったため関係がないので処遇はエタセルに任せるという返事が。
勿論、リムスが無関係というわけにはいかない。そこはお兄様達が政治的な駆け引きを現在もなおおこなっている。
「ねぇ、お兄様。ルルディナ様達はこのままずっと地下牢に?」
私は城の渡り廊下を歩きながら隣を歩いているお兄様へと尋ねれば、お兄様は複雑そうな表情を浮かべだす。
商会の仕事でレイの元へ訪れた帰り、ちょうど城の渡り廊下でお兄様とばったり遭遇。
お兄様がウェスター様達に会うため地下牢に行くというので、私も一緒に行くことになったのだ。
「その件なんだけどさ、この間トライゾ侯爵様が来たんだ」
「ウェスター様のお父様が?」
懐かしい名前を聞き、私はつい足を止めてしまう。
ウェスター様と結婚していれば、義理の父になっていた人だ。
お父様と同じく中立派だったけれども、ルルディナ様とウェスター様との縁談という餌をぶら下げられ裏切った人でもある。
「侯爵が責任は自分にあるから二人を引き取りたいって。世間に出ても恥ずかしくないように教育をし直したいと」
「お二人を引き取りたいとおっしゃっているのですか?」
「うん、二人。もし引き取ることが可能だったら、他国の信頼できる知人へ預けるそうだ。ただし、二人別々にね。あの二人、一緒にいると周りが見えなくなるからさ」
「……そうですか」
「侯爵様、申し訳ないって泣いていたよ。自分の父親くらいの人に泣かれるのは辛いね」
お兄様は眉を下げると、ゆっくり息を吐き出す。
「ウェスターもルルディナ王女殿下も『あの様子』だから悪さは出来ないだろう。更生してくれるといいんだけどね」
お兄様がそう言い終わると、私達はちょうど目的地へと到着。
私達の前には長方形の格子があり、その前には二人の女性騎士が守護している。
二人は私達に一礼をすると、腰から下げていた鍵で格子を開けてくれた。
格子の先は地下へと通じる煉瓦造りの階段。壁には燭台が等間隔に設置され、足元を照らしてくれている。
「ティアナ様、リスト様。お気をつけて」
「ありがとう」
私達はお礼を言って階段を降りれば、個室の牢屋が連なっていた。
ここはエタセルの女性専用の地下牢。私達がここへやって来たのは、一番奥の部屋にいる人に会うためだ。
格子の奥にはふかふかの毛先の長い絨毯の上に座っている少女がいた。虚ろな瞳で空を見詰めている。
彼女の絹のような艶を持っていたピンクブロンドの髪はすっかり色落ち、赤ちゃんを思い出す柔肌はかさつき、少しふっくらとした頬が今はこけている。
毎日流行のドレスを纏っていたけれども、今は灰色のワンピース姿だ。
きっと彼女を知る人が見たら、誰かわからないだろう。
それくらいに彼女は変貌を遂げていた。
「ルルディナ様」
私は牢にいる彼女の名を呼ぶ。だが、全く反応がない。
ルルディナ様はリムスの宝石姫と謳われていた美しさを失ってしまった。
愛しい王子様と離ればなれになってしまったせいかもしれない。
別牢にいるウェスター様も同様な状態で、以前の精悍さは薄れてしまっている。
「もう少しすれば外に出られます。トライゾ侯爵様――ウェスター様のお父様からお二人の身柄を引き取りたいと申し出があったそうですよ」
「ウ……ェスタ……さ…ま……」
今まで反応が全く無かったのに、彼の名を聞きルルディナ様の瞳から涙が伝う。
――会いたいのね、ウェスター様に。
私だってライと離ればなれになってしまったら胸が苦しい。
ルルディナ様もウェスター様も引き裂かれて可哀想だとは思うが、ここで許したら彼らはこのままだ。
それに、私はグローリィさんが居なかったら死んでいたかもしれなかったし。
「これから先、トライゾ侯爵様が迎えに来て下さったら新しい生活が始まると思います。そこで自分の罪を自覚して反省して下さい。そうすれば、私は貴方達を許します」
「……ティア、いいのかい?」
「えぇ、彼らが心から反省すればという条件付きですが」
「そうか」
お兄様微笑を浮かべると、私の頭を撫でてくれた。
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