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政略結婚と恋愛結婚。幸せになる方は?2
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私は商会に向かう前に、メディとセス様が研究・開発をしている建物へ立ち寄る事に。
神殿に近い空き家を改装して作られた研究室は二階建てになっており、クリーム色の壁と緑の屋根が目印だ。
扉をノックすれば、「はい」というセス様の声が扉越しに届く。
「あっ、ティア様」
「こんにちは。メディいますか?」
「メディさんなら今日はお休みしたいとご自宅に戻られました。やっぱり何かありましたか? 城から戻って来た時に様子がおかしかったのですが」
「……そうですか。ありがとうございます」
私は軽く会釈し立ち去ろうとすれば「ティア様」と呼び止められてしまう。
「少しお茶でも飲みながらお話をしていきませんか? 頂いたお茶置きもありますよ」
少し話を聞いて欲しかったため、私はセス様の誘いに乗ることに。
玄関を入ってすぐの部屋には応接セットがあり、右手に二階へと上がる階段、そして奥には扉が一枚窺える。
奥にある扉は、開発室へと繋がっている部屋だ。
セス様に「ソファに座って寛いで下さい」と言われたので、お言葉に甘えて座っていると、銀のトレイを持ったセス様がキッチンから出てきた。
彼の手にはティーカップとカップケーキが乗った小皿が乗っている。
「どうぞ」
テーブルの上に置かれたティーカップには、綺麗な赤い色の液体が揺れ動いている。カップケーキには木の実や干しぶどうが入っているようだ。
「ありがとうございます」
私はカップへと手を伸ばせば、ふわりと鼻腔に薔薇の濃厚な香りが漂ってくる。
「薔薇ですか?」
「えぇ。薔薇と他のハーブとブレンドしてみました。薔薇は僕達の身近な植物ですが、昔から使われているんですよ。宴会で貴族達が薔薇の花を飾る風習があったり、薔薇水で清めたり。薔薇水はお菓子にも使われます。現代では香水やローズオイルが主に使われているかもしれません」
「薔薇って身近ですものね。リムスにあった屋敷にも咲いていました。人手に渡りましたが。薔薇って万能っぽいのですが、効能とかあるんですか?」
「薔薇の香りはβ―エンドルフィン、エンケファリンと似ていると言われています。脳内モルヒネといわれるものですね。薔薇はアンチエンジング、女性ホルモンの分泌、自律神経、血液循環などの影響があるそうですよ。モノテルペンアルコール類が抗菌作用や免疫力を高めますし、エッスキテルペンアルコールが抗菌、抗炎症、女性ホルモンに作用しますので――」
どんどんと終わることなく続くセス様の口から出る薔薇の解説。
さすが植物学の専門家だ。
「薔薇って色々使えるんですね」
「葉も使えますよ」
「薔薇は好きです。ライが薔薇ジャムを作って置いていってくれたんですけど、すごく美味しかったです。なんか贅沢な気分になりますよね」
「僕も好きです。グローリィがよく薔薇ジャムを作って持って来てくれていたんです」
目尻を下げて微笑みながらセス様は告げながら、彼は自分の薬指へと視線を向ける。
そこには年季の入った指輪が嵌められていた。
神殿に近い空き家を改装して作られた研究室は二階建てになっており、クリーム色の壁と緑の屋根が目印だ。
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「……そうですか。ありがとうございます」
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少し話を聞いて欲しかったため、私はセス様の誘いに乗ることに。
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「どうぞ」
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目尻を下げて微笑みながらセス様は告げながら、彼は自分の薬指へと視線を向ける。
そこには年季の入った指輪が嵌められていた。
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