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俺だってティアの力になりたいんだ2
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その後、一時間くらいして会議は終了。
私はお父様達と軽くお話をして部屋から出ようとしたら、レイガルド様に声を掛けられてしまう。
「ティア、ちょっといいか?」
「はい」
人々が続々と扉の奥に消えて行く中で、私は傍にいるレイガルド様と共に部屋に残った。
なんだか気まずいと思うのは私だけだろうか。
どうしてもメディのことを考えてしまう。
「聞いてもいいか?」
「はい」
「開発に融資してくれる匿名の人は、ライナス殿かい?」
「え」
私は答えることなく、視線を彷徨わせてしまう。
レイの言う通り、匿名者はライ。
彼に相談した時に、ネックとなっていた予算のことも話したのだが、ライは個人資産で出資すると申し出てくれた。
勿論、ありがたい事だったけど、さすがにそこまで迷惑をかけられないから断った。
なんの見返りも彼に差し出すことが出来ないし。
でも、ライが完成したら一番最初に貸し切りで宿泊できる権利をくれればそれでいいよって。
「と、匿名ですので……ちょっとそれは……」
「ティアはライナス殿には頼るんだな。俺は頼りないか? ライナス殿のように大きな資産があるわけではない。でも、ティアの力になりたいんだ」
「え、えっ、えぇ」
突然、レイが右腕を伸ばして、私をレイと壁の間に挟むような形をしてしまったため、私の唇から言葉として認識されない声が漏れる。
身長差があるためレイは屈み込んで私を見ているんだけど、その表情は苦しげだ。
瞳は悲しさを含んでいた。
空いている手で彼は私の髪を束にして触れると、口づけを落とす。
ただでさえ頭の中がぐるぐるだったのに、今度は全身が沸騰しかけてしまう。
熱さで汗が出始めてしまった時だった。
扉をノックする音が届いてきたのは。
「ティアナ様、いらっしゃいますか?」
というルナ様の声が届き、扉がゆっくりと開かれていく。
夕方の空を埋め尽くす紫と橙色の中間色をしたドレスを纏っているルナ様は、私達を見ると目を大きく見開いた。
「も、申し訳ありません」
慌てて退出しようとしている彼女を、レイガルド様が制止した。
「ルナ、ティアに用事があったんだろ?」
「はい。ティア様がいらっしゃると伺ったので、お茶会にお誘いしたいなと思ったのです」
珍しいというか、初めてではないだろうか。
ルナ様とお茶会をするのは。
お母様はルナ様のマナー講師をしているから親しいけれども、私とルナ様は挨拶をするくらいのレベルだ。
勿論、会ったら世間話くらいはするけど、そもそもあまり会う機会がない。
私の生活の拠点が商会なので、城にはお兄様達に会いに来たり、商会の報告に来たりするだけだし。
「お時間はありますか?」
「はい、お茶する時間はありますよ」
ルナ様から初めてお誘いを受けたのだから答えは決まっている。
「良かったです。メディ様もいらっしゃっているので、三人でお茶会をしましょう」
「え、メディ?」
てっきり二人きりだと思ったのに、ここでメディの名を聞くとは思ってもいなかったため、私は固まってしまう。
ルナ様とメディが仲良いと聞いたこともないし、そもそもメディとルナ様は数回しか会ったことがないはずだ。
――しかも、ルナ様はコルタが好きで、コルタはメディを好きだからライバルなはずじゃないっけ?
私はお父様達と軽くお話をして部屋から出ようとしたら、レイガルド様に声を掛けられてしまう。
「ティア、ちょっといいか?」
「はい」
人々が続々と扉の奥に消えて行く中で、私は傍にいるレイガルド様と共に部屋に残った。
なんだか気まずいと思うのは私だけだろうか。
どうしてもメディのことを考えてしまう。
「聞いてもいいか?」
「はい」
「開発に融資してくれる匿名の人は、ライナス殿かい?」
「え」
私は答えることなく、視線を彷徨わせてしまう。
レイの言う通り、匿名者はライ。
彼に相談した時に、ネックとなっていた予算のことも話したのだが、ライは個人資産で出資すると申し出てくれた。
勿論、ありがたい事だったけど、さすがにそこまで迷惑をかけられないから断った。
なんの見返りも彼に差し出すことが出来ないし。
でも、ライが完成したら一番最初に貸し切りで宿泊できる権利をくれればそれでいいよって。
「と、匿名ですので……ちょっとそれは……」
「ティアはライナス殿には頼るんだな。俺は頼りないか? ライナス殿のように大きな資産があるわけではない。でも、ティアの力になりたいんだ」
「え、えっ、えぇ」
突然、レイが右腕を伸ばして、私をレイと壁の間に挟むような形をしてしまったため、私の唇から言葉として認識されない声が漏れる。
身長差があるためレイは屈み込んで私を見ているんだけど、その表情は苦しげだ。
瞳は悲しさを含んでいた。
空いている手で彼は私の髪を束にして触れると、口づけを落とす。
ただでさえ頭の中がぐるぐるだったのに、今度は全身が沸騰しかけてしまう。
熱さで汗が出始めてしまった時だった。
扉をノックする音が届いてきたのは。
「ティアナ様、いらっしゃいますか?」
というルナ様の声が届き、扉がゆっくりと開かれていく。
夕方の空を埋め尽くす紫と橙色の中間色をしたドレスを纏っているルナ様は、私達を見ると目を大きく見開いた。
「も、申し訳ありません」
慌てて退出しようとしている彼女を、レイガルド様が制止した。
「ルナ、ティアに用事があったんだろ?」
「はい。ティア様がいらっしゃると伺ったので、お茶会にお誘いしたいなと思ったのです」
珍しいというか、初めてではないだろうか。
ルナ様とお茶会をするのは。
お母様はルナ様のマナー講師をしているから親しいけれども、私とルナ様は挨拶をするくらいのレベルだ。
勿論、会ったら世間話くらいはするけど、そもそもあまり会う機会がない。
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てっきり二人きりだと思ったのに、ここでメディの名を聞くとは思ってもいなかったため、私は固まってしまう。
ルナ様とメディが仲良いと聞いたこともないし、そもそもメディとルナ様は数回しか会ったことがないはずだ。
――しかも、ルナ様はコルタが好きで、コルタはメディを好きだからライバルなはずじゃないっけ?
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